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はじめに
株式投資において、多くの企業についての知識を深めることは非常に大切です。
知識を持っていれば、東芝の株価が上がっていくか下がっていくかの予測を立てることが可能になるのです。
今回は良くも悪くも話題沸騰の、東芝株について詳しく説明させていただきます。
1章:東芝株の特徴
東芝とは
東芝は、各種電気製品を製造販売しています。
デジタルプロダクツ事業ではパソコンやテレビ、電子デバイス事業ではNAND型フラッシュメモリーやシステムLSI、
社会インフラ事業では発電機や医療機器、家庭電気事業では家電製品を生産しています。
東芝の事業はテレビや半導体などの他にも、重電機、軍事機器、鉄道車両などの重工業分野にも事業展開をしており
大手重電4社(日立製作所、パナソニック、東芝、三菱電機)の一角と呼ばれ、世界的知名度を誇っていました。
しかし、粉飾決算事件を受けて、2016年2月までに、半導体の製造ラインを、
中華人民共和国と台湾に本社を持つ友順科技股份有限公司に売却しました。
これにより、戦闘機など自衛隊の防衛機器の半導体は、中華人民共和国や台湾からの輸入に頼らざるを得なくなりました。
また、2015年に発覚した粉飾決算事件を契機とし白物家電事業と医療機器事業は2016年に売却され、総合電機の生産を終了しました。
冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、炊飯器など家電製品の国産化第1号の製品が多く(電子レンジと炊飯器以外は1930年代に開発された)、白物家電の日本におけるパイオニアでありました。
東芝のその他事業
東芝は電気系の事業以外にも、社会インフラ事業・エネルギー事業・デジタルソリューション事業等、電気から派生した事業にも取り組んでいます。
その中でも社会インフラ事業は少し特異です。
東芝の社会インフラ事業は公共インフラ、ビル・施設、鉄道・産業システムへのソリューションの提供を通じて、国内外に安全・安心で信頼できる持続可能な社会の実現を目指しているとのことです。
公共インフラ向けには上下水道システム・道路システム・防災システム・放送システム・電波システム・セキュリティ・自動化機器システムなどの社会を支えるシステムソリューションを。
ビル・施設向けには昇降機・空調・照明などの高い省エネ性能で環境面に配慮しながら快適性も向上するシステムソリューションを。
鉄道・産業システム向けには、鉄道システム・モータ/インバータシステム、電池システム・車載システムなどの価値あるシステムソリューションを。
また、オフィスや店舗・物流向けにはビジネスを支えるリテール&プリンティングソリューションを提供しています。
これらの事業は電気事業に比べると目につくことは少ないですが、非常に大きな事業の一つとなっております。
東芝の粉飾決算事件
東芝は2015年に粉飾決算が明るみとなり、世間を騒がせました。
何故このようなことが起きてしまったのか、キャッシュフローの観点から見ていきましょう。
まず、損益計算書のデータは粉飾していたため、7年間の累計で1,002億円の黒字を出しています。
しかし、キャッシュフローを見てみると、その経営の苦しさが浮き彫りとなってきます。
たとえば、2009年3月期は営業キャッシュフローが160億円のマイナスであり、投資キャッシュフローが3,355億円のマイナスになっています。
この両者を合算すると3,513億円のマイナスになります。
これを「事業活動によるキャッシュフロー」といいますが、
これがマイナスだということは、「事業をして稼ぐお金よりも、事業を維持するために出ていくお金のほうが大きかった」ことを意味します。
早い話、この時期の東芝は、お金を稼ぐことができなかったのです。
その結果、前述の7年間トータルでは、事業活動で1,352億円を失っていることがわかります。
見栄えの良い損益計算書と、見栄えの悪いキャッシュ・フローが並立する会社というのは、
何らかの問題をはらんでいることが多いのですが、東芝の場合、それが粉飾決算であったことが後日明らかになりました。
どんなに有能な経営陣であっても、適正な会計という企業の基本に敏感でなければ、東芝に限らず、企業は立ち行かなくなってしまいます。
東芝においては、工事費用の見積もり、資産評価の甘さ、この2つが大きな問題として挙げられています。
これらの問題が重なり、粉飾決算に踏み切り、大企業としてのプライドを守らざるを得なくなってしまったのです。
更に、あるはずのない収益を加えてしまったため、その分法人税、配当金を多く支払わなければならなくなってしまいました。
東芝は粉飾によって会計の数値をごまかしただけでなく、きわめて巨額の無駄な資金流出を行いました。
もし東芝が粉飾を行わずに無駄な法人税を納めず、かつ早めに減配等の措置をとっていれば、債務超過に陥らずに済んだ可能性があります。
これは、東芝を債務超過に追い込んだ重大な要因です。「適正な会計」という企業経営の基本を軽視したツケが、このような大きな経営難を東芝にもたらしたのです。
2章:東芝株、今後の予想
東芝、東証二部降格へ
東芝は2017年8月1日をもって、東証一部から東証二部へ降格となりました。
これが何を意味するかというと、これまでに培ってきた信頼やブランドというものが一気に地に落ちるということです。
当然投資家は早期に損切りをするなどして手を回すでしょうし、消費者はブランド力がなくなった東芝製品を買うことを控えるでしょう。
その結果として当然株価の推移は下落し続けるでしょうし、これから上昇する可能性は低いと思われます。
売上高やEPS、BPSやROEといった株価を予想する際に使われる数字は当然のように厳しい数字を叩き出しています。
少し詳しく見てみましょう。
1.売上高
方向感があまりなく、少し見方としては難しいですが、直近3年間では徐々に売上高を落としており、あまりいい傾向ではありません。
これから巻き返す材料もないように感じます。
2.EPS(1株当たりの利益)
2015年以前はほぼ0に近い推移です。
しかし、2016年には大きくマイナスを記録しており、2017年はその反動で多少のプラスとなっております。
この2016年のマイナスが今後どのような影響をもたらすのかは、これから東芝がどのように信頼を回復するかにかかってくると思われます。
3.BPS(1株当たりの純資産)
こちらは2015年までは順調にプラスを伸ばしています。
しかし、粉飾決算が明るみになって以降、一気に下落し、2017年にはマイナスを記録してしまっています。
このまま下がり続けるようなら会社自体が立ち行かなくなる可能性すらあります。
4.ROE(株主資本利益率)
粉飾決算までは特別大きな変化はありませんが、それ以降では直近-65.12%を記録しており、とても手が出せる状態ではなくなっています。
これらの数値を基に考えると、落ち込みが短期的なものではなく、むしろ長期化してしまっているような印象を受けます。
粉飾決算が明るみになる以前からも売上高を落としていることが懸念材料として挙げられ、そこから上記の数字を落としてしまっているようです。
今後としては後述するシャープのように巻き返せるのか、それともこのまま下がり続ける一方なのか、
いずれにしても今手を出すべき銘柄ではないように感じます。
二部降格したシャープのその後
シャープは2016年6月に、東芝と同じように東証二部降格となりました。
株価は一時期100円を割り、投資家間でかなり話題となりました。
そんなシャープですが、現在では業績が回復しており、現在一部上場の手続きを行っているところです。
何故業績が回復し、一部上場にまでこぎつけることができたのでしょうか。
実はシャープは二部降格後、経営の失敗を受け台湾の鴻海精密工業が約3分の2の株式を取得し、ホンハイ傘下となりました。
日本の大手電機メーカーとしては初の外資傘下となります。
シャープを買収する鴻海とはアップル製品をメインとする数々のデジタル機器の組み立てを行う台湾の巨大企業です。
その売上高は約15兆円にも登り、連結の従業員数は100万人を超えるとのこと、規模でいうとシャープの5倍という大きさです。
鴻海の主な狙いは、アップルが有機ELを採用すると発表し、
現在アップルの業務が売り上げの半分を占めている鴻海はこの波に乗っておきたいというところでしょうか。
そして、不振だった北米テレビ事業からの撤退を発表、従業員の大幅削減により、赤字の回復を目指しているところです。
シャープの業績回復の要因はここにあり、今までメインだったテレビ事業を切り捨て、
新しい事業にチャレンジし、結果を残したというところにあります。
実は東芝も新規事業にチャレンジしていたのですが、ご存知の通り大失敗に終わっています。
そうです、原子力事業です。
原子力事業が成功していれば、東芝もシャープと同じ道に進むことができたのでしょうが、
現段階で損失は7000億を超えており、米原子力発電子会社が破産となれば、その損失は1兆円にまで膨らむ見通しです。
アメリカ国内で失敗し、では日本ではどうかというと、やはり脱原発の流れか、新たに原子炉を作るというのは現実的ではないと思われます。
世界的にも原子力事業は先細りの一途を辿っており、東芝は新たな事業を再び模索していく流れになると予想されます。
東芝がシャープになれるのか、それともこのまま衰退していくのか、経営陣の力量が試される場面です。
いずれにしても、株価が下落し続けている中、今東芝株を買うことは得策ではないでしょう。
まとめ
ここ数年、東芝のように大企業の株が暴落するなどが多く起こっています。
漠然と安定してそうと言う理由で株を買うのではなく、きちんと数字を見て投資を行いましょう。
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