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はじめに
スマートフォンやパソコンで手軽に株の売買ができるようになったことに加えて、少額からの株式投資を推奨する金融商品が多数出てきたことにより、誰でも簡単に株式投資ができる時代へと突入しています。
資産運用のためにと株式投資に取り組む中で利益ばかりを追いかけがちですが、初心者ほど疎かにしがちなものの一つに確定申告があります。
納税は国民の三代義務の一つでもありますが、税金の手続きと聞いただけで「煩雑な手続きが面倒くさそう」と感じる人も割と多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、株初心者の人ほど知らない確定申告で得する人になるための秘訣について解説します。
確定申告の手続きは確かに面倒な部分もありますが、上手く利用することで節税対策ができてなおかつ株式投資で得た利益をより多く手元に残すことも可能になります。
初心者だからと疎かにしては非常にもったいない手続きとも言えるので、皆さんもこの機会に確定申告の知識を身につけておきましょう。
1章:株式投資における確定申告とは
この章では株式投資における確定申告の概要について解説していきます。
会社員として勤務している人であれば確定申告を会社任せにしているのが当たり前で、その具体的な手続き方法についてはあまり知らないという人ももちろん多いはずです。
ただ株式投資をしていく上では確定申告の知識は必須であると言えます。
確定申告の上手な活用法について学ぶ前に、まずは基本的な内容から確認していきます。
1ー1 確定申告の有無は何で決まるか
その年の1月1日から12月31日までの間に株式投資によって利益が出た場合、一般口座および特定口座(源泉徴収なし)を利用している個人投資家は確定申告を済ませなければなりません。
また特定口座(源泉徴収あり)およびNISA口座を利用している個人投資家については、確定申告は原則不要となります。
そもそもNISA口座については非課税扱いとなるため、確定申告や納税の義務は一切発生しません。
口座の種類によって確定申告の有無が決まっていますが、それ以外の場合で確定申告が必要と判断される条件については以下のようなものがあります。
・年間利益が譲渡益ではなく配当金のみ
・年収2000万円以下でかつ譲渡所得20万円以下
株式投資をしている投資家でも中長期投資による配当金や株主優待のみが利益である場合には、原則として確定申告は必要ありません。
ただもう一方の条件にある「譲渡所得」という言葉の意味が、実際にはいまいち分からないという人もいるかもしれません。
この譲渡所得とは簡単に言えば、月々の給料である給与所得と退職金のような退職所得以外での所得のことを指します。
つまり株式投資で得た譲渡所得とそれ以外の方法で得た所得の合計金額が20万円以下の場合、確定申告は不要という解釈をすることができます。
1ー2 確定申告不要と住民税は別物
確定申告が不要な場合でも一点だけ注意点があるとすれば、確定申告が不要だからといって住民税の申告も自動的に不要になるといった制度は存在しないということです。
確定申告とはあくまで所得税に関する手続きとなるため、給料および退職金以外の所得が20万円以下の場合であっても住民税の申告は各自治体ごとにしなければなりません。
一般的には2月初旬から3月中旬までの提出期間内で、住民税の申告書を別途提出する必要があります。
住民税の申告に関する詳しい手続き方法が分からない場合には、各自治体まで問い合わせてみるといいでしょう。
1ー3 売却損益の計算方法
確定申告が必要な場合については一般口座と特定口座(源泉徴収なし)とがあることは前述した通りですが、特定口座(源泉徴収なし)の場合では各証券会社において年間取引報告書が作成されるため、自分で売却損益を計算する必要はありません。
しかしその一方で一般口座の場合では自分で売却損益を計算しなければならず、計算の仕方が分からなければ確定申告の手続きがきちんと進められません。
売却損益の具体的な計算方法については以下のようになります。
売却損益=売却収入ー(取得価格+売却手数料)
売却収入=売却時の株価×株数
取得価格=購入株価×株数+購入手数料
これらについて手計算する場合には、いずれの計算でも全て税込で計算することを覚えておきましょう。
また最近では国税局の公式ホームページから「確定申告書等作成コーナー」にて、確定申告書を作成した後に印刷できるサービスが普及しています。
書類の作成にあたり記載事項がいくつもある訳ですが、「年間取引報告書」をあらかじめ手元に用意しておくことでスムーズに記入することができます。
必要物についてはインターネットで調べることができるので、あらかじめ一通り揃えてから確定申告書の作成にあたるといいでしょう。
2章:確定申告で得する人になる秘訣とは
確定申告の概要について大まかに紹介しましたが、ここからは確定申告で得する人になるための秘訣について解説していきます。
確定申告が原則不要とされている場合でも、あえて確定申告することにより税金負担を緩和することができます。
特に年間を通じて損失が出た場合には確定申告した方がお得なため、利益額の少ない株初心者ほど確定申告を上手に活用していくに越したことはありません。
2ー1 損益通算
株式投資をしていく中で年間を通じて利益だけでなく損失が出た場合、まずは損益通算を利用してみましょう。
この損益通算とは利益と損失とを合算して相殺する方法のことで、分かりやすく言うと利益と損失が同額の場合ではプラスマイナスゼロになるため、確定申告をすることで税金は免除されることになります。
株式投資における譲渡損と譲渡益の損益通算については、発生した金額そのままで計算できるので非常に分かりやすいです。
ただ損益通算で忘れられがちなこととして、損益通算は譲渡益と譲渡損だけでなく、譲渡損と配当金の場合でも適用されるということです。
これはどういうことかと言うと譲渡損と配当金とで損益通算した場合、20万円以上の配当金における節税効果が現れます。
配当金の課税方式は主に三種類あり、具体的な内容については以下のようになります。
①源泉徴収
・税率20.315%
・確定申告は不要
②確定申告(総合課税)
・課税総所得額によるが、7.2〜43.6%
・譲渡損との損益通算は不可
・配当控除は適用可
③確定申告(申告分離課税)
・税率20.315%
・譲渡損との損益通算は可能
・配当控除の適用不可
②と③の場合ではどちらがよりお得か分かりにくいかもしれませんが、配当金による利益がありなおかつ課税予定の総所得額そのものが少ない場合には②を選択することで、税率が下げられるだけでなく配当控除も併せて受けることができます。
特に総合課税では所得金額が少ないほど税率が低くなる特徴があり、総所得自体が少ない場合であれば①や③よりも税金を少なく抑えることができます。
ただし②の場合では損益通算が不可となるため、損失額が大きい場合であれば③を選択して損失額そのものを小さくすることを優先した方がいいかもしれません。
譲渡損と配当金の損益通算を証券会社に任せたい場合には、特定口座(源泉徴収あり)で「上場株式配当等受領委任契約」をあらかじめ交わしておくことで、特定口座内の譲渡損と配当金とを自動で損益通算してもらうことができます。
この契約は各証券会社によって手続きが微妙に異なるため、気になる人は現在お世話になっている証券会社まで問い合わせてみるといいでしょう。
2ー2 損失の繰越控除
上記の方法で損益通算した場合であっても、譲渡損の金額が大きい場合ではマイナスが依然として残ることがあります。
この時に便利なのが損失の繰越控除という手続きで、これは実際に譲渡損が出た年から3年間にわたりその損失を繰り越せるというものです。
損失が一年で解消できればいいですが翌年も損益通算してなお損失が出た場合、さらに確定申告することで翌年に出た譲渡益にかかる税金を少なく抑えることに役立ちます。
ただし損失の繰越控除は一度申告したら翌年以降は申告が免除される訳ではなく、損失を最大期間である3年間繰り越すためには毎年のように損失の繰越控除を含めた確定申告をしなければいけないので注意しましょう。
2ー3 経費の追加申告
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合では基本的に確定申告の必要性はありませんが、還付金を狙いたい場合にはあえて経費に関する確定申告をしておくという方法もあります。
確定申告の際に認められる経費とは実際に株式投資をする上でかかった費用のことを指しますが、具体例を挙げると以下のようなものがあります。
・パソコンの本体代
・有料セキュリティソフトの購入費
・インターネットのプロバイダ料金
・株式セミナーの参加費
・投資家仲間との親睦費用 など
これはあくまでも一部のみですが、上記の内容を見ただけでも多少関連性がありそうな費用であれば経費として申告できる可能性があります。
特定口座(源泉徴収あり)は確定申告の面倒が省けることがメリットですが、あえてメリットを捨ててでも確定申告しておくことで受けられる税制上のメリットというのも存在します。
3章:確定申告しないことのリスクとは
ここまで確定申告の必要性やその具体的な内容について解説してきましたが、株初心者の中にはもしかしたら「確定申告しなくてもばれないんじゃないか」と、勘違いしている人もいるかもしれません。
しかし実際にそんな美味しい話はなく、各証券会社が税務署に対して「支払調書」という書類を提出しているので、確定申告していない個人投資家は一目瞭然です。
その状態のまま放置していると脱税の容疑がかけられ逮捕されることも実際にはあり、国民の義務を自分だけが免れられることはまずありません。
利益をより多く手元に残したいという気持ちは理解できますが、法に抵触することなく正しい株取引を心がけることがひいては自分のためになります。
まとめ
株式投資をする上で確定申告を避けて通れないことは再三解説しましたが、運用資金を効率良く残すためにも確定申告が必須であると理解した方が、申告漏れを自ら選ぶことの無意味さが理解しやすいかもしれません。
国として許可された範囲内で正しく節税対策をしながら、株式投資に挑戦することが個人投資家として成長するための近道であると言えるでしょう。
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