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始めに
ケンタッキーと言えば、マクドナルド、モスバーガーに次ぐファストフード業界の大手FCチェーン店として知られています。
お盆やクリスマス、正月といった世間一般の大型連休の度にCM放映を集中的に行い、月替わりの新作発表もかかさず実施しています。来月にもクリスマスが控えた現在、ケンタッキーの株価はどのように変動するでしょうか。本記事ではケンタッキーの業績と施策から見る株価予想について、徹底的に考察していきます。
1章 これまでのケンタッキーの業績
この章では株価予想の前準備として、まずはケンタッキーの歴史とも言うべき創業者であるカーネル・サンダースの生涯から紐解いてみましょう。
ケンタッキーの歴史
大都市があるケンタッキー州とオハイオ川を挟んだ隣、インディアナ州ヘンリービルにてカーネル・サンダースは生まれました。
幼少期に父親が亡くなったため、女手一つで育てられていたカーネルは6歳から料理を始めました。幼いながらに母親を手助けしようと料理を作り続けたカーネルは7歳の頃、家族のために焼いたパンが生涯続くサザンホスピタリティを行うきっかけとなるのです。家族全員の美味しい笑顔を引き出せたことが、「おいしいもので人を幸せにしたい」というKFCの企業理念へと受け継がれていくことになります。
10歳の時に幼いカーネルが農場まで働きに出たのも、ひとえに家族のためでした。それ以降は独学で知識を学んだ上で多くの仕事に就き、機関士や判事助手、保険外交など様々な職種を経験しました。そんな折に石油会社の支配人の援助もあり、カーネルは30代後半にしてガソリンスタンドの運営を始めます。大恐慌や干ばつといった悪影響からガソリンスタンドを閉めることになっても、彼が決して自身の信念を曲げることはありませんでした。その際に併設したカフェの懇切丁寧なサービス同様に利用客の人気を集めたのが、カーネルが作るフライドチキンの味でした。
1930年から提供し始めたフライドチキンはわずか5年後、ケンタッキー州知事直々に「カーネル」という名誉称号を授与されました。幾度にもわたる苦境を乗り越えたカーネルが、現在のオリジナルレシピを完成させたのが1939年のことでした。ガソリンスタンドを手放し、フライドチキンのレシピ以外の全てを失ってなおもカーネルは諦めませんでした。カーネル独自のオリジナルレシピで調理したフライドチキンが1羽分売れるごとに5セントを支払ってもらう、いわゆるFCビジネスを実践したところ、わずか8年で600店舗まで店舗数を急増させました。
アメリカ南部に伝わるサザンホスピタリティをどんな苦境においてもカーネルが実践し続けたのは、彼がただ純粋に誰かを喜ばせることに喜びを感じていたからです。90歳でその生涯を終えるまでに数々の慈善事業を行い、FC店舗で働く人々へオリジナルチキンの技術や知識を広く教えるとともに自身も黙々と働き続けました。ひたむきに利用客や自身のフライドチキンの製法と向き合い続けた結果として、今日に至るまでケンタッキーは多くの人に愛され続けています。カーネル亡き後も彼の理想を継承する形で現在のケンタッキーは運営されていますが、どのような施策を講じているかを次項で詳しく説明します。
近年のケンタッキー
2007年11月期からの約10年間で30億円を上回る赤字を経常し続けたケンタッキーは、今年の5月10日に自身の傘下であった日本ピザハットを投資ファンドへと売却する運びとなりました。このニュース自体はあまり話題になりませんでしたが、ニーズの複雑化とともに日々激しく揺れ動く流行への対応が今ひとつ追いつかなかった証拠であるとも言い換えられるかもしれません。
ケンタッキー自体はフライドチキンを主戦力とする外食産業の一業態ではありますが、近年ではコンビニエンスストアでさえフライドチキンを積極的に導入および販売している事情があります。また各コンビニによってその味付けに特徴があり、ケンタッキーと比べてもお手頃感のある価格設定となっていることも、新規顧客の獲得を妨げる要因となっていることは否めません。そうした事情からクリスマス商戦においても苦戦を強いられる可能性は十分考えられます。
ケンタッキーの施策
次章でケンタッキーの株価予想をしていく前に、株価を変動させる近日中の施策について列挙してみると以下のようになります。
①ネットオーダーシステムの導入
②クリスマス商品における当日予約の導入
③新商品の定期的な更新
ファストフード業界の1、2位であるマクドナルドやモスバーガーとの差は歴然としており、依然としてケンタッキーの店舗数は伸び悩んでいます。上記した二つの大手チェーン店との差分も含め、次章では今後の株価の変動について予想していきます。
2章 ケンタッキーの株価
この章ではケンタッキーの株価について、価格を変動させると予想される要因を一つずつに分類しながら考察します。それではさっそく見ていきましょう。
ケンタッキーの株価が上がる要因
ケンタッキーの株価が上がる要因としては、以下の内容が考えられます。
・商品開発の自由化
後述する内容とも関連していますが、ケンタッキーはフライドチキンの枠組みにとらわれるあまり商品開発の制限が多いように見受けられます。新規顧客層を開拓するためにも、固定観念にとらわれすぎない自由度の高さで商品開発をする必要があります。
その他の要因についてはデメリットの側面がより際立つため、次項にてより詳しく触れていきます。
ケンタッキーの株価が下がる要因
ケンタッキーの株価が下がる要因としては、以下の内容が考えられます。
・ネットオーダーシステム導入による負担の未解消
インターネットを利用したオーダーシステムの導入により、今期の連結営業利益は前期より12%も低い16億円を予想金額としています。ただし既存店舗については8.4%の減収から2.9%の増収を果たしており、前年度の連結営業利益を上回る可能性がない訳ではありません。来年6月からの本格稼働を見込んだ試験的な運用となるため、店舗側への落とし込みを徹底しなければ不測の事態を招きかねません。
インターネットを介することで集客率の向上を狙いますが、ネットオーダーを導入した直後はサーバーへのアクセスや注文数が過剰になり、店舗側が対応できなくなるリスクも十分考えられます。本部側のサポートが不十分でなおかつ店舗側が注文に対応しきれない場合には、利用客も不信感を募らせかえって客足が遠のくリスクは否めません。
・コンビニエンスストアのフライドチキンに押し負ける
これは外食産業に限ったことではありませんが、近年では顧客のニーズが多様化するとともに本業以外でも副業と呼べるかもしれない事業に注力する企業が年々増えています。ネット環境を土台とした現代社会では利便性がより重視され、各業態の既成概念にとらわれないサービスが期待される状況です。コンビニエンスストアがフライドチキン商品を始めとするカウンター商品やその他のサービスを取り入れ、各イベントに合わせた販促効果を狙うように、ケンタッキーもまた方針転換の岐路に立たされています。
各業態間で設けられていた境界線が曖昧になり顧客の取り合いが激化する最中でのケンタッキーの対応は、今ひとつスピード感に欠けるところがあります。時代の波に乗り遅れたことでこれまでの致命的な痛手を被ることにもつながったため、その点を踏まえての改善が見込めなければ市場の総意としての株価が下落することは十分ありえます。
・既存商品や新商品の固定化
ファストフードを牽引し続けるマクドナルドも一時期は不祥事が続発したことで深刻な営業不振となり、店舗縮小の流れが生じたこともありました。しかし現在ではその規模こそ縮小しつつも利益を確実に伸ばしている状態です。こうした違いを生む最たる要因こそ、既存商品や新商品の固定化にあることが推測されます。
新商品の頻繁な切り替えを行う一方で、既存商品の品質向上ならびに値引きによる主戦力の見直しを図ったことにより、マクドナルドの増益につながったものと見られます。マクドナルドのリピート客の多くはいずれかの既存商品を購入する割合が約7割と高いため、あえて既存商品のブラッシュアップや入れ替えを行うことで、一時期は低迷した顧客満足度が上昇の一途を辿りました。
対するケンタッキーはフライドチキン以外の商品開発には消極的な面があり、商品数としてもそれほど多くはありません。また新商品とも言うべき期間限定で販売する商品についても、その一部が固定化されてしまっています。たとえマクドナルドであっても人気の期間限定商品であれば固定化している状況ではありますが、恒例の定番メニュー以外は年々微妙に変化しています。以上の経緯からも分かるように、ケンタッキーの商品は切り替わる頻度も低く、目新しい商品が少ないことから利用客の購買意欲をかき立てることができていない現状にあります。新規顧客の獲得を実現できていないのもこうした理由によるものと推察されます。この流れを断ち切れない限りは株価が伸び悩むことも自明でしょう。
以上の点から総合的に判断しても、ケンタッキーの株価については上昇を見込みにくい印象を受けました。クリスマス商戦に向けての商品自体も例年通りの感があり、ネットオーダーシステムの導入に少なからず疑問を覚えるほどでした。近藤社長が発言した「ボーダレスな戦い」を乗り切る意味でも、革新的な新商品や発想が生まれなければ株価の下落も危ぶまれる現状であることにまず間違いありません。
まとめ
創業者のカーネルが理想としたのは、あくまで利用客の美味しい笑顔を引き出す料理を、最善を尽くして提供することだったはずです。その理想を実現するためにも、カーネルの遺志を多少曲げてでも時代に即した商品開発が課題として求められています。新規顧客を獲得する意味でも積極的なマーケティングが急務であり、その動向が顕著に見られるまでは好材料が発表されることを期待する他ありません。
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