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始めに
ペコちゃんのキャラクターでおなじみの不二家は、自社店舗による洋生菓子販売と自社ブランドである菓子商品の製造・販売の2本柱によって経営しています。それに加えて近年ではコンビニエンスストアへのPB(プライベート・ブランド)委託業務も手がけることで、過去の不祥事により失った信頼の回復と業績拡大を図っている途上です。
本記事では不二家の株価を予想するとともに、今なお暗い影を落とすかつての不祥事についても簡単にですが言及します。
1章 これまでの不二家の業績
この章では不二家が辿ってきた業績や施策について説明します。賞味期限に関する不祥事やそれに伴う方針転換といった、現在の不二家を知る上で重要となる要因になります。それではさっそく話を進めていきましょう。
不二家の歴史
今年で生誕107周年を迎えた不二家ですが、その始まりは1910年にまでさかのぼります。
創業者である藤井林右衛門が、横浜にて「FUJIYA」という屋号の小さな洋菓子店を開いたことに端を発します。第一次世界大戦後の好景気に後押しされ、洋菓子店の横には喫茶室まで併設しました。持ち手を握ることでソーダ水が出てくるという「ソーダ・ファウンテン」が話題となり、人気を博しました。オープンした年のクリスマスには日本初となるクリスマスケーキを販売し、ここから日本人になじみ深い「クリスマスにはケーキを食べる」という習慣が生まれた訳です。
また海外ではショートケーキという名の洋生菓子はそもそも存在せず、この組み合わせによるケーキは不二家が発祥だと言われています。源流となったケーキはホイップクリームではなくバタークリームのような味付けだったとされていますが、その詳細はあまり分かっていません。不二家の看板商品であるショートケーキの原型が完成したのはおよそ60年前の1958年のことで、冷蔵庫の普及や好景気といった要因が重なる中で日本人好みのケーキへと徐々に改良されていきました。
ショートケーキが完成する8年前には看板キャラクターである「ペコちゃん」が、翌年にはボーイフレンドの「ポコちゃん」が誕生しました。その二人を商品デザインに起用した「ミルキー」が、ポコちゃんの誕生年である1951年に発売されたのです。それ以降も様々なお菓子やドリンクを発売し、1965年にはついに東京証券取引所へと株式上場を果たしました。
株式上場を果たした後にも「ペコちゃんのほっぺ」や「ミルキーロール」といった人気商品が次々と生まれました。しかしその後2007年1月に不祥事が続発したことで、当時の第2位株主であった森永製菓が株式を全て売却した時点から、不二家は大きく方針転換をすることになります。この不祥事に関する内容は次項にて説明します。
近年の不二家
2007年1月、内部告発により公にされたのは使用期限の切れた牛乳の使用でした。大々的に報道された当時は「消費期限が切れた」牛乳とされていましたが、その後に不二家側が公式に発表した内容によると、通常の消費期限より3日早く規定した「社内での使用期限が切れた」牛乳であったことが判明しました。ただしその他にも消費期限切れの鶏卵やリンゴを使用した洋生菓子を製造したことなど相当な数の不祥事が露呈し、不二家本社には実に1,000件以上のクレームが殺到したと言います。
そうした報道を受けて森永製菓が保有していた全株式を売却したため、その致命的なダメージにより店舗閉鎖のリスクが高まった瞬間に、一艘の助け船を出した企業がありました。それが国内菓子パンシェア率4割を占める業界最大手である、山崎製パンでした。
前述した不祥事を出すまでは高級路線とは言わずとも、中価格帯での自社店舗による専売を続けていました。しかし山崎製パンと業務資本提携の締結後は従来の方針を一新するよう指導が入り、工場主体で経営することになりました。不二家会長として山崎製パンの山田元副社長が就任した時点で、全商品を低価格帯へと値下げする代わりに製造数は維持することで、工場の稼働率を上げる施策に尽力します。
また商品開発にかける時間の短縮も施策として取り入れ、商品開発の主戦力として生産ラインに関わる従業員を起用することで、試作品から量産化への運びで断念することがないよう取り組みました。この施策については現在の親会社でもある山崎製パンで実際に取り入れている手法の模倣となります。
工場の従業員らが率先して製造し、なおかつコンビニエンスストアのバイヤーに対して直接営業をかけさせることで、最先端の流行やニーズに敏感になるよう働きかけました。山崎製パンが持つ巨大な販売網を利用した画期的な施策でしたが、そうした施策が功を奏して現在では業績の黒字化を狙える状況へとなりつつあります。
こうした施策は家族経営とも言うべき前経営陣時代では考えられないものであり、時代に即した形での経営を心がけることで失われた信頼回復に臨みます。
不二家の施策
次章で解説する不二家の株価を変動させる要因としては、以下の通りです。
①山崎製パンの子会社化による、低価格帯への路線変更
②各工場における製品開発部による、コンビニやスーパーへの持ち込み営業
③クリスマス商戦に向けた限定商品の製造・販売
こうした施策の話題を交えつつ、本題である不二家の株価を予想していきます。
2章 不二家の株価
過去の不祥事を機に経営方針を大きく転換した不二家ですが、膨れ上がった赤字の圧縮や黒字化も含めて、市場はどのような判断を下すのでしょうか。次項からは株価を変動させる要因について解説します。
不二家の株価が上がる要因
不二家の株価が上がる要因としては、以下のようになります。
・自社店舗以外での外販による増益
大手コンビニエンスストアやスーパーに自社商品を卸売、もしくはPB商品として委託することで赤字続きだった洋生菓子部門の業績を補填している現状があります。現時点でもコンビニ限定の売れ筋商品はいくつかありますが、商品の切り替えが早い分、現場による商品開発でも相応のスピード感が要求されます。こうした施策を通じて流行への対応力が現場に備われば、商品開発もより円滑になり、ゆくゆくは増益による株価の上昇を見込めるかもしれません。
・各お菓子の売れ行きから想定する主戦力の構成変更
市販されている菓子商品における売れ行きの傾向としては、和洋問わず生菓子が年々減少傾向にある一方で、チョコレートを筆頭に飴やビスケットは増加傾向が見られます。特にチョコレートの人気ぶりには目を瞠るものがあり、この理由としては忙しい合間でも手軽に甘味を取り入れられるところにあるのではないでしょうか。
食品においても値段の他に簡便性が重要視される昨今では、値段が高い割に日持ちしない生菓子は敬遠されやすいことが推察されます。また最近ではドラッグストアでの菓子商品の売れ行きが好調という実態もあります。マーケティングを活用して各小売店の傾向に合わせた商品を販売できたならば、洋生菓子の売上を補填できる可能性も十分考えられます。
・クリスマス限定商品の売れ行き好調
今年のクリスマス限定ケーキとして、「あまおう苺たっぷりの贅沢ショートケーキ」があります。ケーキ全体にあまおう苺を18粒を贅沢に使用したクリスマスケーキであり、12月16日までの予約限定商品となります。その他にもクリスマス限定の商品が多数用意されているため、その売れ行きが好調であれば黒字化にも寄与する可能性があります。
不二家の株価が下がる要因
不二家の株価が下がる要因としては、以下のようになります。
・過去の不祥事による信頼感の欠如
不祥事が発覚してから10年経った今でも、インターネット上には不祥事に関する情報が掲載されたままです。実際に調べてみると、2014年に投稿された不二家のクリスマスケーキの味に関する質問では、回答の一つにホールケーキを分解したかけらにカビが付着した画像まで載せられていました。そのケーキ自体が不二家のケーキであるかどうかの証拠らしきものは写っていませんでしたが、そうした情報が公共の場に晒されているだけでも、信頼の回復に支障を来す可能性は否めません。また同質問への回答では、予約した人が一番古いケーキを渡されるというような一文もあり、明らかな不信感と嫌悪感が垣間見えました。2017年の現時点でこそ悪いニュースは聞こえませんが、今後不祥事となりうるニュースが飛び出した時に、株価が下落することは容易に想像がつきます。
・甘味を全面に押し出すことによる商品開発の偏り
コンビニエンスストアへのPB商品の委託に際して、男性から年配の利用者に至るまで、幅広いターゲット層に適した商品開発が必須となりました。不二家と言うと甘党の人が喜ぶような洋生菓子や菓子類が豊富ですが、コンビニスイーツの中には甘味を抑えた商品も少なからず存在します。万人受けしそうな甘味のきいたスイーツに加え、最近のコンビニスイーツでは素材や香りの良さ、発想の斬新さといった複合的な魅力のある商品が増えているようにも見受けられます。スイーツを購入する動機としては甘味が欲しいからであるものの、ただ甘いだけでは売上の伸びも芳しくありません。従来の不二家に則った商品開発が継続すれば、日々進化していくコンビニスイーツに押し負ける可能性もありえるでしょう。
これからの不二家株価予想
参考として今年10月時点での決算報告について一部抜粋しますと、以下の通りです。
・12月期第3四半期の連結経常利益
→前年同期比の67.1%減となる1.9億円に下落
・通期となる同利益
→従来予想を42.9%下方修正した16億円となり、40.2%の減益の見通し
・通期となる連結最終利益
→11倍上方修正した164億円となり、13倍の増益率を見込む
・株主への期末一括配当
→10円から15円へと増額修正した
以上の情報から判断しても現在の株主への利益還元は期待できる一方で、今後の株主に対する配当金については定かでありません。無配の期間が長かったこともありますので、今後の業績次第では株価の下落に限らず、減配や無配といったリスクも浮上しそうです。
まとめ
赤字の圧縮については徐々に成果を上げるものの、黒字化の目処が立たない部分もあります。不二家の株価については短期間での値上がりを見込みにくい現状であるため、長期的な値上がりを市場全体として見守る流れになるのではないでしょうか。
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