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はじめに
日本を代表する飲料品メーカーである「サントリー」
一般的に企業が大きくなればなるほど株価というものは安定するものではありますが、この「サントリー」に関しまして、どのような株価における特徴があるのか、どのような投資方法に向いている銘柄なのか。
今回はそういった観点からサントリーの株価の特徴に迫っていきたいと思います。
サントリー株の特徴
『伊右衛門』『BOSS』『南アルプスの天然水』など、誰もが一度はみかけたことある飲料名ではないでしょうか。三種類ともにサントリー製品という共通点があります。
サントリーの株価について調べてみても、日経平均株価を構成する『日経225』のなかから検索してみても、なぜか銘柄が見当たりませんが、『JPX日経400』の方にありました。
『日経225』と『JPX日経400』の違いは、端的にいうと『日経225』が東証1部のなかから選ばれるのに対して、『JPX日経400』は東証に上場する全銘柄(東証1部、2部、マザーズ、JASAQ)から選ばれます。サントリーはもちろん新興市場ではなく東証1部です。しかし企業名称を注意深くみてみると『サントリー食品インターナショナル』となっています。
すでにお気づきの方もいるかもしれませんが『サントリー』という名前の株自体は存在しません。サントリーの飲料や食品を扱う子会社が『サントリー食品インターナショナル』として東証一部に上場しているのです。
サントリーの歴史
ここでサントリーの歴史を簡単にふりかえります。
会社のはじまりは1899年に鳥井信治郎が創業した『鳥井商店』です。ブドウ酒の製造からはじまり、赤玉ポートワインの大ヒットにつなげました。その後、日本ではじめてウイスキーの製造販売を開始します。『寿屋』の時代に清涼飲料の販売をはじめ、1963年に現在の社名である『サントリー』の名称になりました。
1972年には『サントリー』が『サントリーフーズ』を設立し、その後は大ヒット商品が続々販売されます。1981年にはウーロン茶、1992年にはBOSS、2004年には伊右衛門が販売を開始しました。そして2009年に飲料や食品事業を担う子会社として『サントリー食品』が誕生しました。2011年に今の『サントリー食品インターナショナル』に名称変更され、2013年に東証一部に上場しました。簡単にまとめただけでも歴史の長さをうかがえます。
近年のサントリーの業績
『サントリー食品インターナショナル』はコーヒーやお茶といった飲料全般と加工食品を展開しており、現在のソフトドリンク国内市場の約20%をサントリー商品が占めています。様々な場所で目に入るのも、もはや当然と言えるでしょう。また日本に限らず、欧州やアジア、オセアニアや米州などをグローバルに取り組んでいます。
では業績をみてみましょう。2013年に上場した際の初値は3120円でした。当時の初値ベースで時価にして約1兆円規模だったので、大きな話題になりました。その後の株価は年初の始値で見比べてみますと、3345円(2014年)、4125円(2015年)、5310円(2016年)と株価は右肩あがりで推移しています。ちなみに2017年の現在の株価は5100円(10月5日終値)です。
2017年の8月7日に発表された直近の業績をみてみましょう。2017年12月期第二四半期(1~6月)の連結経常利益は前年同期比6.8%増の409億円でした。通期計画の955億円に対する進捗率は42.9%と5年平均の40%と同じ水準とあります。一方で、直近3ヵ月の4~6月期の連結経常利益は前年同期比4.1%減の254億円でした。直近の業績発表後は、やはり経常利益の減益を受けて株価は一時、値下がりしました。これは『サントリー食品インターナショナル』に限らず、業績動向が株価に与える影響としては一般的です。
サントリーの株に向くのは長期?短期?
次に『サントリー食品インターナショナル』の株は長期保有向きなのか、短期保有向きなのかを考えてみましょう。長期保有を考える指標のひとつとして配当金があります。サントリーの過去の配当金は1株あたり68円(2015年)、73円(2016年)でした。株式会社フィスコの予想によると2017年の配当予想は74円とあります。ちなみに5100円(10月5日終値)で計算すると配当利回りは約1.45%となります。利回りはあくまで判断材料の目安です。配当を期待される人なら長期保有に向いている株といえるでしょう。また直近3ヵ月の4%減益を重くみるのなら短期向きの株といえるのではないでしょうか。
サントリー、今後の株価変動予想
清涼飲料の国内市場規模は約4兆円となっています。年間の新商品はパッケージ変更も含めると約2000種類ほど発売され、しかもそのほとんどの新商品が飲料市場からいつのまにか姿を消しています。コンビニやスーパーなどの棚をみれば一目瞭然で、定番商品が大半のスペースを占めています。入れ替わるのは新商品ばかりです。すなわち新商品のなかから大ヒットになり、かつ、生き残る確率は限りなく低いのです。飲料業界では「千三つ(せんみつ)」とよばれる言葉まで存在します。これは、新商品1000個のうち売れるのは3品という意味合いです。競争の激しい飲料市場で『サントリー食品インターナショナル』は生き残れるのでしょうか?
『サントリー食品インターナショナル』の上期(1~6月)の経常利益は増加しています。また1株あたりの純利益(=EPS)も、118.79円(2013年)、117.28円(2014年)、137.42円(2015年)、149.05円(2016年)と順調に推移しています。数字を見ると、まだまだのびしろのある企業と考えられます。
サントリー株の特徴
株価が動くきっかけとしては、投資家に向けたIRが重要視されます。『サントリー食品インターナショナル』のホームページには投資家向けの情報が充実しており、飲料メーカーはIRの出やすい環境でもあります。
新商品のタイミングはもちろんのこと、海外展開や販促キャンペーンなど他産業よりも株価の刺激材料は豊富です。ただ、すべてのIRが株価を刺激するわけではないので、冷静に情報を見極めましょう。
IRの着目すべき点としては海外事業に注力していることがうかがえます。M&Aで海外事業と連携した有名な例として『オランジーナ』の炭酸飲料が挙げられます。欧州ではコカコーラをしのぐ国民的な飲料です。2009年に当時の『サントリー』がオランジーナ社を買収しました。2012年に、“フランス生まれ”の果汁入り炭酸飲料として日本国内で販売されると、たちまち人気を博しました。
もちろん海外の現地販売にも活路を見出しています。インドネシアではゼリードリンクの「okky」と呼ばれる商品を販売しています。オセアニア地域では天然のガラナ成分を配合した「V」というエナジードリンクを幅広く展開しています。特に東南アジアでは健康食品事業が利益に貢献しているようです。日本のみならず世界のマーケットを相手にした商品群だといえます。
特徴を踏まえての今後の株価変動予想
清涼飲料の首位はコカ・コーラグループです。国内清涼飲料のシェアを約30%占めています。次にサントリーが約20%と続きます。飲料の購入場所といえば、真っ先に近所のスーパーやコンビニなどが浮かぶと思いますが、自動販売機の役割も欠かせません。コカ・コーラグループは自動販売機のシェアもトップです。他社がなかなか追随できないなか、『サントリー食品インターナショナル』は2015年にはJT(日本たばこ産業)の自動販売機事業を買収し、積極的なM&Aで機材調達の効率化や販売体制の強化をおこないました。トップシェアは獲得できていませんが、自動販売機のシェア争いは今もなお続けられています。
今後の株価はどうなるのでしょうか? 国内の飲料市場が成熟しているなかでは、成長を維持するのでさえ難しい状況です。東京商工リサーチによれば、2016年の倒産件数は全国で8381件とあります。大手企業といえども、安泰な経営環境ではありません。
『サントリー食品インターナショナル』の強みとして、蓄積したブランド力が存在します。株式上場してからは数年の歴史しかありませんが、上場する以前からサントリーの社内で培ってきた技術やノウハウがすでに備わっています。大企業が過去の栄光にしがみつくのは簡単です。しかし、ブランドに甘んじることのない企業姿勢は商品開発から垣間見えます。『伊右衛門』のパッケージを刷新したり、『伊右衛門 特茶』といった健康志向に訴える商品を販売したり、と定番商品が変化し続けています。また最近では缶コーヒー『BOSS』のペットボトルタイプとして『クラフトボス』が挙げられます。発売三日で一旦出荷停止になるほどの人気商品です。現代のニーズを読み取った成功例のひとつといえるでしょう。
商品の売り上げが株価に影響を与えるのは言うまでもありません。ヒット商品の生まれる土壌はすでにあるので今後の新商品、ひいては株価も期待できるのではないでしょうか。
まとめ
今回『サントリー食品インターナショナル』の株価について考察してきました。サントリーの歴史をみてわかるように、清涼飲料のみならず、日本のお酒の文化に多大な影響を与え続けてきました。
創業者の鳥井信治郎の『やってみなはれ』精神は有名ですが、言葉だけに終わりません。既存ブランドの積極的な刷新として、しっかりと行動にあらわれており、失敗をおそれない改革には驚くばかりです。株価に関しては、世界情勢として北朝鮮の影響など読みづらい側面があります。最終的な株式投資は自己判断となりますが、今後も『サントリー食品インターナショナル』の株価においては、さらなる成長が期待できると考えられます。
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