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はじめに
2017年現在、つい先日、日経平均が2万1000円台に乗りました。21年ぶりの出来事です。投資家にとって良いニュースのはずが、疑心暗鬼な方も少なからずいます。手放しで喜べない理由は、やはり頭の片隅に『地政学リスク』が残っているからでしょうか。
2017年に入ってから金正恩(キム・ジョンウン)という名前を何度も耳にしたかと思います。言わずと知れた『北朝鮮』の朝鮮労働党委員長です。金正恩(キム・ジョンウン)がテレビ画面に映るたび、何人もの投資家が苦虫をかみつぶしました。現在、『北朝鮮』の動向が日本の株価の下落要因として時限爆弾のように存在しています。いつ爆発するかは誰にもわかりません。いま現在、投資家にできることは情報収集とリスク分散です。あらゆる可能性を織り込みながら、将来に向けた資産運用をしていかなければなりません。
そこで今回は今後の『北朝鮮』の動向が及ぼす日本の株価への影響をみていきたいと思います。
北朝鮮の動向
昨今、どんなに企業業績がよくても、冷や水を浴びせられたように株価が下落する瞬間があります。もちろん株価の下落要因はひとつではありませんが、もはや『地政学リスク』抜きに説明はできません。今年は特に『地政学リスク』が株価の判断材料として注目されています。投資家でなくともインターネットで調べれば簡単に『北朝鮮』の情報が得られます。個人投資家としては対策が練りやすくなりました。反面、『北朝鮮』関連のニュースが流れると、たちまち相場は荒れてしまいます。例年よりも株の売買に対して迅速な判断が求められます。たとえば『北朝鮮』の動向が攻撃的になれば、日本の防衛関連銘柄が急騰します。一方で『北朝鮮』の報道が少なくなると、他の銘柄にリスクオンする動きがでてきます。ほかにも『北朝鮮』の記念日などカレンダーを先読みした投資行動も象徴のひとつであるといえます。
昨年以前の北朝鮮の動向
そもそも『北朝鮮』は毎年お騒がせな国なのでしょうか? 去年ミサイルを発射したかどうか、はっきりと記憶に残っている投資家のほうが少ないと思います。『北朝鮮』が発射した物体については議論がわかれます。したがって今回は、日本上空を飛び越えた回数に絞ってまとめてみました。過去にさかのぼると合計で5回確認されています。
(1)1998年8月。発射の事前通告はありませんでした。
(2)2009年4月。発射の事前通告はありました。
(3)2012年12月。発射の事前通告はありました。
(4)2016年2月。発射の事前通告はありました。
(5)今年2017年8月。発射の事前通告はありませんでした。
上記を比較してみると、事前通告の有無に変化が見受けられます。あまり騒がれなかった理由としては、初回を除き昨年までは身構える猶予があった点が挙げられると考えられます。
2017年の北朝鮮の動向
今年2017年8月29日の早朝でした。真っ先に思い浮かぶのは『Jアラート』ではないしょうか。突然、携帯電話が鳴って目覚めた人も多かったと思います。発射するかもという予測はニュースや新聞で見かけましたが、どれも確証はありませんでした。8月29日の発射は事前通告がなかったため、日本国民にはインパクトある出来事として記憶に刻まれました。また『北朝鮮』の挑発行為も一つにとどまりません。弾道ミサイルをはじめ、核実験や水爆実験と行動はエスカレートするばかりです。
北朝鮮が日本の株に及ぼす影響
日経平均株価が上昇している期間は『地政学リスク』が減退しているといえます。ちなみに去年(2016年)の日経平均の最高値は12月21日の19,592円でした。今年(2017年)の日経平均は2万1300円を超えています(10月19日現在)。2016年より『地政学リスク』は高まっているはずなのに、日経平均株価は上がっています。もしかすると日本の株価と『北朝鮮』は無関係ということでしょうか? もう少し掘り下げてみましょう。
過去の事例
四回目のミサイル発射は2016年2月7日(日)午前9時半ごろでした。当時の日本の株価はどう反応したのでしょうか?この日は市場が休みの日曜日でした。しかも『Jアラート』の警告は一部の地域に限られました。ミサイル発射前日の2月5日(金)の終値は16,819.59円でした。発射後の土日を挟んだ2月8日(月)の株式市場はどう反応したのでしょうか?
日経平均は始値16,620.91円で終値が17,004.30円でした。日経平均の数字だけで判断すれば、『北朝鮮』の影響は軽微なものでした。始値こそ下落が見受けられましたが、終値は前日と比較して約184円も上昇しています。
今年の事例
五回目のミサイル発射は今年2017年8月29日(火)午前5時58分ごろでした。この日は火曜日で日本の株式市場の開ける前でした。前日8月28日(月)の日経平均の終値は19,449.90円です。発射後の8月29日(火)の始値は19,319.11円で終値が19,362.55円です。日経平均株価は前日と比較して約87円も下落しました。もちろん曜日や市場の有無などの条件が違うので一概には言えません。ただ、去年と今年(2017年)の投資家の反応は極端に違います。二ヶ月近く経った今でも、株式関連のニュースで『地政学リスク』という言葉は消えていません。
『北朝鮮』に対する報道が連日なされていたこともあり、投資家の銘柄選びにも影響が出ています。個別の株でみると、防衛関連銘柄に注目が集まっています。よく名前のあがる銘柄を簡単に紹介したいと思います。
(1) 石川製作所
→段ボール製函印刷機のほか機雷の製造も手掛けています。2017年の年初来安値が1株あたり658円(1月14日)でした。一方の年初来高値が4,435円(10月6日)です。2017年だけで約6.7倍と驚くべき株価の推移です。
(2) 豊和工業
→産業用機械や工作機器を製造しています。国内唯一の小銃メーカーでもあり、防衛省に納入実績があるのが強みです。
(3) 細谷火工
→発煙・照明・信号筒などを扱う火工品メーカーです。防衛省や自衛隊関連の火工品も取り扱っています。
(4) 重松製作所
→防塵や防毒マスクの取り扱いで高シェアを占めている企業です。ほかにも防護服などの取り扱いがあり、テロ関連や災害対策として注目される企業です。
(5) 双信電機
→NDS(防衛省規格)電磁シールド室調査委員会に名を連ねる企業です。主力製品としてノイズ除去フィルターがあります。『北朝鮮』の電磁パルス(EMP)攻撃への防衛として注目が集まっている企業です。
上記にあげた五社はごく一部の防衛関連の銘柄です。いずれの株価も過去三年と比較すると、2017年に最高値をつけています。先々の業績を見越した動きにくわえて、短期的な動きも強くなっています。『北朝鮮』の話題次第で株価は乱高下します。したがって株を購入する場合にはご自身の判断で見極めましょう。
その他国外が及ぼす日本の株価への影響
もちろん『北朝鮮』以外にも、日本の株価に影響を与えてきた出来事はあります。『リーマンショック』をはじめ、近年では2015年の『チャイナショック』もありました。上海取引所A株の時価総額は約3分の1程度まで下落しました。世界経済に影響をあたえたのは記憶に新しいところです。
今後も他国の動向から目は離せませんが、一国の大統領の行動や発言もまた株価に大きな影響を及ぼしています。アメリカのトランプ大統領です。
最近の国連で「米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、『北朝鮮』を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」という趣旨の発言をしました。トランプ大統領の発言に、『北朝鮮』は金正恩(キム・ジョンウン)の声明として対抗する旨を発表しました。『北朝鮮』の最高指導者として声明を出すことは今回が初めてとのことです。またトランプ大統領は、経済制裁を強める行動の一環として、『北朝鮮』と取引する企業や銀行に罰則を科す大統領令にサインをしました。はじめは口げんかにみえたものの、両国の緊迫感は確実に増しています。
一方でトランプ政権発足後、アメリカの株価は堅調に推移しています。日経平均株価も乱高下はありましたが、同様に右肩上がりを維持しています。
アメリカの個別銘柄をみると、ボーイングなど軍需関連(≒防衛関連)の企業が大幅高になっています。つまり、日本株と同様に『北朝鮮』の動きを踏まえた投資がおこなわれているのです。
まとめ
今回、『北朝鮮』と株価の関係性について取り上げましたがいかがだったでしょうか。投資家にとっては株価の動きを予測するだけでも困難であるのに、今年は『『北朝鮮』』の『地政学リスク』という厄介な存在も浮上してきました。現時点での解決策は誰も見い出せていません。この記事を読んでいる間にも『北朝鮮』があらたな行動を起こしている可能性もあります。このことから、もはや日本の株価と『北朝鮮』を切り離して考えるのは非常に難しい状況です。かといって、株式投資に魅力がないわけではありません。日経平均株価は年初来高値を更新していますし、銘柄によっては北朝鮮の影響で株価は高値を更新している企業も少なからず存在しております。しっかりとリスクを見極めながら、資産運用をしていきましょう。
(執筆日:2017年10月19日)
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