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はじめに
日本の航空会社としても有名なANAですが、航空運送サービスの業界において順位こそJALに負けるものの、株主優待で貰える特典が豪華であることからJALよりもお得度が高いとも考えられていました。しかし2018年3月22日の時点で株主優待の内容が一部変更になるという発表がありました。これによりかつては魅力的だった株主優待の内容が変更された訳ですが、実際にこれ以降にANAの株主になるメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
そこで今回の記事ではANAの株主優待の内容変更を考慮した上での、ANAの株主になるメリットについて解説します。株主優待が豪華であるほど長期投資の旨味が増す訳ですが、それは未だに健在なのかどうかを確認してから投資の是非を検討する必要があるでしょう。
1章:ANAの株主になるメリットとは
この章ではANAの株主になるメリットについて解説していきます。以前であればJALよりも豪華な株主優待が用意されており長期投資するほどお得感がありましたが、今回の内容変更によってどの程度影響が出たのかを以下でさっそく見ていきましょう。
1ー1 国内線の割引方式の変更
ANAでは株主優待として航空券の購入料金について割引料金が適用されますが、これまでであれば国内線の片道料金が半額になっていました。しかし変更後の2018年10月28日以降ではその半額割引が廃止され、その代わりとして「ANA FLEX 運賃」が適用されることになります。この運賃の割引方式では空席次第で割引料金が変動するため、航空券の割引金額が一転して不明瞭になってしまいました。現時点での株主から最も評判が悪い内容変更は、この割引金額の不明瞭さにあるようです。
1ー2 発売期間の変更
以前であれば搭乗日の2ヶ月前までしか予約購入できませんでしたが、変更後では2018年9月3日分からを搭乗日の355日前より購入できるように変更されています。355日ということはおよそ1年弱先の航空券を予約購入できるという意味であり、これだけ聞くとかなり利便性が高くなったのではないかと思えるでしょう。しかし世間で言うところの大型連休では同様の考えから、予約購入しておきたい株主が大勢存在することは容易に想像できます。そうなれば今後は世間の休暇に合わせるほど、予約したい便の座席が全部埋まってしまうことも十分考えられます。
1ー3 プレミアムクラスでの優待運賃の変更
ANAではプレミアムクラスへのアップグレード料金でも株主優待が適用されており、それ自体は残っていますが実際の内容が以下のように変更されます。
・アップグレードへの料金変更
これまでであれば「プレミアム株主優待割引運賃」および「プレミアム小児株主優待割引運賃」では、路線別ではありますが運賃額が一定になっていました。しかしこれ以降では普通席の優待運賃に所定のアップグレード料金が加算される形へと変更されます。
・アップグレードの日にち変更
ANAから株主優待として用意されるアップグレードポイントを、これまでは当日の空港でのみ使用することができました。しかし今後は搭乗日2日前よりANAの公式HPでも事前予約することができます。
これ以外でも株主優待の内容が微妙に変更されていますが、その詳細については持株数ごとで内容が異なります。ただ業界最大手のJALとの株主優待の内容に関する比較については後ほど解説します。
2章:ANAの概要とは
この章ではJALとの比較をするにあたり、まずはANAの概要について解説します。ANAはそもそもその傘下にバニラ・エアとピーチ・アビエーションを置いてきましたが、2018年3月22日にその2社が統合発表するに至りました。これには東京オリンピックが深く関連していますが、どういった経緯によって傘下の2社が統合しなければならなくなったのでしょうか。その概略について簡単にではありますが確認しておきます。
2ー1 ANAと比較されるLCCとは
ANAやJALといった航空会社は日本国内で長い歴史のある航空会社である一方で、LCCとも呼ばれる格安航空会社はようやく6年目を迎えたばかりです。しかし2020年に東京オリンピックが控える現在、日本国内よりも海外におけるLCCが競合となりつつあります。このLCCとは以下のような特徴を持つ航空会社のことを指します。
・無料サービスの廃止、あるいは有料化
・機内設備の簡素化
・座席が通常の航空機よりも多く配置
・小型機が中心
・一般の航空会社よりも航空頻度が高い など
ただ一般の航空会社よりも座席の密度が高いためにやや狭く、予約のキャンセル不可だったり払い戻しにかかる手数料が高いなどの制約があります。しかしその分格安で渡航できたり荷物の重量制限が緩いといったメリットも存在するため、航空料金をなるべく安く抑えたい旅行者に人気を博しています。
ANA傘下のバニラ・エアおよびピーチ・アビエーションも日本国内のLCCという立ち位置ではあるものの、LCCの競合社に比べれば一路線あたりの航行頻度も低く機材の効率的な稼働を実現できているとは言い難い現状でした。また路線も競争の激しい台湾市場だけに偏ったために、台湾路線での競争であえなく脱落してしまい累積損失は2017年度3月期の時点で120億円にまで膨らんでいます。
ANAというフルサービスが前提での航空会社が母体であったために、LCCの理想的なモデル追求には不十分な部分が多く目立ちました。そのため2社の統合が早巻きに敢行され、かつ路線戦略としても小型機による中距離LCCという策を講じる結果となりました。
アジア圏内での同距離における強豪としてはマレーシアのエアアジアX、シンガポール航空の傘下にあたるスクートがこれに該当します。
また統合を予定よりも早くに実行に移した理由としては、深刻な人材不足が根底にあります。ピーチ・アビエーションでは来年以降、自社養成でパイロットを増員することを予定しており、バニラ・エアと統合することで事業拡大に必要な人材が補充できることが最たるメリットであったとされています。今後とも海外の競合社がLCCという分野において激しい競争を繰り広げていくからこそ、未だ弱小とも言えるピーチ・アビエーションにはこうした統合という緊急措置が必要であったと推測されます。
2ー2 ANAの株価
日本国内、海外ともに航行しているANAでは売上高こそ2017年度3月期でマイナスを記録したものの、営業利益および純利益ではプラスの結果を出しています。ただこれまで傘下であったバニラ・エアおよびピーチ・アビエーションの営業不振が祟ったのか、ANAの株価は2018年度1月末からゆるやかに下落していき現時点では1株あたり4,000円前後で推移しています。統合後のピーチ・アビエーションの動向次第ではANAの株価が今後とも下がる可能性は十分あるでしょう。
2ー3 自社航空機におけるWi-Fiの無料化
これについては元々JALがWi-Fiの有料化からの無料化へと先行していましたが、ANAも2018年4月より自社航空機におけるWi-Fiの利用を無料化する予定があります。JALやANAのような国内線ではフルサービスが前提であることからこれまでは独自性のあるサービスによる優位性の確保が難しいのが現状でした。しかしANAもまたJAL同様にWi-Fiの無料化を機に、それに付随する形で無料エンターテイメントプログラムの豊富さを前面に押し出してJALとの差別化を図ります。
ただWi-Fiの無料化や無料エンターテイメントプログラムの提供だけでは、スマートフォンを使用できる乗客以外では魅力を感じられなくなってしまいます。その点を考慮してANAでは国内線でも主戦力とされる「ボーイング777」や「ボーイング787」型機の全席に、シートモニターを導入していくことを明らかにしています。シートモニターが全席に導入されれば機内で楽しめるエンターテイメントプログラムの価値が高まり、いずれは登場予定であるリニアとの競合にも勝てる可能性が出てくるかもしれません。
上記のような戦力を駆使しながらANAはピーチ・アビエーションとともに、国内および海外での競合社と渡り合っていこうとしています。長期的スパンでの実施により結果が伴うため短期的な株価の動向は想定しにくいですが、株主優待を期待しての長期投資であれば現状では様子見しながら株を保有するという選択肢はあっていいかもしれません。
3章:ANAとJALではどちらがよりお得か
この章では記事の締めくくりとして、ANAとJALとではどちらの株主優待がよりお得かを解説していきます。
株価の相場は常に変動しているため比較しにくいものはありますが、この記事ではひとまずANAの株価を1株あたり4,000円、JALの株価を1株あたり4,200円とします。その上でどちらの株がどの程度株を保有することでどのような株主優待を期待できるか、簡単に比較してみましょう。
最低100株から株主優待が受けられることも考慮してそれぞれどのように異なるか、以下に比較してみます。
・ANAの場合
株主優待券1枚×年2回
自社グループ優待券1冊×年2回
・JALの場合
株主優待券1枚
自社ツアー商品7%割引券国内および海外ツアー各2枚
これだけ見るとツアーで旅行を楽しみたい場合にはJALの方が若干魅力を感じるかもしれません。しかしANAの自社グループ優待券では以下の系列店において割引適用されるようになります。
①宿泊(ベストフレキシブル料金の室料のみ20%)6枚
②飲食(10%)5枚
③婚礼(10%)1枚
④会議・一般宴会(15%)3枚
⑤ANAのツアーの一部(7%)各2枚
⑥空港売店(10%)5枚 など
これだけ豊富なラインナップであることを加味すれば、その内容に一部変更があったとはいえANAの株主優待が航空株としては未だに魅力的であることはまず間違いありません。
まとめ
ANAとしての戦略も模索しながらの状況ではあるため楽観視できないものはありますが、長期投資が前提であればそれほど直近の出来事ばかりに目を向ける必要もないとは思います。日頃から旅行する機会が多くかつ長期投資による株主優待が目当てであれば、これを機にANAの株主になることも検討してみてもいいかもしれません。
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