スターバックスといえば「スタバ」という愛称で知られるカフェで、世界規模で展開するコーヒーチェーン店です。
1971年にアメリカのシアトルで創業して以来、高級コーヒー豆の魅力的な風味で顧客の心を掴み、現在では90以上の国と2万店舗を超える規模に成長しています。
スターバックスが扱うコーヒー豆は、世界のアラビカ種のうちでも最高品質の3%だけです。
しかし、高品質のアラビカ種を手に入れるだけなら他の企業でもできます。
スターバックスのコーヒーが支持される理由は収穫後の豆の扱いにあり、独自の技術と知識で質の高いコーヒーを提供しています。
そればかりか、居心地の良い場所やバリスタ(スタッフ・仲間)たちの笑顔といったスターバックスならではの雰囲気がお客を出迎えてくれます。
さて、スターバックスといえば「ハワード・シュルツ」といわれるほど、実質的創業者でカリスマ経営者のハワード・シュルツを忘れるわけにはいきません。
コーヒー事業で奇跡ともいわれる世界展開ができたのも、シュルツあってのことです。
■■■ 目次 ■■■
スターバックスの歩み
ハワード・シュルツのスターバックスが誕生
スターバックスは、1971年にワシントン州シアトルでコーヒー豆の焙煎・販売会社として創業しました。
当時は店舗が4つの小さな会社だったスターバックスにハワード・シュルツが入社したのは1982年で、シュルツはマーケティング責任者に抜擢されました。
翌年、イタリアのミラノで開かれた見本市でエスプレッソを飲んだ経験がハワード・シュルツをカフェ経営に駆り立て、同社を退社すると1986年にイル・ジョルナーレ社を設立し、カフェの経営に乗り出しました。
そして、1987年、34歳になったハワード・シュルツはスターバックスを買収して社名をスターバックス・コーポレーションに改称し、現在のようなカフェスタイルを確立しました。
高成長
ハワード・シュルツが率いるスターバックスは2000年末までに13か国、2600店に拡大し、業績も堅調に推移して総売上高は20億ドル近くに達し、1992年以降の売上高の年平均成長率は49%に及んでいました。
1996年、スターバックスは北米以外に初の店舗をオープンしました。
それが東京の銀座で、その後、他国からも店を開きたいとの要望が殺到し、2000年には米国以外に遠くニュージーランドや中国も含め、525店舗を展開。
ハワード・シュルツが2000年にCEOから退いた後も拡大を続け、2003年には総店舗数は7225店舗に。
また、アジア・太平洋地域で1000軒目の店舗が北京でオープンしました。
試練
スターバックスはルーツであるコーヒー事業以外にも手を広げ、2007年に総店舗数は13,000軒に達していました。
しかし、その前年の2006年、スターバックスの業績は悪化し始めました。
客一人が使う金額が減り始め、2007年の夏になると、来店客数の伸びは過去にないほど落ち込みました。
その原因となったのは効率性・迅速性を追求してコーヒーの質が低下したことや、店舗デザインの簡素化、2007年の大量出店などで、客離れが急速に進み、既存店売上高もこれまでになかった水準まで落ち込みました。
改革
業績の悪化を受けて、2008年1月、ハワード・シュルツはCEOに復帰し、本来のコーヒー事業への回帰を掲げて改革に取り組みました。
シュルツは即座に実行すべき3つの取り組みを報道発表します。
「米国の店舗ビジネスの現状の改善」と「スターバックス体験を生き返らせる」、「コスト削減と顧客サービスの改善」の3つです。
そして、2008年前半にはリワード(特典)カードなど新しいプログラムや新商品を導入しましたが、2008年4月の第2四半期決算でスターバックス史上初めて、既存店売上高の伸びが前年比でマイナスを記録しました。
2008年7月1日、シュルツは業績不振の米国内約600店舗の閉鎖を発表し、スターバックスの改革に乗り出します。
しかし、業績は悪化の一途をたどり、2008年通期で純利益は前年比97%減の3.26億ドルに落ち込みました。
再生
2009年4月に入ると、改革の成果が表れて、1年ぶりに米国の既存店売上高が上向き始めました。
2009年第3四半期の業績は、純利益が2008年第1四半期以来の伸びを示して1.52億ドルと急回復。
1株当たり利益も予想の0.15ドルを上回る0.20ドルでした。
全体の売上高は前年の26億ドルから24億ドルに減少したものの、既存店売上高は月ごとに改善され、営業利益率は前年の8.8%から13.4%に急伸し、四半期決算発表後には前年に7.17ドルの最安値まで落ち込んだ株価が、最高値の20ドル超をつけました。
この勢いは止まらず、翌2010年第4四半期の記録的な好業績は、いまだにスターバックスの歴史を決定づける重要なものとされています。
シュルツは後に、「規律のない成長を戦略としたために、スターバックスは道を見失ってしまった。今日、スターバックスは類いまれな企業になろうとしている」と回顧しています。
日本におけるスターバックスの展開
日本進出、上場、そして、展開
国内では1995年10月に、米国スターバックスグループと日本企業のサザビーリーグの合弁会社として「スターバックスコーヒージャパン」を設立したことが、日本進出の出発点となりました。
翌1996年に、東京・銀座に第1号店を出店し、2001年10月に新興市場のジャスダックで上場を果たしました。
上場廃止へ
2014年、創業者ハワード・シュルツの意向を受け、スターバックスコーヒージャパンは米本社主導のもとに新たな成長路線を歩むことになりました。
当時、スターバックスコーヒージャパンは国内に約1000店舗を展開するまでに成長し、2014年3月期決算は売上高が1256億円、純利益が59億円と好調でした。
しかし、国内のコーヒー市場はコンビニエンスストアなど異業種との競争が激しくなったことから、経営強化を図るため、ハワード・シュルツ会長CEOは2014年9月23日にスターバックスコーヒージャパンを約1000億円で完全子会社化すると発表しました。
合弁相手のサザビーリーグも公開買付けに応じることに合意し、2015年3月26日にスターバックス・コーポレーションによるスターバックスコーヒージャパンの完全子会社化が完了。同年3月にジャスダックに上場していたスターバックスジャパンの上場を廃止しました。
その後の展開と取り組み
スターバックス・コーポレーションは、完全子会社化の発表に伴い、日本で重点的に取り組む分野として他業種の店舗内への出店、食品メーカー向けのライセンス商品展開、携帯端末を通じた販売などを挙げました。
その後も、女性層を中心に人気を博し、より日本人の口に合ったコーヒーやフラペチーノが開発されるなど日本オリジナルメニューも数多く生まれています。
店舗数も飛躍的に増え、2018年6月時点で国内では直営店の600店舗を含めて1363店舗を展開しています。
近年のスターバックス コーヒー ジャパンの取り組みを挙げると、まず、2017年9月に顧客の体験価値を向上させるため、「スターバックス リワード」という会員向けロイヤルティープログラムを開始しました。
スターバックスの強み
高いブランド力
スターバックスは、シアトルで創業して以来50年近くの歴史を築き上げてきましたが、今なお新メニュー開発や、新サービスの展開、他社との差別化などに余念がなく、世界最大のコーヒーチェーンとして活躍しています。
そんなスターバックスの強みは、「高いブランド力」です。
スターバックスというブランドに対する顧客の熱狂度は展開する世界各国で共通しています。
スターバックス体験
ファンをつくるためにスターバックスが重視にしているのが、「どのような顧客体験をつくれるか」という「スターバックス体験」です。
ハワード・シュルツはスターバックス体験を次のように表現しています。
どのような会員に対して、どのようにアプローチすればよいのかを探り、パーソナライゼーションを通じて良質な顧客体験を提供し続け、常に“スターバックスらしさ”について自問自答しながら顧客との関係性を高め、引いてはブランドをより強固にしていくことが、スターバックスの強さの秘訣といえます。
スターバックス株は買いか?
業績
スターバックスの業績は2008年にハワード・シュルツがCEOに復帰して改革を進めたことにより、翌2009年に奇跡の回復を遂げました。
その後もおおむね順調に推移し、とりわけ、2015年9月通期決算は、売上高が前期比297%増の191.63億ドル、純利益も133%増と飛躍的な伸びを見せました。
1株当たり利益も1.84ドルに達し、スターバックスの成長は2017年まで続きます。
しかし、2018年第2四半期(1~3月)決算では営業利益が大幅に減って業績の低迷が明らかになりしまた。
そのため、史上最大規模の閉店計画を発表します。
その計画の骨子は、2019年に密度の高い大都市を中心に150店舗を閉店するというものです。
2018年第3四半期(4~6月)決算でも米国市場での停滞により業績の低下が続き、世界純収入は前年同期比11%減の63億ドル、営業利益は1%減の10億ドル、利益率は1.9ポイント低下して16.5%、店舗売上高はわずか1%増という惨憺たる結果に終わりました。
しかし、新CEOのケビン・ジョンソンのもと、スターバックスは大規模な閉店とリストラ、そしてイノベーションに取り組み、翌2019年に業績を挽回しました。
2019年第2四半期(1~3月)決算は純利益が6.632億ドルと、前年同期の6.601億ドルから増加し、1株利益は0.60ドルと市場予想の0.56ドルを上回りました。
また、中国/アジア太平洋地域の既存店売上高は市場予想の1.5%増を上回る2%増で着地。
米国での新商品投入や2大市場である米中市場で配達サービスを拡充させたことが業績を押し上げました。
一方、純売上高は4.5%増の63.1億ドルと、市場予想の63.2億ドルをわずかに下回りましたが、通期の1株利益見通しを従来の2.68~2.73ドルから2.75ドル~2.79に引き上げ、市場予想平均の2.71ドルより強気の数値を打ち出しました。
7月26日に発表した第3四半期(4~6月)決算も、1株利益が予想0.73ドルに対して0.78ドル、売上高が68.2億ドルと予想の66.7億ドルを上回る好決算で、売上高成長率が前年同期比8.1%増と全体の既存店売上高が3年ぶりの高い伸びを示しました。
なお、今四半期も通期の1株利益見通しを2.80~2.82ドルと、さらに引き上げたことが注目を集めました。
株価
スターバックスはNASDAQに上場しており、米国を代表する株価指数「S&P500」に採用されています。
<スターバックスの過去5年間の株価推移>
この10年間の株価は、2008年のリーマンショックを除いて、おおむね業績に連動して推移しています。
年足でみてみると、2009年は前年のリーマンショックからの立ち直りで始値の4.7ドルから終値の11.5ドルに、率にして145%の上昇となりました。
その後、2015年までは堅調推移しましたが、2016年にマイナス6%と下降。翌年以降はじり高となって推移しましたが、2019年に入ると四半期決算の好結果を追い風に急上昇しました。
2019年7月26日には、2019年第3四半期決算で全体の既存店売上高が3年ぶりの高い伸びとなったことが好感されて、スターバックスは1日で8.9%上昇し、過去最高値を付けました。
配当
スターバックス株の配当は2018年8月以降、四半期ごとに0.36ドルとなっています。
年間の配当利回りは1.52 %で、20年間(1998年~2017年)のS&P500の平均配当利回り1.84%に比べてやや低くなっています。
年間の配当利回り | 配当1.44ドル÷株価94.70ドル=1.52 % (2019年8月23日時点) |
この原因は2019年7月に株価が急騰したためで、急騰以前は2%台でした。
米国債10年物の利回りが2019年8月23日時点で1..5%台で、当面は米国の利下げが進むとみられるので、株価上昇も期待できるスターバックス株を購入するのもありだと思います。
スターバックス株の買い方
スターバックス株のティッカーシンボル(日本の銘柄コードに相当)は【SBUX】です。
1株から購入できるので、2019年8月23日の終値94.70ドルで計算すると、1株なら10万円をわずかに上回る金額で買え、晴れて株主になることができます。
★★スターバックスの株が購入できるおすすめネット証券
証券会社 | 取引銘柄数(2019年7月時点) | 手数料 |
マネックス証券 | 取扱銘柄数は3,547銘柄※最多※ | 約定代金の0.45% |
SBI証券 | 取扱銘柄数は2,153銘柄 | 約定代金の0.45% |
楽天証券 | 取扱銘柄数は2,124銘柄 | 約定代金の0.45% |
まとめ
自宅を人と人とが触れあう第一の場、職場を第二の場とするならば、スターバックスなどのカフェは公共性と個人性を併せ持つ第三の場といえます。
ほかの誰かとつながり、自分自身を再発見する場をスターバックスは提供してきたと言う自負があるといいます。
つまり、スターバックスのコーヒーは価格の点では贅沢品と捉えられますが、スターバックスが人とのつながりを体験する場を提供しているという点では必需品ともいえます。
こうした店内にコミュニティを創り出す試みが推進力となって、スターバックスはハワード・シュルツのもと、他に類を見ない世界最大のコーヒー小売り業にまで上り詰めました。
投資家として、まだ成長余地のあるスターバックスへの投資を考えてもいいでしょう。
あるいは、スターバックスを参考に、ファンが集まるハワード・シュルツのような経営者が率いる企業を見つけ、そういった企業に投資するのも投資の醍醐味といえるでしょう。
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