株式会社の機関と仕組み

株式会社というと、株を売買できる会社というイメージがあると思うが、いろいろなルールや決まりがありその中で経営が行われている。株を売買する上で、株式会社のしっかりとした機関としての仕組みを知っておくと、より投資を楽しむことができると考えている。

この記事では、株式会社の機関としての役割や、仕組みについてまとめている。「株式会社」というものをより深く理解したい人は、ぜひ一度読んでおくといいだろう。

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株式会社の機関

株式会社の概要

株式会社は株式を発行して資金を調達するが、その際に出資をして株式を取得する人が株主である。株主は、出資の見返りに、自益権や共益権などの権利が与えられることになる。

法律的には会社の基本的なことは株主総会で意思決定するが、実務的には代表取締役や取締役が行っていく。そして、このような株式会社の運用がしっかりと行われているかをチェックする必要がある。それが、監査役(会)である。

株式会社は財務諸表を作り、活動成果を株主総会で報告することになる。

株式会社の機関は次の10通りである。

株式会社の機関

  • 株主総会
  • 取締役
  • 取締役会
  • 監査役
  • 監査役会
  • 会計監査人
  • 会計参与
  • 監査等委員会
  • 指名委員会等(指名/監査/報酬)
  • 執行役

このうちで、株式会社に必ず必要となる機関が「株主総会」と「取締役」である。

株主総会

では、株式会社に必要となる株主総会というものについて見ていこう。株主総会は、株主全員が構成する会議体の機関で、定められた手続きで会議を開いて、決議や報告を行う機関である。ただ、例外として会議を開催せずに済ませてもいい場合がある。それは、議決権を行使できる株主全員が、書面や電磁的な記録で同意をしめすと、そのことは総会が可決したということになる。

株主総会の招集

株主総会には「定時総会」と「臨時総会」の2種類がある。

定時総会 臨時総会
開催 毎決算期に1回、その年度の成果を確認するために開催する。 必要に応じて開催する。
招集 定時総会、臨時総会どちらも、日時や場所、議題を取締役会が決めて、代表取締役が、2週間前までに招集通知を出す必要がある(株主が承諾していれば電子メールでもOK)。例外的に、公開買者ではない会社は、1週間前に出せばよくて、定款でこの期間をもっと短くすることも可能だ。議決権のある株主全員の同意があれば、招集手続きをしなくても開くことができる。
決議   招集通知に議題として上げていないないようを決議することは違法になる。ただ、取締役会を置かない会社であれば、株主総会で決議できる事項は限定されないという違いがある。
少数株主   議決権総数の3%以上を(公開会社では引き続き6ヶ月以上)持つ少数株主は、取締役に株主総会の招集を請求して、拒否されれば裁判所の許可を得て自分で株主総会を消臭することが可能である。
公開会社の場合   取締役会のある公開会社の場合は、議決権総数の1%以上または300個(単元株制度を取る会社では300単元)以上の議決権を引き続き6ヶ月以上持つ株主には、提案権を使って、議題を株主総会に追加することが可能になっている。その場合は、株主総会の日の8週間前に書面で請求するという手順が必要である。

議決権

1株1議決権の原則(単元株制度をとる場合は1単元1議決権)

株主総会では、株主の人数ではなく、投下した資本の金額によって議決権が与えられることになっている。ただ、会社が持っている、自己株式には議決権がない。

注意点として、持合株式の抑制のために次のような制限がある。

A社がB社の議決権総数の4分の1超をもつとき、B社がA社株を保有してもそれには議決権はない

議決権の行使

必ずしも株主本人が株主総会に出席する必要はなく、代理人に議決権を行使させてもいいことになっている。

株主総会に出席しない株主

株主総会に出席しない株主は、議決権行使書面(書面投票用紙)に賛否を記入して会社に送る方法で議決権に参加することが可能である。

決議

決議には「普通決議」と「特別決議」、「特殊決議」の3種類がある。

普通決議 議決権総数の過半数を持つ株主が出席して(定足数)、その出席株主の議決権の過半数の賛成で成立する。
 特別決議  議決権総数の過半数を持つ株主が出席して(定足数)、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立する。
特殊決議 議決権を行使できる株主の人数で半数以上、なおかつ、議決権の3分の2以上の賛成で成立する。
普通決議

普通決議の定足数は、鉄管によって変えることができるが、取締役や監査役、会計参与、会計監査人の専任決議や監査役以外の解任決議は、定款でも定足数を議決権総数の3分の1未満に下げてはならないとされている。

  • 取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任
  • 取締役、会計参与、会計監査人の解任
  • 取締役の報酬(取締役の報酬は、株主総会または定款で定めるものとされている)
  • 計算書類の承認
特別決議

特別決議の定足数は、定款で議決権総数の3分の1まで緩められる。

  • 特定の株主からの自己株式の取得
  • 株式併合
  • 取締役会がない会社の新株発行
  • 監査役の解任
  • 取締役、監査役、会計参与、会計監査人、執行役員の責任の軽減
  • 資本金の減少
  • 金銭以外の財産による配当
  • 定款変更、事業譲渡、解約、精算
  • 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転
特殊会議

株式譲渡の制限を定めた定款を変更する決議などがある。

議事録

株主総会の議事録は本店(10年)、支店(5年)に備え置き、株主と会社債権者の請求に応じて見せる必要がある。

取締役会

取締役の必要人数は?

取締役を置く会社には、取締役が3人以上必要になる。取締役会を置かない場合は、1人いれば大丈夫だ。

取締役の任期は?

取締役の任期は原則2年以内だが、短くすることはできる。それに、公開会社でない会社では定款で10年まで伸ばすこともできる。

取締役の選任・解任は?

取締役は株主総会の普通決議で選ばれ、任期が満了する前でも普通決議で解任される。もし不正行為をした取締役の解任が否決された場合は、議決権や発行済株式の3%以上を(公開会社の場合は引き続き6ヶ月以上)持つ少数株主は裁判所にその取締役の解任を請求できる。

欠員の場合は?

取締役に欠員が出た場合は、新しい取締役が就任するまでの間に退任取締役が職務を続けることになる。取締役の退任で取締役の因数が法定数より下回った場合でも、その会社の監査役に取締役を兼任させることはできない。

取締役の報酬は?

取締役の報酬は、定款か株主総会の決議で定められている。金額が確定しない報酬は算定方法を金額以外の報酬は具体的な内容を定めることになっている。

社外取締役は?

社長や執行部の独創を防いで適正な経営をするためには公正な立場の判断が必要になる。その場合、執行部に対して意見を言える人が必要になる。そのような人たちを社外取締役という。

社外取締役になるには、いくつか条件があり、その会社か子会社の業務執行取締役、執行役、従業員または過去10年内にそのような地位についたことがある人は社外取締役にはなれない。

会社法では、社外取締役の選任を強制しているわけではないが、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、委員である取締役の過半数は社外取締役でなくてはならない。

取締役など役員の責任は?

取締役などの役員が任務を怠って会社に損害を与えた時は賠償責任を追うことになっている。この責任を免除するには、原則として株主全員の同意が必要となっている。

取締役などの役員の会社に対する責任の軽減について

会社に対する賠償責任を、一定限度で頭打ちにすることができるが具体的には次のようになっている。

  • 責任が発生した後に、株主総会の特別決議で軽減する
  • あらかじめ定款に定めておいて、発生後に取締役会の決議で軽減する
  • 報酬2年分で頭打ちにできる役員の場合は、定款の定めに基づいて責任軽減の契約を結ぶことができる

ただ、責任軽減できるのは、単純に任務を怠ったことの責任に限る。利益供与や利益相反取引、違法配当などの責任は軽減できない。

競業と利益相反取引の制限は?

取締役は、以下の場合には、取引の重要事実を説明して、取締役会(ない場合は株主総会)の承認を受ける必要がある。

  • 会社の事業と同種の取引をしたり、競争会社の代表として取引をする
  • 取締役が会社の取引をする
  • 取締役の責務を会社が保証する・・・など

取締役会

取締役会は任意で設置する機関だが、取締役会について解説していく。

取締役会とは?

取締役会はすべての取締役で組織する会議体の機関で次のような職務を行う。

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定
  • 取締役の職務の執行の監督
  • 代表取締役の選定や解職

取締役会は全員が承諾すれば招集手続きなしで開いたり会議の開催を省略したりすることができる。

取締役会の決定事項は?

  • 重要財産の処分や譲り受け、多額の借財、重要な人事、支店の変更やガバナンス体制の整備
  • 社債の発行
  • 募集株式の発行
  • 新株予約権の発行
  • 株主総会の招集
  • 代表取締役の選定、解職
  • 株式の分割
  • 準備金の資本組み入れ

決議は?

決議は取締役の過半数が出席して、その出席取締役の過半数を持って決定する。取締役は株主と違って決議の代理人の投票はできず、そのうえ、決議の公正のために決議の特別の利害関係を持つ取締役は投票してはならないということになっている。

議事録は?

取締役会の議事録は10年間本店に据え置く必要がある。

代表取締役

代表取締役は会社の業務執行をおこない、対外的に会社の代表者として行動する。代表取締役は取締役会の取締役の中から選ばれることになっている。

  • 取締役会設置外車には代表取締役が1名以上必要である
  • 代表取締役は株主総会や取締役会の決議を執行する
  • 代表取締役は会社の業務に関する一切の行為について権限を持っている

指名委員会等設置会社では、代表執行役が代表取締役の役割を担うので代表取締役は置かないことになっている。

監査役

監査役は取締役や会計参与の職務の執行を監査する職責をおう。取締役会を置く会社には監査役が必要である。ただ、全部の株式に譲渡制限がついている場合は、会計参与を置けば監査役は必要ないことになっている。会計監査人を置く会社には監査役が必要となる。

監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社には、監査役を置くことはできない。

  • 株主総会の普通決議で選任し特別決議で解任される。
  • 任期は4年だが、全部の株式に譲渡制限をつけた会社は定款で10年まで伸ばすことができる。
  • 監査役は、会社や子会社の取締役、会計参与、執行役や使用人を兼ねることはできない。

監査役会

監査役会は監査役全員で組織する会議体の機関だ。

  • 公開買者である大会社が監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社のどちらでもない場合は監査役会の設置が必要となる。
  • 監査役会を置く会社の監査役は3名以上、その半数以上は社外取締役でなければならない。
  • 監査役会設置会社では、監査範囲を会計監査に限定することはできない。

会計監査人

会計監査人は、計算書類とその附属明細書の監査を行う。これを決算監査という。この職務をおこなうためには、普段から監査している必要がある。これを期中監査という。そのため、調査権限が与えられているのである。

  • 大会社はすべて会計監査人を置く必要がある。それに、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社にも会計監査人は必要となる。
  • 会計監査人になることができるのは、公認会計士か監査法人に限れらている。しかも、会社と利害関係が強い場合は除かれる。
  • 会計監査人の選任、解任は株主総会の普通決議でおこなうが、職務の遂行に問題があるばあいは、監査役全員の同意で解任ができる。
  • 任期は1年だが、定時総会が特に夫妻人を決議しないかぎりは、自動更新される。

会計参与

会計参与は取締役と共同して計算書類などを作成するので、監査の機関ではない。

  • 会計参与になれるのは、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人となっている。
  • 取締役会設置会社でも、株式全部に譲渡制限をつけているばあい、会計参与を置けば監査役を設置しなくてもすむ。
  • 会計参与の選任、解任は株主総会で普通決議でおこなう。
  • 任期は2年だが株式全部に譲渡制限をつけた会社は定款で10年まで伸ばせる
  • 計算書類などを承認する取締役会に出席して意見を述べる義務がある

指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は「実際の経営にあたる人と、経営の基本方針を立てその遂行状況を監視する人とを分離するほうが、適正な経営を実現しやすい」という考えに基づいて設置された。

指名委員会等設置会社では、会社の業務をおこなうのは、取締役会が選んだ執行役でこれに幅広い権限を委ねている。取締役会は経営方針の策定や役員人事など、根幹に関わる重要事項だけを決める。執行役を兼ねない取締役は、業務執行に関与できないことになっている。

このタイプの会社は、監査委員会、指名委員会、報酬委員会という3つの委員会を置く。

監査委員会 取締役や執行役の職務の執行を監視する他に、会計監査人の選任や解任、不再任の議案を決める。取締役との訴訟で会社を代表するのも、原則として監査委員である。この委員会があることで委員会設置会社には監査役を置かない。
指名委員会  取締役の選任、解任について総会に提出する議案を決める。
報酬委員会  取締役や執行役が受ける報酬の内容を個人別に決定する。

どの委員会でも、そのメンバーは取締役会が選ぶ3名以上の取締役で、過半数は社外取締役となっている。監査委員はさらに、子会社も含めて執行役、業務執行取締役、使用人を兼任できない。

監査等委員会設置会社

日本の大会社の多くは監査等委員会設置会社である。国際的にも通用しやすい株式会社の設置形態として、指名委員会等設置会社がすでに存在するが、平成26年の会社法改正で、監査役員設置会社と指名委員会等設置会社の中間形態と言える、監査等委員会設置会社の制度を設けた。

監査等委員会設置会社には、取締役会と、代表取締役があり、この部分は監査役員設置会社と同じだが、取締役会の内部の監査等委員会が監査の職務を行うので、監査役は置かない。監査等委員は取締役だが、役割の違いからほかの取締役とは区別して選ばれる。監査等委員は、報酬も区別して定められていて、任期は他の取締役が原則1年なのに大して2年が確保されている。解任は株主総会の特別決議で行われる。

まとめ

株式会社の仕組みについて詳しく見てきた。正直、投資をするのにここまでの知識は必要ないかもしれない。しかし、より株式会社の内情を知って投資するのとしないとでは、その面白さが違ってくる。日経などのニュースを読み解く力もついてくるようになるだろう。

長期で株式投資を行っていくのであれば、このような知識を持っておいて損はない。ファンダメンタル分析という観点でも役に立つ知識なのでざっくりでも知っておくといいだろう。

 

この記事の著者・監修

株ビギナードットネット編集部

生徒数5000名を超える、株式投資のスクール『株アカデミー』にて講師として普段は株トレードのやり方を教えています。その講師陣が編集部としてこの「株ビギナードットネット」運営しており、特に株の初心者・入門者に向けて、株の基礎知識や用語などをわかりやすく解説しています。
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