こんにちは、株アカデミーの小野寺です。
本日は今年世界を最も騒がせている男「ドナルド・トランプ大統領」の影響力を株の観点から切り込んでいきます。
この記事ではトランプ氏の政策の特徴を見たあと、実際に株にどのような影響を与えるかを考えていきます。
トランプ氏の予想できない発言によって振り回されるマーケットですが、冷静に分析することがトランプ相場を勝ち抜くために大切なことです。
トランプの政策の特徴
まずはトランプのマニュフェスト等を見ていき、政策の軸をしっかりと理解します。
トランプの政策の特徴①オバマケア廃止
トランプ政策の特徴としてまず挙げられるのはオバマケアの廃止・代替案です。
そもそもオバマケアというのは、オバマ前大統領が推進した医療保険制度改革法の通称です。アメリカには日本のような国民皆保険制度がありません。
そのため、無保険者が約5000万人いるとされています。
それでは国民に医療が十分に行き届かず、必要な人に届けられないということで2014年から最低限必要な民間医療保険の勧誘雨を原則として義務化したものです。
その実現のために政府は補助金を支給し、新たに2000万人超の低所得者が保険に加入できたのですが、健康状態がよくない加入者が増えたことで医療保険会社の収支が悪化してしまいました。
自力で医療保険に入っていた中間層の保険料が上昇するという問題も生じてしまいました。
アメリカはもともと個人主義の国で、自分のことは自分でやるという思想が強い国です。特にトランプ氏は自分がビジネスマンということもあり、オバマケアの廃止を進めています。
しかしオバマケアの廃止・代替法案は多数の無保険者を出すと試算されたことで反発が強まり、採決は延期されてしまいました。
それを受けて、トランプ大統領は「共和党の上院議員らが現在取り組んでいる法案を通せないのであれば、オバマケアを今すぐなくし、後で取り替えるべきだ」と、まずはオバマケアを廃止し、その後代替案を考えるという主張をしていました。
トランプの政策の特徴②減税政策
続くトランプ政策の特徴は、法人税減税や海外利益に対する税率引き下げなどを柱とする税制改革です。
この改革案では、公的企業の法人税率を現在の35から15に引き下げるとしています。
また、海外還流利益の税率については政権と議会が新たな水準をめぐって意見のすり合わせを行っているため具体的な数字は示されなかったですが、現行の35から大幅に引き下げることを検討中とのことです。
アメリカ企業は現在、約2兆6000億ドルの利益を海外に滞留させていて、アメリカ政府はこうした資金にはアメリカに還流されない限り課税できません。
そのためトランプ政権は還流を促していますが、同時に、税率は低水準に留めること提案しています。
これが実施されれば歳入が一時的に上がり、トランプ政権が主張するインフラ投資の原資に回せます。
そして個人については、7段階ある税率区分も10、25、35の3段階に簡素化して減らす方向です。相続税は廃止し、キャピタルゲイン税も23.8から20に引き下げる意向です。
今回の改革案には、減税分を補完する手段として下院共和党が提案した「国境調整税」は含まれない。
トランプの政策の特徴③規制緩和
トランプ大統領はオバマ政権が金融規制改革法ドッド・フランク法のもとで強化した金融規制を抜本的に見直すよう指示する大統領令に署名しています。
これによって、金融機関の負担を減らし、融資を増やしやすくする方向で規制緩和を検討する方向です。
ホワイトハウスで開いた「大統領戦略・政策フォーラム」では「ドッド・フランク法の多くを削る」と明言していました。
今まで金融危機の再発防止を最優先にしてきた金融行政にとっての転換点になると言われています。
金融規制改革法は、「金融システムの安定に貢献し、米銀の健全性が高まった」とする評価もある一方で、企業融資を妨げて経済活動の重荷になっているのとの指摘もありました。
トランプ氏自身も、「企業への有志が滞っている」として、ドッド・フランク法の廃止か抜本的な見直しを訴えていました。
このドッド・フランク法はアメリカで事業を展開する邦銀にも適用されています。そのため、規制緩和の方向への見直しは経営の自由度を高める方向に作用する見通しで好意的に受け止められています。
またトランプ氏は別の大統領令で、金融機関が退職した個人の年金運用に助言するときに利用者保護を徹底する「受託者責任ルール」に関して導入停止を検討するように労働省に指示を出しています。これもドッド・フランク法に盛り込まれていたもので、今年4月から導入予定のものでした。
しかし、投資信託を勧めて手数料を得ると条件次第では規制に背く可能性もあると言われていたため金融業界の反対が強かったものです。
これについてはよく誤解されるのですが消費者軽視というわけではなく、退職者に対しては忠実義務まで課す必要はなく、適合性の原則に従って対応すればいいという考えです。
トランプの政策の特徴④テロ対策
差別的だと広く批判されたトランプ政策のテロ対策について説明します。
具体的な内容としては、
・中東と北アフリカの一部の国を出発する米国行き航空便で、携帯電話より大きい電子機器の機内持ち込みを禁止する
・イスラム圏からの入国を制限する
というものです。
電子機器の機内持ち込みですが、対象は、中等と北アフリカの8カ国にある、計10空港からのアメリカへの直行便です。
これにはアラブ首長国連邦のドバイ国際空港やトルコのイスタンブールにある国際空港など利用客が多い空港も含みます。米国の航空会社は対象にならない。
アルカイダなどの国際テロ組織が航空機の爆破を狙って電子機器を使用する手口があり、それを念頭に置いてたの対応と見られています。
また電子機器を用いたテロの危険性が明らかになったともアメリカ政府に伝えられており、このような機内持ち込み制限につながたっとみれています。
トランプの政策の特徴⑤米国内雇用対策
アメリカ大統領線でトランプ氏は、米国の高成長時代を切り開くため税制や貿易、エネルギー、規制を抜本的に見直す計画を明らかにし、10年間として過去最多の雇用創出を実現すると公約しました。
具体的には10年間で2500万人の雇用を創出する構想です。これは2006年以降の雇用創出の3倍以上にあたります。
この雇用対策については支持するが55%、支持しないが33%で
支持する層が多いことがわかります。
実際にトランプ氏は、グローバル化による工場の海外流出と安価な輸入品の増大がアメリカ人の雇用を奪ってきたと考えていて、かなり強固な保護主義の立場です。
TPP脱退のような自由貿易協定だけではなく、工場をアメリカからメキシコに移そうとする企業をTwiterで直接的に攻撃して、アメリカでの雇用創出を約束させるなどしています。
トランプの引き起こす影響
アメリカ大統領選挙の日を境に株価や為替レートは大きく動きました。トランプ政権のマクロ経済政策への期待を反映し、株価は大幅に上昇、ドル高円安の方向で推移しました。
トランプ政権のマクロ経済政策は自国の金融政策にも影響を及ぼします。
リーマン・ショック後の低金利政策と量的緩和を終わらせるためには、金利上昇が鍵になっていて、トランプ氏が就任したタイミングで政策金利を引き上げました。
トランプ政権の経済政策によって物価や賃金の上昇スピードが早くなると金利の引き上げスピードにも影響が出て、早くなります。
トランプ氏はドル高誘導への意思があるとして、日本の通貨政策もたびたび批判しています。通貨政策というのは金融緩和・量的緩和です。ただこれは、デフレ脱却を目的としていて、為替レートを操作するために行ってものではありません。というのが日本のスタンでした。
そしてアメリカの長期金利が2.5程度であるのに対し、日本の長期金利はほぼ0と金利差は大きく広がっています。これが円安・ドル高の圧力となっていることは明らかなのですが、このままさらに円安が進むことには警戒感があります。
円安に動き続けるとアメリカとの関係はもちろん日本経済にとっても好ましい水準とは言えないからです。日本の金融政策の運営にもトランプ政権は大きな圧力となりえます。
そしてトランプ氏の保護主義的な姿勢も日本の企業に影響を及ぼします。トランプ政権は輸入には20程度の国境税をかけることを表明していますが、これが実現されると、自動車メーカーのような輸出企業は深刻な影響を受けることになります。
1980年代から90年代の貿易摩擦を思い出し、どのような状態になっても迅速に対応できるよう準備を進めていくことが求められるでしょう。
トランプの発言と日経平均
2月10日、トランプ氏の税性格に関して「目をみはるような発表を行う」という発言により、
政策期待から日本株にも外部環境を好感した買いが優勢となり、日経平均株価は前営業日比446円31銭高の1万9353円98銭となりました。
4月13日、トランプ氏の「ドルが強すぎる」という発言を受けて円高ドル安傾向となりました。円相場は一時1ドル108円台後半となり、これは昨年11月中旬以来、約5ヶ月ぶりの円高水準です。合わせて株式市場では輸出関連株を中心に売られ、日経平均株価は一時240円超も値下がりしました。
トランプノミクスとは
トランプノミクスとは、トランプ氏の経済政策のことをいいます。「トランプ」と「エコノミクス」の造語です。
これは、トランプ政権の政策が減税や金融規制緩和、インフラ投資などが1980年代前半にレーガン大統領が行った経済政策「レーガノミックス」に近いことからトランプ氏の政策も「トランプノミクス」と呼ばれるようになりました。
次章ではこのようなトランプノミクスの株価の影響を上げていきます。
トランプノミクスで上がる銘柄
トランプノミクスで上がる銘柄①円安銘柄
トランプ相場では円安の進展が期待できます。それは円安によって決算の上方修正が期待できるからです。
円安銘柄の代表格でいうと採算の悪化した事業を身軽して成長分野のITサービスへの投資を加速させている富士通です。
他にも、隠れた上方修正銘柄として、装置メーカーのフロイント産業です。アメリカに製造子会社を持ち、アメリカの好景気も取り込める点で隠れた上方修正銘柄といえます。
トランプノミクスで上がる銘柄②米国内『消費銘柄』
昨年11月の大統領選からの米国株の急上昇によって、家計資産は単純計算で6000億ドル増えています。これからアメリカの消費は力強く盛り上がっていくシナリオが濃厚です。
その恩恵を受けて日本の消費銘柄も上がると予想されます。たとえばヤマハ発動機です。アメリカの富裕層によるヨット・クルーザー購入が増える恩恵を直接的に享受することができるからです。
ガーデニング消費の高まりをうけて、芝刈り機などを作るクボタ、やまびこも需要が増えていくと予想できます。
トランプノミクスで上がる銘柄③『工場関連銘柄』
トランプ氏は内需を活性化するために工場に大きな投資をするようにみえますが、結果として人手不足になることは予想されます。そのため、不足した人手を補うために工場の自動化を進めるニーズも高まると予想されます。
また、日本独自の技術はレベルが高く応用範囲も広いためアメリカでの需要も大きいです。ファナックやキーエンス、三菱電機などは株価上昇が期待できます。
トランプノミクスで上がる銘柄④人的リソース銘柄
すでに製造業の現場では人手不足が目立ってきています。そしてこの状態はさらに進んでいくと予想されます。
そのため、人手不足を解消するような技術者派遣・製造請負などの人材サービスを提供するトラスト・テック、製造業・工場の求人サイト「工場WORKS」を運営するインターワークスの需要も高まることが予想されます。
トランプノミクスで上がる銘柄⑤「防衛関連銘柄」
トランプ氏がアメリカ第一主義を取り、日本への安全保障をしなくなった場合、日本は独自で防衛をしなければならない可能性があります。そのため、防衛関連銘柄も上がることが予想されます。
実際、防衛省は2017年度予算のうち、軍事に応用できる研究費の助成として110億円の予算を要求していて、2016年の約18倍です。日本としても軍事研究を推進する姿勢であることがうかがえます。
三菱重工や細谷火工、川崎重工は防衛関連銘柄として注目です。
トランプノミクスで上がる銘柄その他
情報通信、新素材、バイオ産業の銘柄はバブルになりやすい傾向が強いです。炭素製品大手の日本カーボン、人工知能(AI)関連銘柄のブロードバンドタワー、セルロースナノファイバーを手がける中越パルプ工業などは大相場になることを期待できます。
トランプの影響で上がった株
トランプ氏が大統領に就任したことで、その経済政策への期待が大きく市場としては全体的に上昇傾向にあります。その中でも特に上がった株を紹介します。
トランプの影響で上がった株①
JPモルガンチェースは、トランプ大統領就任後4営業日で70.03ドルから79.51ドルと13も上昇しました。
これは、トランプ氏の政策がオバマ政権の頃と違って金融取引に対する規制を緩和していくからです。また、金利上昇圧力が強くなったことで、業績に拡大期待が高まったというのもあります。その期待によって金融株は選挙後に上がった銘柄多いです。
トランプの影響で上がった株②
重機大手キャタピラーも大きく上がりました。
トランプ氏がインフラ投資などの財政政策の拡張を志向しているということで、公共事業関連需要が膨らむという期待が反映されています。
[関連記事]
トランプの影響で上がった株③
ユナイテッド・ヘルスもトランプ氏の影響で上がりました。
これはトランプ氏が公約していたオバマケアの廃止にあります。オバマケアの廃止により、民間保険需要が拡大するという期待から、買い先行となりました。
トランプの影響で下がった株
トランプ大統領が就任で円安株高トレンドになっていますが、一方で株価を下げた銘柄もあります。
トランプの影響で下がった株①
その他金融のビザが大統領選後に5.2安となりました。
トランプ大統領就任によって、金融規制緩和の恩恵を受けるゴールドマン・サックスやJPモルガンのような金融セクターの中心部分に資金が流れたことが原因だと考えられます。
トランプの影響で下がった株②
アップルも3.6安となりました。
トランプ大統領が保護主義的な方向に進み、各国との通商関係が悪化すると、グローバル企業に対するダメージが大きいという警戒感が広がったためです。
アップルの主力商品であるiPhoneは中国で組み立てていますが、トランプ氏は中国製品に対して高い関税をかけるつもりであるという点も株価を下げる要因となりました。
トランプの影響で下がった株③
急性アレルギー反応の応急措置に使われる自己注射薬を製造するマイロンです。
トランプ氏がTwitterで「製薬業界の競争を促す新しい制度に取り組んでいる」と表明したことを受けて、株価が1.5安となりました。合わせて製薬株のペリゴ、アラガンの株価も下落しました。
トランプ銘柄まとめ
トランプ氏の発言により株価は大きな影響を受けることは確かですが、ここで紹介したような経済政策の方向性を見極め、しっかりと「上がる理由」がある株を着実に買っていくことが勝つための秘訣と言えます。
トランプ氏は保護主義的な思想からアメリカ人にとってプラスとなる政策を進めることが基本です。その事実を理解した上で、株取引を進めていきましょう。
この記事へのコメントはありません。