■■■ 目次 ■■■
はじめに
東証1部に上場を果たしているSonyですが、グループ会社の事業内容まで含めると実に多岐にわたる事業を展開しています。一時は経営不振により厳しい措置を講じてきた同社は、売上高こそ前年度には及ばないものの2017年度3月期での営業利益は2015年度と比較すると、およそ3倍以上の金額にまで到達しています。AV・家電業界トップの時価総額を誇るSonyですが、近年になりいくつかの要因が絡んだことで今後の株価の動向が注目されています。2018年度以降の新社長による改革にも注目が高まっているSonyですが、今後の株価はどのように推移していくのでしょうか。
そこで今回の記事では、Sonyの株価の動向についての予想を中心として解説します。現在では日本よりも欧州でのブランド力を発揮しているSonyですが、一度は業績が落ち込んだ同社はどのようにして復活を果たしたのか、それぞれの要因を理解することで株価の予想が立てやすくなります。
1章:Sonyの概要とは
この章ではSonyの株価予想を立てるための準備段階として、これまでの歴史や株価の動向について解説していきます。Sony自体はその歴史も長く企業としての業績も確固たるものを築いてきましたが、企業としての価値をある程度理解した上で投資しなければ意味はありません。今後の動向次第で株を保有し続けるかどうかを検討しなければならないため、Sonyの株の保有も念頭に置きつつ同社の知識を改めて覚えておく必要があります。
1ー1 Sonyの歴史
そもそもSonyは1946年5月に「東京通信工業」として設立されました。日本初のテープレコーダーを開発した同社はその数年後にトランジスタラジオを開発しています。1957年にトランジスタラジオで成功を収めたことにより、その1年後には「ソニー株式会社」へと商号変更しています。その同年には東証1部に上場を果たしたとされています。
トランジスタラジオで培った技術を駆使して、Sonyはビデオテープレコーダーやトランジスタ電卓などを開発しました。その後1970年代にはビデオカセットの規格を激しく争った「ビデオ戦争」と呼ばれる対立構造がありましたが、結果的にはそれぞれのVHS機を販売するという形で終結したとあります。そうした流れがあった一方でカラーカメラとビデオカセットレコーダーとを組み合わせた製品が開発されており、1985年には8ミリビデオとして販売されるに至りました。
またこれとは別にオーディオ機器では1960年代以降からコンパクトカセット規格での製品を一様に展開していましたが、1979年には若者向けの携帯できるカセットテープレコーダーとして新たに「WALKMAN」を発売しました。日本国立博物館に重要科学技術史資料として登録された同製品は、当時の音楽業界を飛躍的に発展させたとされています。音楽業界に新たな旋風を巻き起こしたSonyはこれ以降もオーディオ機器の発展に貢献し、CDやMDといった規格を開発していきます。
1970年代末から同社はコンピュータ関連機器の開発にも取り組んでいましたが、1996年に「VAIO」ブランドを新規で立ち上げるまではそれほど目立った実績は残せていませんでした。ただ2002年には9社共同にてBlu-ray Discの規格を新たに作り上げ、それ以外でもSonyはさまざまな事業に並列にて着手していきます。
その中でも家庭用ゲーム機器事業に携わっていた「ソニー・コンピュータエンタテインメント」は、2012年以降債務超過に悩まされていましたが、2017年度3月期決算の時点では債務解消を達成しています。
しかしその一方でテレビ事業が10年連続で赤字を出していたことから2014年7月には分社化し、またパーソナルコンピュータのVAIO事業やソニー・オンライン・エンタテインメントを売却しています。利益を出せない事業については厳しい判断を下していき、過酷な期間を何とか乗り切ったSonyは2017年11月になり大きな転機を迎えます。
1ー2 Sonyの株価の動向
それまでは4,300円辺りで停滞していた株価が、アイボの復活を果たして以降は一気に5,200円前後まで上昇しました。それ以降は良いニュースが続いたということもあり、2018年度3月期までの株価は5,000円代を推移しています。経営不振の時代を切り抜けた末に、好ニュースが続いたことで市場としての注目度が高まったことが如実に分かります。Sony内部での動きが水面下に出たことで同社本来のブランド力が復活できるのかどうかに注目が集まった訳ですが、Sonyの株価を上昇の一途へと押し上げた要因については次章にて詳しく解説します。
2章:Sonyの株価を左右した要因
この章ではSonyの株価を左右した要因について解説していきます。厳しい時代を乗り切ったからこそ余計にSonyの株に対して注目度が高まっている訳ですが、具体的にはどのようなニュースが飛び出したことにより注目を集める結果になったのでしょうか。
2ー1 アイボの復活
2017年11月1日にアイボの復活が発表されたことにより、Sonyに対する注目が一気に集まったことは未だ記憶に新しいニュースとして覚えられているはずです。2016年度の時点でロボット事業への参入を表明していたこともあり、その第一弾の動きとして家庭用ロボットであるアイボへの原点回帰とも言うべき製品発表会が行われました。
本体価格は税抜き198,000円、アイボを成長させるための基本プランへの加入が3年間で90,000円と決して安い買い物ではありません。しかしそれでもアイボの長年のファンは根強く、大人が購入するおもちゃとして人気を博しました。
その魅力は何と言ってもアイボ自身が成長するという点に尽きるのですが、これはインターネットを介してクラウドサービスと常時連携することでその情報を基にしてそれぞれの環境下において、アイボが個々の性格を形成していくことにつながります。
20人までの顔は判別できるのもディープラーニングの技術を応用したためであり、それにより本来の犬のように見知った顔の人間には能動的に歩み寄ってくれるようになっています。またアイボの瞳部分には最新鋭の有機ELが導入されているため、表情豊かな愛くるしさが如実に表現されているのも好印象です。
Sonyがロボット事業への参入を果たしたのはひとえに、世間でのAI技術への関心の高まりが背景にあります。近年ではいくつかの有名企業がAI技術を導入したスピーカーを販売しており、その醍醐味はAIが言葉かけにより指示を的確に判断して正しくその指示内容を遂行できるところにあると考えられます。
アイボに関して言えばこうしたAI技術を応用することで、ゆくゆくは高齢者介護を始めとしたさまざまな場面での活用が期待されています。アイボが初めて発売された当初は家庭用ロボットの真新しさから爆発的な人気を誇った訳ですが、今回は同社の業績回復がきっかけとなりロボット事業への参入を果たす結果となりました。業績回復により資金繰りに余裕ができたことから新事業に乗り出した訳ですが、今後どのような展開を見せるのかでSonyの株価は大きく左右されることでしょう。
2ー2 「プレミアムシフト」の成功
Sonyでは日本国内よりも欧州におけるブランド力を発揮していることは冒頭でも前述しましたが、同社はこの高付加価値商品を中心とした事業モデルのことを「プレミアムシフト」と称しています。そもそもSonyではテレビを中心とした家電製品の売り上げが大きく営業売上に反映されていた訳ですが、一時はその売り上げが大きく落ち込み赤字にまで反転したことがありました。
しかし地道な営業努力も功を奏し、欧州でのプレミアムシフトは順調に成功の一途を辿っています。欧州におけるプレミアムシフトは高単価のテレビだけに限らずカメラにまで波及しており、今後とも高単価のエレクトロニクス製品が売れることでSony全体としてのブランド力が強化されることが予想されています。
2ー3 車載センサー事業での注目度
上記のような事業についての注目度が高まることはもちろん、それ以外にも車載センサー事業での注目度も同様に高まっています。自動車の自動運転が近い将来に予想されている現状だからこそ、Sony製の車載センサーに技術応用されている遠距離オブジェクトの認識能力、周囲の明暗に柔軟に対応できる広いダイナミックレンジが他社製品よりも優位性があると考えられています。ただ各自動車メーカーに対して車載センサーを提供する以外にも応用例が存在しており、その確実な収益化については未だ数年を要するとされています。しかし不明瞭な分野だからこそSonyの動向次第では、今後の展望が期待しやすいとも言えるかもしれません。
2ー4 社長の交代
Sonyが厳しい数年間を切り抜け好業績を出し始めた矢先の2018年2月に、同社社長はこれまで社長の懐刀として勤続した副社長へと交代する運びとなりました。CFOという最高財務責任者として4年間Sonyの経営状況を立て直してきた現吉田社長は、何を支柱として好業績をさらに伸ばしていくかが今後問われることになります。ただテクノロジーで成功を収めている以上は自社内での技術の発展が必ずしも業績へと還元されていく訳ではないので、Sonyのブランド力が本当に再生できるかどうかを測る上でも、今年の春に発表されるであろう事業展開の詳細が株価の推移についても鍵を握っています。
まとめ
前社長の導きにより数年間に及んだ深刻な業績不振は解消された訳ですが、新社長が就任したことにより少なからずSony全体としての方針が変更されることは予想されます。ただその詳細が今年の春に発表されることもあり、現時点では市場としての注目度の高まりから株価が上昇したまま推移しているともとらえることができます。
吉田社長が財務出身であるために堅実な路線で固めてくることはまず間違いありませんが、注目度が高い反面Sonyの業績が多少なりと傾けば投資者たちも一気に離れて株価が急落しないとも限りません。新たな展開が期待される同社だからこそ今後のニュースを逐一確認しつつ、持株をどう扱うかが重要となります。
この記事へのコメントはありません。