みずほフィナンシャルグループは、三菱UFJフィナンシャル・グループ (MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ (SMFG) とともに、3大メガバンクの一角を占める銀行持ち株会社です。
規模は第2位で、資本金で比較しても、三菱UFJフィナンシャル・グループの2兆1,415億円、三井住友フィナンシャルグループの2兆3,394億円に対して、みずほフィナンシャルグループは2兆2,567億円と、三井住友フィナンシャルグループに次ぐ国内最大級の金融機関といえます。
みずほフィナンシャルグループは、銀行を柱に、信託、証券、アセットマネジメント(資産運用)、シンクタンクを擁する総合金融グループ<みずほ>の統括企業という位置づけになります。
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みずほフィナンシャルグループの歩み
金融再編で総合金融グループ<みずほ>の誕生
1999年8月、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の大手3行が統合を発表し、同年12月に全面的統合の契約書に調印して共同で持株会社を設立し、総合金融グループの<みずほ>が誕生しました。
みずほホールディングスのスタート
2000年9月に「みずほホールディングス」を設立。
同年10月には傘下の信託・証券会社が合併して、「みずほ証券」と「みずほ信託銀行」が発足しました。
2002年4月、3行は会社分割と合併により「みずほ銀行」と「みずほコーポレート銀行」に統合・再編されました。
2003年1月、グループ経営体制の再々編のため、まず、「みずほホールディングス」が全額出資して「みずほフィナンシャルグループ」を設立。同年3月に両社の株式交換により「みずほフィナンシャルグループ」が完全親会社になりました。
One MIZUHO戦略
2013年7月、ワンバンク体制への移行で、傘下行の「みずほコーポレート銀行」が「みずほ銀行」を吸収合併し、行名を「みずほ銀行」に改称しました。
2017年11月、収益力向上に向けて、構造改革案を公表しました。
同構造改革の骨子は、2024年度末までに店舗数を現在の500店舗から100店舗削減し、2026年度末までにAIなどを使った業務効率化によりグループの従業員数を現在の約7万9000人から6万人に減らすとともに、2021年度までに極力前倒しで経費削減に取り組むというもの。
これによりコスト競争力や生産性の向上を図り、グループ一体となって事業を推進する「One MIZUHO戦略」のいっそうの進化を目指すとしています。
2018年11月、みずほフィナンシャルグループとLINEは共同で新たなネット銀行「LINE BANK」の設立に関する計画を発表しました。
両社傘下のみずほ銀行とLINE Financialを通じた共同出資により合意について発表しました。
出資比率はLINE Financialが51%、みずほ銀行が49%。
準備会社が関係当局の許認可等を得た後、2020年の開業に向けて準備に入りました。
2019年5月15日、2019年度の連結決算の際、2019年度の連結決算の際、2020年3月期から5年間の経営計画を発表しました。
同計画は、銀行を取り巻く環境が大きく変化する中で、当初の構造改革案計画から3割増やし約130店舗の削減を行い、2023年度に連結純利益9,000億円を達成するなど、更に経営改善・構造改革を進めるのを狙いとしています。
2019年5月27日、みずほフィナンシャルグループとLINEは「LINE Bank設立準備」を設立したと発表し、2020年度の新銀行の設立を目指して準備を進めるとしています。
みずほフィナンシャルグループの事業内容
みずほフィナンシャルグループの主な事業内容は、大別して次のように分けられます。
○リテール・中小企業向け事業
銀行業務を担当し、個人の顧客を対象に預金・投資運用商品による預かり資産ビジネス、個人ローンを展開し、中堅・中小企業に対しては資金調達ニーズや事業継承、M&A、海外進出支援、IPO支援などの経営課題に対応しています。
2019年3月時点における貸出金は前年度比0.9兆円減の78兆円とやや減少していますが、預金量は一般法人の内部留保が増加していることもあって120兆円と増加傾向にあります。
○大企業・金融・公共法人向け事業
大企業に対して資産調達・運用、経営・財務戦略の相談受付などの金融ソリューションを提供しています。
また、公共法人向けの事業としては、農林漁業産業の成長支援や公共施設建設への融資などに対応しています。
この事業による2019年3月期の業務純利益は前年度比467億円増の2,761億円と、次のグローバルコーポレートに次ぐ稼ぎ頭となっています。
また、手数料などの非金利収入が純利益の56%を占めており、金利に頼らない経営体制の構築が着々と進んでいるといえます。
○グローバルコーポレート
日本企業に対して海外進出支援のための情報提供、融資などに対応するとともに、海外企業の日本進出の際の支援などの金融サービスを提供する<みずほ>の中核業務です。
2019年3月期の業務純益は前年比795億円増の1,712億円と持ち直しましたが、世界景気の先行き不透明感の高まりや競争激化により、今後の業務純益は不安定さが増す状況となっています。
○グローバルマーケッツ
顧客の運用ニーズに対応するため、金利,債権,為替,株式のセールス&トレーディングやトレジャリー(資金管理)業務を行うとともに、金融市場の動向調査や予測、分析など財務戦略や投資戦略を提供しています。
2019年3月期は業務粗利益が1,920億円と前年度から半減するとともに、業務純利益がマイナス136億円と赤字転落しました。
国内市場を中心に低金利政策によってセールス&トレーディング業務が伸び悩んだために大幅な減益となっています。
ただ、連結業務純益全体へのインパクトは大きく、将来的に金融市場が活況となればこの事業がみずほの収益をけん引するものと期待されます。
当面の取り組みとしては、アジア新興国通貨取引高を増加し、システムをAI化する方針を打ち出しています.
○アセットマネジメント
個人から機関投資家まで、顧客のニーズに対応した資産運用に関するサービスを提供しています。
国内では資産運用の機運が高まりを見せ始めたばかりですが、確定拠出年金の加入者は2018年8月末に100万人、2019年4月末に123万人を超えるなど年々増加傾向にあります。
また、企業年金からの需要も増えており、年金などによって資金運用額が増大すれば、この部門もグループの収益増に貢献すると期待されることから、みずほフィナンシャルグループも同事業を中核事業のひとつと位置付けています。
みずほフィナンシャルグループの強み
具体的には、次に示す数字を見れば一目瞭然です。
強み1 | 個人顧客は2,400万人で、日本人の約5人に1人はみずほ口座を持っている計算になる。 |
強み2 | 国内法人取引では、上場企業の約7割をカバーしている。 |
強み3 | 海外法人取引では、世界の大企業の約8割をカバーしている。 |
強み4 | 国内ネットワークでは、47都道府県全てに展開しているのはメガバンクでみずほフィナンシャルグループだけ。 |
強み5 | 海外ネットワークでは、約40の国・地域に、約120か所の拠点を展開している。 |
みずほフィナンシャルグループの最大の強みは、個人顧客と法人顧客の取引が多いということです。
特に、個人顧客は約2,400万人で日本の人口の約20%をカバーしており、また、全上場企業の約7割をカバーしており、経営基盤が他のどのメガバンクよりも安定しているといえます。
また、規模の大きさだけでなく、サービス提供力の高さにも定評があります。
国内取引では、シンジケートローンの国内シェアNo.1、M&Aアドバイザリーとして業界トップの実績、アナリストランキングはNo.1を獲得しています。
※シンジケートローンとは、企業の大型の資金調達ニーズに対応して大きなリスクを分散するために複数金融機関が同一の融資条件で行う共同融資を指します。
さらに、海外の取引でも、グローバルシンジケートローンは邦銀で1位、世界では5位、米州社債は日経金融機関で1位、米州では9位の地位を獲得しており、世界的なシェアを見ても上位にランキングしているなど、様々な強みを持っています。
みずほフィナンシャルグループの業績
2019年3月期は、「抜本的構造改革への着手・実行」「次期システムへの移行」「中期経営計画の完遂」という3つの重要な課題にグループ一体となって取り組みを進めるとともに、第4四半期に構造課題を加速させるためにシステム減損などで約6,900億円の一時損失を計上しています。
一方、国内大企業取引や海外取引を中心に顧客部門が好調に推移したことや、政策保有株式の売却を計画に沿って実施したことにより、一時損失計上前ベースでは純利益5,789億円と前年度実績対比で+24億円となっています。
2020年3月期はシステム減損がなく、純益は4780億円と前期比5倍に急反発する見通しとなっていますが、その一方で、米国が2019年7月に10年半ぶりの利下げに踏み切るなど世界的に金融緩和が強まっていることが業績改善の足を引っ張る形となっています。
みずほフィナンシャルグループの株価動向
現状の株価は?
みずほフィナンシャルグループの2019年8月8日時点の株価データは以下のとおりです。
現在値 | 155.1円 |
年初来高値 | 180.2円 (2019/1/31) |
年初来安値 | 150.1円 (2019/6/4) |
10年来高値 | 280.4円 (2015/6/1) |
10年来安値 | 98.0円 (2011/11/21) |
メガバンク3行のファンダメンタルを比較してみましょう。
時価総額 | 予想PER | 予想配当利回り | |
みずほフィナンシャルグループ | 約3.8兆円 | 8.4倍 | 4.77% |
三菱UFJフィナンシャルグループ | 約6.8兆円 | 7.5倍 | 4.72% |
三井住友フィナンシャルグループ | 約5.2兆円 | 7.5倍 | 4.68% |
みずほフィナンシャルグループは3メガバンクで規模が第2位である一方、時価総額は約3.8兆円と、三菱UFJフィナンシャルグループの約6.8兆円、三井住友フィナンシャルグループの約5.2兆円に次ぐ規模となっています。
予想PERで比較すると、みずほの8.4倍に対して、三菱UFJの7.5倍、三井住友の7.5倍と較べてやや割高ですが、東証1部全銘柄の予想PER13.61倍よりはだいぶ低めです。
銀行株のPERが低いのは、日銀が超低金利政策を採っているため収益が抑えられていることが最大の理由です。
予想配当利回りは、三菱UFJの4.72%、三井住友の4.68%に対して、みずほは4.77%とほとんど差はありません。
東証1部全銘柄の2.06%からすると倍以上の利回りです。
なお、取引単位は100株で2万円未満の資金と少額で投資できることやPBRが0.45倍と低水準であることから、個人の売買が活発となっています。
また、高配当利回りに着目して同銘柄をNISA(少額投資非課税制度)で利用して長期保有する投資家が多いのも特徴の一つになっています。
株価見通し
特に2019年3月期決算が大幅減益となったことにより一段安となり、6月4日に年初来安値となる150.1円をつけています。
その後はやや持ち直してきたものの上値は重く、利回りや低PBPなどで割安感はあるものの、超低金利政策の修正が見込めず、収益に先行き不安があることから、150円~180円のボックス相場が続く可能性が高くなっています。
なお、2019年7月31日に発表された第1四半期決算では、経常収益9888億円(前年同期比+3.2%)、経常利益2198億円(同+5.1%)、純利益1624億円(同-83.3%)と好調で、経費削減などにより増収増益を達成したことがプラス材料となり、8月1日に159.4円まで上昇する場面もありました。
2019年5月に発表した中期計画で、2019年度からの5年間を次世代金融への転換を図る期間と位置付け、経営資源配分などのミスマッチを解消するとともに新たな顧客ニーズに対応し、「純利益9,000億円を目指すとしており、これが実現すれば収益は大幅に改善します。
また、同中期計画で株主還元についても「資本基盤の一層の強化を進め、早期の株主還元拡充を目指す」としていること、法人向けのM&A助言など同社の手数料ビジネスが強くて高評価されており、この分野での中期的な成長が期待できることなど、中長期的観点に立つと、みずほフィナンシャルグループの株価が10年来高値の280.4円に接近する場面もありそうです。
まとめ
みずほフィナンシャルグループは、国内最大級の顧客基盤を有するリーディングバンクとして『One MIZUHO 未来へ。お客さまとともに』というスローガンのもと、次世代金融への転換を進めています。
2019年3月期決算での巨額の損失計上は、低迷が続く銀行業で重荷になっている「負の遺産」を一掃し、キャッシュレス決済などへの投資に舵を切るための前向きの措置とされており、これで減損の必要のあるものはすべて終わったことになります。
いよいよ、みずほフィナンシャルグループは経営基盤の構造を変え、反転攻勢を目指すスタート地点に立ったといえます。
今後は、資産運用などの手数料収入や現金を使わないキャッシュレス決済の「Jコインペイ」といった新規事業などでいかに稼ぐ力を高められるかが勝負となります。
みずほフィナンシャルグループの生き残りを賭けた戦いがいよいよ始まろうとしています。
なお、2020年度にはLINEとの共同出資による新銀行「LINE BANK」がスタートします。
「LINE」の月間利用者数は8000万人を超えており、みずほ銀行が培ってきたノウハウを活かした「スマホ銀行」が発足すれば、銀行はより身近な存在へと変化します。
<みずほ>の狙いはそういった変化を創り出すことであり、メガバンクを取り巻く環境の変化に適応していくことを目指しています。
<みずほ>の銀行という枠を超えた新たな金融サービスの展開に要注目となります。
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