ユーザーが興味のあるテーマや趣味の写真を共有するウェブサイトを運営する「ピンタレスト」はユニコーンの1社として知られていましたが、2019年4月18日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たし、投資家の間で一躍話題となりました。
日本では、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどに比べて、まだピンタレストの知名度は低いのが現状ですが、アメリカでは2014年にツイッターを抜き、SNSからのホームページのアクセスでフェイスブックに次ぐ第2位を占めるまでに使われています。
世界に目を転じても、ビンタレストは画像の収集といった個人が趣味で利用する枠を超えて成長しています。
実際、企業のマーケティングで利用すべき機能が満載で、ウェブサイトへの誘導率が非常に高く、ピンタレストから訪れるユーザーの購買のポテンシャルも高いということで、海外ではアパレルや旅行業など多数の企業がこぞってアカウントを開設しています。
■■■ 目次 ■■■
ピンタレストはどんな企業か
ピンタレストの歩み
「ピンタレスト」はシリコンバレーのスタートアップとして、元グーグル社員のベン・シルバーマンとポール・シャッラ、エヴァン・シャープを加えた3人により2010年に誕生しました。
このころ、すでにフェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアが世界的に広まっていましたが、3人が好みの画像をウェブ上で共有したのがそもそものピンタレストの始まりで、開発は前年の2009年から始まっていました。
スタート当時は地味で、2010年3月にベータ版を公開した当初は招待者のみ登録可能ということもあり、ほとんど注目されていませんでした。
それでも立ち上げからわずか9か月でユーザー数は1万人に達しました。
2011年3月に米タイム誌が選ぶ2011年のウェブサイト上位50に選ばれています。
同年秋になるとユーザー数は500万人を超えて無視できない数となり、マスメディアがいっせいに取り上げ始めました。
この報道効果もあってさらにユーザー数伸び率が上がり、2011年12月には「10大ソーシャルサイト」の1つとなるなど注目を集めました。
こうして、翌2012年3月にはフェイスブック、ツイッターに次ぐ「第3のソーシャルメディア」となりました。
その後も2015年9月に1億人、2017年9月に2億人、2018年9月に2億5,000万人とユーザー数は順調に伸び、2019年8月時点にはピンタレストのウェブで3億人に達したとアナウンスされています。
日本進出
国内でのグーグル検索での「ピンタレスト」検索回数は前年の10倍に増え、ソーシャルメディアでの言及数も急激に伸びました。
2012年2月には早くも月間1000万ユニークユーザー数を達成し、実際にユーザーが付いてきているサービスであることも証明されました。
翌2013年11月にはピンタレストの日本法人が設立されて日本語版サービスがスタートし、国内での利用が急速に伸びました。
日本国内での利用者数は公式には公開されていませんが、2013年の日本法人設立後、約一年で国内アクティブユーザーが対前年比で3倍に成長したといわれています。
また、リサーチ会社Nielsenが2018年5月に行った調査によると、モバイル端末からの国内月間アクティブユーザー数は約400万人に達しており、今後さらなる成長が見込めます。
ピンタレストの動向
ピンタレストは2010年に創業した後も成長を続け、グローバルの月間アクティブ・ユーザー数は2019年8月時点で3億人に達しています。
今後の動向を考える上でどのような人が利用しているのか、その属性に注目してみると、次の3のポイントが浮かび上がります。
インターネット利用者が多いということは、直接インターネットでの購買行動に結びつく可能性が高いユーザーが多く、企業がデータを取るなどマーケティングを展開しやすいメディアであるといえます。
また、ピンタレストは昼間働いて夜間にショッピングを楽しむといった生活スタイルの20代、30代の女性層の支持が厚いのですが、今後もこの傾向は変わらないでしょう。
ピンタレストで何ができるのか?
ピンタレストを理解するうえで知っておきたい基本用語集
ピンタレストを理解するために押さえておくべき基本的な用語は以下のとおりです。
用語 | 機能 |
ボード | 画像を収集する場所。ユーザーはテーマ別に自分のボードを作成できます。 |
ピン | 画像を収集することです。画像をアップロードしたり、ウェブサイトの画像を張り付けたりします。フェイスブックでの「投稿」、ツィッターでの「ツイート」と同じような意味です。ちなみに、ユーザーを意味する「ピナー」は、「ピン」に由来しています。 |
リピン | 他のユーザーがピンした画像を自分のボードに追加する機能です。 |
ホームフィード | フォローしているユーザー・ボードがピン/リピンした画像や、「インタレスト」で興味のある画像が表示されます。 |
フォロー | 他のユーザーや、ユーザーの所有するボードを自分のホームフィード上に表示できます。特定のボードを選んでフォローできるのが特徴で、「インタレスト」で興味のあるテーマをまとめてフォローすることもできます。 |
ピンタレストとは何か
ピンタレストは、ウェブサイトの画像をブックマークできるウェブサービスで、画像が主役です。
自分の興味や関心に沿って作成したテーマ(ボード)ごとに、自由に画像を追加(ピン)していきます。
もちろん、同じ趣味や興味・関心を持つ人の画像を見て「いいね!」と反応したり、コメントしたり、自分のボードにリピンできるなど、ソーシャルメディアの一面も備えています。
ピンタレストの特徴
ピンタレストには次のような特徴があります。
他のソーシャルメディアとの違い
インスタグラムとの違い
画像がメインであるという共通点はあるものの、性質や使い方は大きく異なります。
1番の違いは「画像の質」です。
インスタグラムは自分で撮影した画像を使いますが、ピンタレストで使うのは基本的にウェブサイトの画像です。ピンタレストで好まれるのは洗練された見た目の美しい画像です。
2番めは「リンククリック」の有無です。
インスタグラムは、リンクをクリックできるのがプロフィールの1か所だけで、画像から外部サイトへはリンクしない仕様になっています。
それに対して、ピンタレストはすべての画像にリンクが付き、画像をクリックするだけで簡単に外部に遷移します。
サイトへの誘導数やその先の行動を計測できるので、企業にとっても広告目的の利用がしやすくなっています。
3番めは「拡散効果」の違いです。
インスタグラムでは、他のユーザーの写真をシェアするといった拡散が基本的にできません。
対するピンタレストは、「リピン」が8割を占めており、一度投稿すると、自動で広がっていきます。
フェイスブックやツイッターとの違い
1番めは何でつながっているかという、「つながりの軸」です。
フェイスブックは知り合いとつながる「ソーシャルグラフ」ですが、ツイッターやピンタレストは興味・関心を軸につながる「インタレストグラフ」です。
さらに、ピンタレストでは「ボード」単位で興味・関心が細分化されるので、自分で興味のある内容のボードだけをフォローできるのが特徴です。
2番目は「情報の伝わり方」です。
フェイスブックやツイッターは、即時性があってすぐに反応を得られますが、情報がどんどん流れていくので、何度も同じ内容の投稿をする必要があります。
一方、ピンタレストにもタイムラインはありますが、検索すれば数年前の画像出てくることも多くあり、一度ピンするだけで永い時間流通してくれます。
その反面、ピンタレストは今すぐ伝えたいといった内容にはあまり適していないといえます。
3番目は「使い方」です。
フェイスブックやツイッターは、過去や今の出来事をシェアするツールとして使われることが多いのですが、ピンタレストは未来の夢や希望などを集めて可視化できるので、「未来に向けて」使うことができます。
ピンタレストは人とつながる必要がなく、他人の目を気にしなくてすみます。
自分の好きなものを集めればよい、というのがピンタレストの大きな利点です。
この利点に気づいた人が集まって、ピンタレストは今後ますます成長する余地が十分にあります。
ピンタレスト株は買いか
上場初日は28%高と堅調
未上場の急成長企業「ユニコーン」の1社として注目を集めていたピンタレストは、2019年4月18日、ニューヨーク証券取引所に上場しました。
初値は23.75ドルで公募・売り出し価格(公開価格)の19ドルを25%上回り、終値は公開価格を28.4%上回る24.40ドルと上々の滑り出しとなりました。
また、この日の終値で計算した時価総額は約129億ドル(約1兆4千億円)に達し、2019年の米国でのIPOとしては2番めの大きさとなる約14億ドル(約1570億円)を調達しました。
上場時のピンタレストの業績は2018年10~12月期に営業黒字を達成しており、通期の黒字化も視野に入っていたことから、投資家の安心感につながりました。
上場後の株価動向
IPO後、ピンタレストは一時35ドルを超える場面もありましたが、5月16日に発表した2019年第1四半期(1月~3月期)決算の発表後に株価が初値付近まで急落しました。
この急落の要因は、ピンタレストが示した2019年通期売上高の見通しが10億5500万~10億8000万ドルと予想の10億9000万ドルを下回っていたこと、また、通期の調整済みEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前損益)が4500万~7000万ドルの赤字との見通しを示したことにあります。
さらに、第1四半期の売上高は前年同期比54%増の2億190万ドルと急増して予想を上回った一方、純損失は4140万ドルに縮小したものの予想の3倍の赤字だったことが嫌気されました。
続く2019年第2四半期(4月~6月)の売上高は前年同期比62%増の2億6120万ドルと予想の2億3550万ドルを上回り、第1四半期(1月~3月)の急増からさらに加速。
好調な決算を受けて、ビンタレストは2019年の売上高見通しを上方修正し、従来予想の10億5500万~10億8000万ドルから10億9500万~11億1500万ドルに引き上げました。
IPOに絡んだ費用がかさんだため、通期の最終損益見通しは11億5950万ドルの赤字と、前年同期の損失3840万ドルから大きく膨らんでいますが、調整済みEBITDAは2604万ドルに縮小する見込みです。
売上げと月間ユーザー数が予想を超えて伸びたことや、この2019年通期見通しを上方修正したことが好感され、ピンタレストの株価は時間外取引で一時32ドル台後半まで上昇しました。
今後の見通し
ピンタレストは赤字が続いていますが、2021年までの黒字化を予想していると発表しています。
世界での月間アクティブユーザー数は2019年8月時点で3億人に達し、1ユーザーあたりの平均売上は29%増の0.88ドルと右上がりになっています。
売上や月間ユーザー数の伸び、さらにソーシャルメディアとしての今後の可能性を考慮すると、ピンタレストはこれからも成長を続けると期待される銘柄のひとつといえるでしょう。
ピンタレスト株の基本情報
ピンタレスト株を実際に売買したいという方は、以下の基本情報を参考にしてください。
企業名 | ティッカーシンボル | 上場市場 |
Pinterest,Inc. | PINS | ニューヨーク証券取引所(NYSE) |
ピンタレストの株が購入できる国内の証券会社は、サクソバンク証券、マネックス証券、楽天証券、SBI証券 です。
その中でもサクソバンク証券は手数料が業界最安値で、取り扱い銘柄数も6,000銘柄以上とダントツです。
また、CFD口座を利用して空売りができるのもサクソバンク証券だけですが、時間外取引に対応していません。
時間外取引ができるのは4社の内、マネックス証券だけとなっています。
まとめ
2010年に創業したピンタレストは、2017年6月の資金調達の際に123億ドルの評価を得て、その時点で同社の創業者兼CEOのベン・シルバーマンや、チーフクリエイティブオフィサーのエヴァン・シャープらは世界で最も若いビリオネア集団の仲間入りを果たしました。
また、2019年3月22日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した新規株式公開申請書を公開しましたが、その中で、企業価値が直近の資金調達の際に約120億ドル(約1.3兆円)と評価されていることが明らかになるなど、優良かつ成長性に富んだ企業として、株式市場も熱い眼差しを送っています。
写真共有サイト、ブックマークサイトが多数ある中で、なぜピンタレストが注目を集めてきたのか、今回のレポートではその理由や魅力について簡単に触れてみました。
特筆すべきは、ピンタレストのブームをけん引するのは20代、30代の女性が中心であることで、有名ブランドも女性層を狙って次々とアカウントを開設しています。
ピンタレストは創業以来、急成長を続けてきましたが、今後も海外を中心にユーザー数が増えるのにつれて、企業がマーケティングやショッピングでピンタレストを活用する事例が飛躍的に伸びていくと期待されます。
今後のピンタレスト株の動向に注目です。
この記事へのコメントはありません。