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始めに
化粧品を展開しているブランドとしては国内最大手である資生堂ですが、化粧品業界における時価総額順位においてもやはり1位をキープしています。
時価総額とは上場企業の価値を表した指標であり、計算式は以下の通りです。
時価総額=発行済み株式数×その時点での株価(時価)
計算式に株価が含まれるように、企業自身の成長力や株主資本を反映する形となります。
または単純に証券取引所に上場を果たした全企業についての時価総額の合計を指す場合もあり、こちらの意味ではその証券取引所の規模を測るための目安として利用されることもあります。
近年では外国人観光客の増加による恩恵を大きく受けたとして、一時期はインバウンド関連銘柄として投資家たちの記憶に鮮明に残りました。
そんなある程度の成熟を見せている資生堂ですが、今後の株価はどのように変動していくのでしょうか。
本記事では資生堂の業績を辿るところから始めて、今後の株価を現時点までのニュースも踏まえつつ予想していきます。
1章 これまでの資生堂の業績
資生堂の株価を予想する上で外せないのが、これまでに築き上げた業績についてです。
その始まりは1872年と歴史も古い資生堂ですが、今日に至るまでどのような施策を以て現在の地位まで上り詰めたのでしょうか。
資生堂の歴史
近年の資生堂をより深く知るために、まずは資生堂のルーツから辿っていきましょう。
1872年、創業当初は日本初となる洋風調剤薬局として経営を開始しました。
創業時点から資生堂という商号であることは同じなのですが、この時は化粧品事業への注力はそれほど大きくはありませんでした。
1915年に商標を「花椿」にした翌年である1916年、化粧品部門が独立する形で設けられたことで、化粧品事業が本格始動していきます。
その際に白粉やスキンケア用クリームの他にも、自身の商標と同じ名前の「花椿」という香水も販売し、人気を博しました。
それから東京証券取引所に上場後、戦後の経済復興に乗じて資生堂は世界へと市場を拡大していきます。
1957年には台湾を始めとした世界各地で、日本の純正ブランドとしての知名度を確立するべく化粧品販売に最大限力を注ぎました。
その後1977年にフランス人デザイナーによるファッションショーを開催したのを契機に、化粧品のみにとらわれない事業を次々と展開していきました。
1997年に新たな企業倫理や行動基準を策定してからはグローバル事業の深化を目指し、2012年にはインターネット事業を開始します。
そのどれもが複雑化するニーズをいち早く探るための取り組みであり、多様な顧客層の獲得に向けての施策の一環でした。
商号である資生堂の由来のように、人々の生活に新たな価値を提供し続ける企業として多角的な経営を通じて、化粧品業界での確固たる地位を築くに至りました。
近年の資生堂
2015年8月をピークに外国人観光客の増加による「爆買い」の恩恵を受けた企業の多くが、その時点の高値を超えられずにいます。
しかしその一方で資生堂は以降も高値の記録を上塗り、上昇トレンドを有したままでした。
爆買いの余波が落ち着いた後でも資生堂の株価が下落しなかったのは、中国での人気ぶりに秘密があります。
資生堂の化粧品が中国人女性に広く受け入れられ、かつ中国内で扱われる化粧品の高価格化が進んだために、中国事業の展開率が日本国内に比べてより高い数値を記録したのでしょう。
そして今では中国に限らず、海外における高価格帯の化粧品ブランドへと発展できるよう、さらなるグローバル化を測っている最中です。
資生堂の施策
これは次章の内容と重複する部分もありますので、資生堂の施策を箇条書きにしますと以下の通りです。
・アジア地域本社設立による、アジア地域での内需獲得
・6ヶ所の地域本社を主導とするグローバルマーケティングの確立
・企業買収による事業拡大ならびに多角的な営業
・デジタルコンテンツを利用した若齢層の取り込み
・女性役員の積極的な抜擢
次章ではこれらの要因について詳しく考察するとともに、本題である株価予想へとつなげていきます。
2章 資生堂の株価
この章では資生堂の株価が変動する要因について見ていきます。上昇か下落、どちらに傾くにせよ一つの要因が相反する性質を有することは否めません。
以下では各要因について詳しく見ていきましょう。
資生堂の株価が上がる要因
資生堂の株価が上がると考えられる要因としては、以下の通りです。
①インバウンド特需も踏まえたアジアでの供給拡大
2015年6月、アジア地域でのブランド確立を達成するべく、シンガポールに「資生堂アジアパシフィック」を設立しました。
資生堂が現在展開中のブランドに関するマーケティング機能を地域本社へと委託することで、
現地の需要に即した決断を促しやすくなり、さらなる顧客獲得を目指す取り組みをしています。
前述した外国人観光客が日本国内で資生堂を購入したことをきっかけに、現地におけるリピート率が上昇しやすい環境であることはまず間違いありません。
そうした環境を土台としたマーケティングを企画するとともに、
現地に即した形での新たなマーケットが獲得できれば業績好調による株価の上昇が見込みやすいと言えるでしょう。
②グローバルマーケティング強化に伴う、ブランドの最適化
また資生堂アジアパシフィック設立に応じて、日本、米国、欧州、中国、トラベルリテールといった5つの地域本社にアジアが加わる運びとなりました。
これにより合計6つの地域本社にグローバルマーケティングを確率しようと始動したばかりです。
そのため可能性としては未知数ではありますが、各地域における資生堂ブランドの最適化を実現することで、世界的な知名度の向上ともに株価の上昇も十分考えられます。
③米国AI企業買収による顧客層の拡大
米国地域本社であるシセイドウ アメリカズ コーポレーションが今月7日、AIに特化したベンチャー企業である「ギアラン」を買収しました。
この企業が有するAR(拡張現実)等の最先端技術を活用することで、顧客自身が似合う化粧の仕方を実際に本人へと施すことなくバーチャルで示すことが可能となりました。
近年ではAIを搭載した商品やサービスも増加の一途を辿っているため、AI関連企業の買収により時代に適する形でのデジタルマーケティングを狙う意向を示しました。
AI自身は情報を集積すればするほど学習を重ねることが可能となりますので、試験的な意味合いも強い試みである一方、
継続して行うことでより個人の現状に密着したカウンセリングを行えるようになります。
この試みが成功すれば、後述する若齢層での活用にも幅がきくかもしれません。
④日本国内での若齢層への浸透率向上
資生堂の歴史でも触れたように、2012年には日本国内においてもインターネット事業を開始しています。
若齢層の顧客を拡大する意図から専門学生や大学生を対象とした就活用のメイク術の講演を行う以外にも、
デジタルコンテンツを意欲的に発信することで、資生堂のブランドイメージを若齢層にも合わせる形での取り組みが行われています。
資生堂の株価が下がる要因
前項に対して、株価が下がると考えられる要因としては以下の通りです。
①買収企業の業績低迷
今月2日には、買収企業の一つである「ベアミネラル」の販売店舗を約100店舗閉店するに至りました。
こうした店舗閉鎖を受けて通期決算については上方修正の見込みとなりましたが、純資産については約225億円少ない見込みとなっています。
買収企業関連での業績低迷が響き、株価が下落する可能性も否めません。
②海外ブランドの知名度に劣る
2020年に開催予定の東京オリンピックのこともあり、早急なグローバル企業の仲間入りが急務となっています。
ただしグローバルマーケティング確立に向けての施策もまだ日が浅いため、海外ブランドに対する競合力としては劣る部分もあります。
2016年度の株主総会で魚谷社長が提言した
「2020年度のROE(株主資本利益率)10%超えを実現し、海外企業と十分に戦える環境を作って」いけるかどうかで株価が大きく変動していくことが予想されます。
参照:http://www.shiseidogroup.jp/ir/account/shareholder/2016/
③若齢層向けの化粧品が少ない
化粧品に求められる需要の多様化とともに、日本国内では様々な種類の化粧品があふれています。
また今や若齢層の間では当たり前となった安価なプチプライス化粧品とどう対抗していくかが、資生堂の掲げる「顧客層の若返り」のカギを握ります。
いくらマーケティングをデジタル化していったとしても、若齢層の低所得化も依然として現存する昨今では、資生堂が持つ中・高価格帯のブランドが敬遠されやすい可能性が払拭されることはありません。
顧客層の高齢化だけが進行するような状況が継続してしまうと、近い将来に株価が下がる要因ともなりえるでしょう。
これからの資生堂の株価予想
以上のことを踏まえて資生堂の株価予想をしていくと、株主総会のスピーチからも分かるように、資生堂全体としては2020年に控えた東京オリンピック開催を目処にして営業利益の底上げを狙っている状態にあります。
そうした狙いもあることから、化粧品の外枠にとらわれない先鋭的な施策を次々と講じています。
ただしその施策により不足の損失を買い込んだ時に、いかにして損失額を少額に抑え切るかで、株価も大きく影響を受けることでしょう。
そうしたリスクは少なからずあるものの、潜在的な顧客層の確保を急ぐ資生堂の株価は市場の期待感が高まるに合わせて、今後も値上がりする可能性は高いと言えるでしょう。
まとめ
魚谷社長が牽引して以来、資生堂の業績は飛躍的に伸びたことは言うまでもありません。
またその弁舌の巧みさも功を奏して、株主が魚谷社長の方針に不信感を抱いて離脱する可能性は限りなく低いと判断できるでしょう。
急成長を遂げようとする企業ほど株価は変動しやすくなるものですが、後はその成長を市場全体が見込めるかどうかで株価は自ずと変動していくことでしょう。
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