株を始めようと思っている初心者の方は、株で儲けている人のイメージとして少なからずパソコンの前でチャートを見て分析をしているイメージをもっているだろう。株で儲けている人はテクニカル分析という分析をしているのだ。この記事を見れば株式投資初心者でもテクニカル分析がわかるように入門マニュアルを作成してみた。
■■■ 目次 ■■■
テクニカル分析とは
株を分析する方法は大きく分けて2種類あるのはご存じだろうか。
1つはファンダメンタル分析と呼ばれ、企業の業績に基づいて分析する手法である。決算がいい企業の株価は上がる、というのも平たく言えばファンダメンタル分析である。また、PERやROEと呼ばれる指標を活用して株を分析していくのである。もう一つが、今回のテーマであるテクニカル分析である。株価がチャートで表されているのを見たことがある方もいると思うが、このチャート、すなわち今の市場の動向をもとに今後の株価を分析し予想するのがテクニカル分析だ。ファンダメンタル分析とテクニカル分析はいわば両輪であり、どちらが優れているかというものではなく、どちらも活用して株を分析する必要がある。今回はその中でテクニカル分析に焦点を当てていこうと思う。
テクニカル分析でわかる2つのこと
テクニカル分析でわかることは大きく2つある。
1点目は株価のトレンドである。
上場している企業の株価は毎日の新聞で公開されている。ネットで日々の動向を確認している投資家も多いが、高齢層ではまだまだ新聞で株価を追っている投資家も多い。新聞では、昨日より高いか安いかやどんな業種がその日に上がったかなどは見やすい。一方で、2日前からどう変動したかや、1週間の値動き、中長期的な変動に関してはわかりにくい。テクニカル分析を用いれば、株価が短期的あるいは中長期的に上昇トレンドにあるか、あるいは下降トレンドにあるかを知ることができる。「昨日より下がったから買い」と判断しても、下降トレンドであればさらに下がる可能性が高く、上昇トレンドであればうまく押し目を買えたということになる。その一瞬だけを見て判断するのではなく、一定期間のデータをもとに判断することで、トレンドを把握し最適な投資判断が可能となる。(トレンドに関しては次項で取り上げる)
2点目は売り時や買い時を判断できるということだ。
株価は、上がれば利益を得るために売る投資家が現れるため、永遠に毎日上がり続けることはあり得ない。必ず上昇と下落を繰り返すのである。つまり、株で儲けるためには下落した安いタイミングで買い、上昇した高い点で売る必要がある。日々の株価の数字だけを追っていては、いつが買い時で、いつが売り時なのかを判断することは困難だろう。テクニカル分析を用いることで、相場の動きを分析し、予測することが可能となる。もちろん100%当たるものではないが、“ヤマ勘”で売買するよりは根拠のある判断ができるようになるのである。
株初心者こそ、テクニカル分析が必要な理由とは
テクニカル分析は、上記でも述べたように勘で売買するのではなく、根拠のある判断を可能にさせる。
長年の売買している熟練投資家の中には、スポーツ選手のごとく体が覚えているかのように売買する方もいるが、これから始めていこうという方にはぜひともテクニカル分析習熟していただきたい。株価は長期的には業績に一致していくが、短期的には業績に関係なく変動してく。テクニカル分析では、業績とは関係なく安いタイミングで買い、高いところで売るための分析となる。業績のいい銘柄は問題ないと思う方も多いが、業績が銘柄を高いところで買ってしまうと、利益どころか短期的に損が出てしまうこともある。新聞に「最高益」が出た日に株価が下がることもよくある話である。そのような株価の動きの特性を知るためにも、株初心者こそテクニカル分析を活用してもらいたい。
トレンドを読み、大きな流れをつかむ
上記でも少し触れたが、テクニカル分析によってトレンドをつかむことができる。トレンドとは、株式市場全体、あるいは個別の銘柄の方向性や傾向を表すものである。大きく分けると「上昇トレンド」「下降トレンド」「横ばい」の3つに分類される。少し乱暴な言い方かもしれないが、上昇トレンドであれば、どのタイミングで買っても儲かる。反対に下落トレンドでは、下げたタイミングで買ったと思ったとしてもさらに下がってしまう。横ばいでは、例えば1000円から1200円の間を行ったり来たりし、なかなか売り買いのタイミングがつかみにくい。また上昇トレンドといっても永遠に上がるはずはなく、いつかは下落するため、その判断も必要となろう。具体的にどのように判断するかは次項に譲るが、テクニカル分析では、現在のトレンドの把握とその変化をつかみ、株価の大まかな流れを読むことができるようになる。
テクニカル分析の種類は大きく二つだけ
テクニカル分析は大きくトレンド系とオシレーター系に二分される。
トレンド系とは、チャートをもとにした分析方法で、株価の平均値や標準偏差などから適切な株価水準を分析する手法である。簡単に言えば、一定期間の株価をもとに、今のこのくらいが論理的に適切な株価だろう、と予測する。テクニカル分析の中では最も一般的な手法で、入門にはベストな手法だといえる。もう一方はオシレーター系と呼ばれる。オシレーター系では、現在の株価が買われすぎであるのか、あるいは売られすぎであるのかを分析することができる。オシレーター系とは振れ幅のことで、株式相場では「値動きの幅」を意味する。この幅をもとに株価の行き過ぎを判断することに優れた分析方法である。このオシレーター系は、比較的相場が安定した状態で効果を発揮するため、相場が上昇し続けていたり、下落し続けたりする局面では役に立たない可能性もある。では、実際に各系統の分析方法について具体的に見ていこうと思う。
トレンド系
まずはトレンド系から押さえていこう。
トレンド系はその名の通り、株価のトレンド(方向性・傾向)を分析する方法である。簡単に言えば、これから上がるから買い、これから下がるから売り、という判断の根拠となるため、基礎的なテクニカル分析の手法といえる。ここではトレンド系の中でも最も基本的な移動平均線とボリンジャーバンドについて解説していこう。
移動平均線
移動平均線はトレンド系のテクニカル分析の中でも最も一般的な分析手法の一つである。
移動平均線は一定期間の株価の平均値を線で結んだものだ。日足の場合、5日、25日あるいは75日の平均値を用いる場合が多く、日経新聞などのデータは25日移動平均線が使われている。
わかりやすく具体的な数字を用いて考えてみよう。
※図を挿入
ここでは3日の移動平均線を作っていきたい。3日の移動平均線の場合、まず対象となるのは1日~3日の平均である。この3日間の平均は(100+105+110)÷3=105である。4日目の株価が115円の場合、次の平均値は(105+110+115)÷3=110となる。このようにして算出した平均を線で結べば、移動平均線が完成する。ここでは3日間の平均値で計算したが、25日であれば25日間の株価を基に算出されることになる。
では、こうして作られた移動平均線はどのように使われているのだろうか。移動平均線はトレンド系の分析手法であるため、トレンドを示す役割を持つ。この例では、平均線は右肩上がりの曲線を描くため、上昇トレンドということになる。また反対に、移動平均線が右肩下がりの時は下落トレンドとなる。つまり、移動平均線を見れば、今までのトレンドの変化が一目でわかるのである。
また、移動平均線にはトレンドを示す以外にも、株価の支持線あるいは抵抗線としても利用される。例えば、株価が上昇トレンドの場合、移動平均線は右肩上がりになっているのはもうお分かりいただけただろうか。上昇トレンドが続くとどんどん株価が上がるため移動平均線よりも上の株価が推移する。このようなときに株価が移動平均線付近まで下落した場合、移動平均線が底値となり反発することが多い。つまり、移動平均線が株価の底となり、支持線の役割を持つ。反対に、下落トレンドの場合、移動平均線よりも下で推移することが多い。右肩下がりの時に上昇し移動平均線付近までくると、そこが頂上となり再び下落に転じることが多い。移動平均線が上昇の妨げになるというわけだ
ここまでをまとめると、移動平均線は上昇あるいは下落のトレンドを表し、株価の支持線もしくは抵抗線となりうる、ということである。
さらに移動平均線を語るうえで重要なことがある。「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」である。それぞれ上昇のサインと下落のサインであり、聞いたことある方も多いのではだろうか。ゴールデンクロスは、短期の移動曲線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けたときを表し、大きく上昇するサインとなる。デッドクロスはその反対で、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下に抜けるときを示す。
最もシンプルでかつ汎用度が高いのが移動平均線であるため、ここだけでも押さえていただきたい。
ボリンジャーバンド
次に紹介するのは、ボリンジャーバンドと呼ばれるものだ。ボリンジャーバンドも代表的なトレンド系の指標である。移動平均線の発展版という感じである。ボリンジャーバンドは移動平均線を中心に上下の値幅を表す線を2本もしくは3本引き、合計5本ないし7本のチャートとなる。この線がどうやって決まるかは「標準偏差」を用いるため、やや難解に思われるかもしれない。ここではボリンジャーバンドが「何であるか」よりも「どういう意味か」に注目したい。
ボリンジャーバンドでは、株価は移動平均線を中心とした上下2本の間に95.4%の確率で収まる。つまり、この間を抜けた場合、反転の兆しととらえることができる。
オシレーター系
トレンド系と対になるのが、オシレーター系と呼ばれるテクニカル指標である。オシレーターとは、先の呼べたように「振れ幅」を意味する。要するに、値動きの幅を示し株価の上がりすぎや下がりすぎ(過熱感)を測ることができる。ここからは、その過熱感を測る二つの方法を紹介したい。
MACD
まず1つ目がMACDである。「マックディー」と読む。MACDは移動平均を発展させたものでトレンド系に分類されることも多く、トレンド系とオシレーター系の両方の特性を持っているといえる。過熱感を測るオシレーター系ではあるが、トレンドを測るのに長けている。
MACDの値は、上昇トレンドであれば上昇し、下降トレンドであれば下落する。この指標はMACDとその移動平均線(通常は9日間)の二本のラインからトレンドを分析することができる。この移動平均線を「MACDシグナル」と呼ぶ。つまり、MACDとMACDシグナルの動きを追っていくことになる。指標の算出方法はここでは割愛し、どのように使用するかにフォーカスしたい。
まずは買いのサインであるが、MACDが、マイナス圏でMACDシグナルとゴールデンクロスをしたときである。つまり、MACDが0より低いところでMACDシグナルを下から上に突き抜けた時である。
反対に売りのサインとなるのが、MACDがプラス圏でMACDシグナルとデッドクロスした時である。つまり、MACDが0よりも上の位置でMACDシグナルを上から下に突き抜けた時である。
また、もっと単純に、MACDが0を超えたら買い、0を下回ったら売りという方法もある。複雑に見えるかもしれないが、使ってみると分かりやすく、使いやすい指標であるため投資家の中でも根強い人気のある指標の一つとなっている。
ただ、株価が一定の範囲内で行ったり来たりする「ボックス相場」のときには、参考になりにくくなる傾向にあります。それを補完するのによく用いられるのが次項で説明する「ストキャスティクス」である。では、次はその「ストキャスティクス」について見ていこう。
ストキャスティクス
「ストキャスティクス」はオシレーター系の司法の中で最もシンプルに過熱感を測ることができるものである。「%K」「%D」「%SD」の三つの指標から構成される。「%K」が基本の指標となるが、ここでもそれぞれの指標が何を表すかよりも、どのように使用するかに注目したい。%Kは0~100の範囲を動き、株価が高値に近ければ100に近くなり、安値近辺で推移していれば0に近くなる。ストキャスティクスは3つの指標を組み合わせて使用するものだが、まずは%Kだけを使う方法を見ていこう。これはかなり単純で、0に近ければ上昇への転換シグナル、100に近ければ下落への転換シグナルととらえることができる。様々な見方があるが、80%以上であれば過熱感が高く、下落する可能性が高まる。反対に20%を下回れば、上昇へ転じると考えられる。
次に紹介するのは、%Kと%Dを組み合わせた、「FASTストキャスティクス」である。%Dは%Kよりも遅れて動くという特性がある。上昇トレンド時は%Kが%Dの上を推移するが、上昇トレンドが一服すると%Kが%Dをデッドクロスすることがある。もうお分かりかもしれないが、デッドクロスは売りのサインである。反対に低水準で「%Kが%Dを下から上に抜けるゴールデンクロス」が出ると買いのサインとなる。
最後に紹介したいのは「Slowストキャスティクス」である。これは%Dと%SDを組み合わせたものであるが、使い方はFastストキャスティクスと同じで、ゴールデンクロスとデッドクロスを見極めることが必要となる。高い水神の時に%Dが%SDを上から下へデッドクロスすると売りのサイン、低水準で%Dが%SDを上抜けるゴールデンクロスを見せると買いのサインとなる。
株初心者がテクニカル分析を身に着ける方法
ここで紹介したテクニカル分析は覚えてしまえば簡単に使いこなせる簡単な部類のものであるが、初めての方にはなかなか一筋縄ではいかないだろう。身に着けるためには、「実際にやってみる」ことが大切である。百聞は一見に如かず、いうように自分の目で見ることで得られることがたくさんある。とはいっても実際に株を取引するとなると、損してしまう可能性もあり、一歩踏み出すことに及び腰になることも当然だろう。不安を払しょくするためには、知識を増やすことと経験値を増やすことが必要である。ここからは、リスクを負わずに知識を増やし、経験値を積む方法を紹介する。
本を読む
知識を増やしていくために一番の方法は、本を読むことである。今の時代、ネット上の情報ももちろん有益ではあるが、ここでは文責のはっきりしている書籍を取り上げる。
① 「さらに確実に儲けるための売り時買い時が学べる!株式投資の学校[チャート分析編]」
まず一冊目であるが、フィナンシャルアカデミーが出しているテクニカル分析の本である。国際テクニカルアナリスト連盟認定のアナリストが効果を実感している株価チャートだけを厳選して紹介されている。フィナンシャルアカデミーはお金に関するセミナーや株式・不動産投資、各種経営のセミナーを実施している機関であるため、信用できるといえる。本書の中では過去のチャートからその後の値動きを予測する問題なども掲載されている。ここで説明したこともより深く、より広く学ぶことができる一冊である。別冊で「ファンダメンタル編」もあり、二冊で分析手法の基本的な部分は網羅できると思う。
② 「テクニカル指標の読み方・使い方(儲かる!株の教科書)」
二冊目は、テクニカル分析に関して全く知らない!という読者諸君向けの一冊である。ここで触れたMACDやストキャスティクスなどももちろん書かれており、基本的は分析手法を網羅できる内容となっている。1冊目の紹介した本よりも初心者向けの一冊で基礎からきちんと学びたいと思っている方に向いている。
無料アプリを試す
経験値を積むためには、実際の取引に勝るものはないが、アプリを使用した仮想取引も有効であろう。実際の株価動向に連動したアプリであれば、リアルな取引をリスクなしで経験することができる。無料で利用できる中では、「トレダビ」や「株マップ」がおすすめである。
① トレダビ
トレダビは、1000万円を元手に自由に売買ができるアプリであり、上場している株であれば何でも買ったり売ったりすることができる。株価の反映には30分の遅れがあるが、シミュレーションするには大した問題ではないだろう。勉強した知識をぶつけてみよう。
② 株マップ
「株マップ」はチャートが見やすいアプリである。チャートは一般的には「ロウソク足」と呼ばれる表記がされるが、アプリでは見にくかったり、そもそも表示されなかったりするものも多い。このアプリであれば、比較的見やすいチャートが確認できる。しかし、両アプリともボリンジャーバンドやストキャスティクスなどを表示はできないため、それに関しては次項に譲ろうと思う。
高性能なテクニカルツールがある証券会社の選び方
ここからは証券会社が提供するテクニカルツールについて紹介する。テクニカルツールは力を入れている証券会社とそうでない証券会社で大きな差があるため、証券会社を選ぶ一つのポイントとなろう。基本的にはパソコン等の大きい画面で見ることを前提としているため、スマホアプリの使用感に関しては省略することにする。
① カブドットコム証券
カブドットコム証券は、テクニカルツールにとどまらず、チャートや国内外の指標などプリ並みのスペックがある。テクニカルだけでも30種類くらいあるため、使いこなすに時間と経験が必要かもしれないが、その価値は十分にあると思われる。入門から熟練者まで使用できる万能なチャートソフトである。
② SBI証券
SBI証券は、日本のネット証券のNO1のユーザー数を誇る証券会社である。分析ツールの数ではカブドットコム証券には敵わないが、口座開設しなくてもある程度のツールは使用できるため「とりあえず」使ってみてもいいだろう。敵わないといっても分析ツールとしては十分な水準であるため、広く使われているSBIも十分活用できる。
まとめ
今回は、テクニカル分析の基本となる部分を紹介した。ここで触れたのはあくまでも氷山の一角に過ぎないが、これだけでも十分にテクニカル分析ができるようになる。もちろん、もっと様々な分析手法を組み合わせれば、複雑な状況に対応できるようになれるかもしれない。だが、まずはここで抑えた方法を活用してみれば、今までとは銘柄の選び方が変わるだろう。本やアプリ、ネット証券等を活用すれば、より深い情報が手に入る。テクニカル分析は決して“簡単に”儲ける方法ではない。株の取引である以上、儲かる可能性もあれば損するリスクもある。そのような中で少しでもリスクを減らし、利益を享受できるようになるための1つのツールである。うまく使えばきっと大きな利益をもたらしてくれるだろう。
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