儲かったら確定申告するの?それとも損が出たら確定申告するの?今年から株をスタートしたけれども、いったい確定申告をすべきなのかどうなのかわからない株の初心者は必見だ。
本記事ではそういった初心者の抱く疑問について解決するための手助けになりうる情報をお伝えしようと思う。
■■■ 目次 ■■■
株の確定申告に必要な事とは?
株初心者にとって絶対と言っていいほど頭を悩ませるイベント、それが「確定申告」である。
・しなければいけない必須のものなの?
・別にしなくてもいいの?
・必須というわけではないけど、したほうがいいの?
・特定口座だとしなくてもいいの?
・特定口座でもしなくてはいけない場合があるの?
色々なパターンがあるせいで調べれば調べるほど混乱して、結局どういう時にどうすべきかわからなくなりがちだ。初心者でなくてもわからなくなる時があるだろう。
本記事では、そんな株の確定申告についての疑問を説明していくことにする。
利益が出たら確定申告は必要?
株取引を行う場合、利益が出ても必ずしも確定申告が必要というわけではない。
年間(受渡日ベースで1月1日~12月31日)を通して、
「特別口座(源泉徴収あり)以外の口座で取引をして、株などの利益が20万円を超える」
場合に確定申告が必要である。
年間を通して売却損が出た(収支がマイナスとなった)場合は、確定申告を「しなければいけないわけではない」が確定申告を「すべきである」と言っても過言ではないだろう。
売却損でも必ず確定申告をすべき理由とは
先ほどの「利益が出たら確定申告は必要?」の説明を見てしまうと
「利益が20万円を超えなければ確定申告しなくていいのでは?」
と思ってしまう人もいるだろう。
確かに、年間を通して売却損が出た(収支がマイナスとなった)場合は確定申告をしなくてもいい。
しかしこの場合、
確定申告をしたほうがお得
なのでしたほうがいい。
何故ならば、株には「損失の繰越控除」というものがあるからだ。
損失の繰越控除とは・・・
年間を通して売却損が出た場合、確定申告をすることで
繰越控除
というものが受けられる。
そうすると翌年利益が出たとしても、この利益から控除することが出来る(利益と損失とで相殺することが出来る)ので払う税金が少なくて済むのだ。
控除しきれない損失は、再び確定申告をすることにより翌年以後3年間にわたって繰り越すことが出来る。
ただし、取引をしている・していないにかかわらず繰越控除を受けたい場合は毎年しっかりと確定申告をしなければならない。
繰越控除は自動で翌年に繰り越してはくれないため、もし一旦申告をやめてしまうと繰越控除が打ち切られてしまうので注意が必要だ。
確定申告をしなくてもいい場合とは?
確定申告をしなくてもいいパターンは主に以下の3種類ある。
①給与所得以外の所得20万円以下
1年間の給与所得が2,000万円以下で、「給与所得以外の所得が20万円以下」の場合だ。
つまり副業が株だけの場合を考えれば、株の利益が年間で20万円以下ならば確定申告をする必要はない。
逆に言えば、利益が20万円を超える場合は確定申告をしなければならない。
②特定口座(源泉徴収あり)
①で説明した「利益が20万円を超える」場合でも、確定申告をしなくていい場合がある。
それは証券会社に登録されている口座が「特定口座(源泉徴収あり)」の場合だ。
この特手口座(源泉徴収あり)で株取引を行う場合、証券会社が代わりに納税してくれるので確定申告をする必要がなくなるのだ。
③NISA口座
このNISAという制度は、2014年から始まった比較的新しい制度である。
2017年3月現在、この口座では最大5年間・毎年投資金額120万円分までの株式投資や投資信託にかかる利益や配当金が非課税となる。
ただし、途中で売却した分の非課税枠は再利用することが出来ないし、その年に使用しなかった非課税枠を翌年に繰り越すことも出来ない。
非課税なので確定申告をする必要はないが、他の口座では出来る「損失の繰越控除」も「損益通算」もこの口座ではすることが出来ない。
また、このNISA口座は同じ年に開設できるのはすべての金融機関において1人1口座となっているなど、他の口座と違ってかなり特殊であるので初心者には少しハードルが高いかもしれない。
確定申告をするの?しないの?確定申告判断
色々と説明をしてきたが確定申告の「必要・不必要」は、証券会社に登録されている口座の状況によって決まると言っていいだろう。
例えば証券会社「GMOクリック証券」で、特定口座(源泉徴収あり)の口座が登録されている場合は、下図のように登録状況が表示される。
口座区分 | 特定(源泉徴収あり/損益通算あり) |
どこの証券会社で口座を開設したとしても、口座の種類は以下の3種類しかないはずなので、自分の口座の登録状況を確認してみよう。
登録されている口座 | 備考 |
---|---|
①特定口座(源泉徴収あり) | 原則として申告の必要なし 詳細は、 「①特定口座(源泉徴収在あり)の場合」を参照。 |
②特定口座(源泉徴収なし) | 売買益があった場合、原則として 申告の必要あり 詳細は、 「②特定口座(源泉徴収なし)の場合」を参照。 |
③一般口座 | 売買益があった場合、原則として 申告の必要あり 詳細は、 「③一般口座の場合」を参照。 |
それでは実際に自分の登録されている口座が確認できたところで、確定申告の必要性がどのようになるかみていこう。
※)補足
上記の3つとは別にNISA口座というものがあるが、「確定申告をしなくてもいい場合とは?」でもふれたように、この口座は1人1つしか開設できない特殊な口座であり、確定申告の必要もなければ、繰越控除も損益通算も出来ないため今回は説明項目から除外する。
①特定口座(源泉徴収在あり)の場合
原則として確定申告の必要はない。何故ならば証券会社が代わりに納税してくれるからだ。
つまり、100万円の利益が出ようが1000万の利益が出ようがこの口座で取引する場合は確定申告をしなくてもいい。
ただこれはあくまで確定申告をする必要がないだけで、してはならないというわけではない。
場合によっては確定申告をした方がいい場合もあるだろう。以下の様な場合だ。
①損失の繰越控除
先ほど「売却損でも必ず確定申告をすべき理由とは」の章でも説明したが、株には「損失の繰越控除」というものがある。
例えば・・・
株取引を始めた1年目、上手く行かずに年間収支がマイナス80万円だったとしよう。
2年目は株取引にも大分慣れて、年間収支がプラス100万円になった場合どうなるであろうか?
「特別口座(源泉徴収あり)の場合は確定申告をしなくていい!!」と何もせずに放っておくと、
2年目は100万の利益に対して税率が掛かり約20万円の税金を払う事になる。
しかし、株取引1年目は年間を通しての収支がマイナスなため、翌年(2016年)の確定申告の時期に1年目分(2015年分)の確定申告をすると
損失の繰越控除
を受けることが出来る。
そして2年目(2017年)の確定申告の時期に再び確定申告をすると、繰越をしたマイナス80万円とプラス100万円とで相殺出来て、20万円に対してしか税率が掛からずに済むのだ。
よって払う税金は「20万円×20.315% =約4万円」で済むため、約16万円の還付を受けることが出来る。
※補足)
特別口座(源泉徴収あり)の場合、利益が出ると自動的に税金が引かれるため、
上記のように確定申告をすることによって還付(つまり返金)を受けることが出来る。
②複数口座の損益通算
複数の証券会社で株取引をしていて、収支がプラスの口座とマイナスの口座がある場合だ。
例えば、
証券会社Aの口座で年間収支がプラス100万円
証券会社Bの口座で年間収支がマイナス80万円
となった場合。
証券会社Aの口座は収支がプラスなので、確定申告をせずに放っておいたら自動的に約20万円の税金が徴収され、特に何事もなくそれで終了となってしまう。
しかし確定申告をすれば、たとえ証券会社が違っていたとしても先ほどと同様に利益と損失を相殺することが出来る。
よって、証券会社Aの口座の払う税金は約4万円で済むため、約16万円の還付を受けることが出来る。
②特定口座(源泉徴収なし)の場合
原則として確定申告が必要である。何故ならば、特定口座(源泉徴収あり)と違って証券会社が代わりに税金を納めてくれないからだ。
ただし、先ほどの「確定申告をしなくてもいい場合とは?」の項目で説明した通り、1年間の給与所得が2,000万円以下で、給与所得以外の所得が20万円以下の場合は
確定申告をしなくてもよい
この口座の場合は、証券会社から1年間の譲渡損益を計算した「年間取引報告書」というものが交付されるので、これを使用して確定申告を行う。
③一般口座の場合
こちらも「②特定口座(源泉徴収なし)」と同様に原則として確定申告が必要である。
確定申告をしなくていい場合も、②と同様だ。
ただしこの口座の場合は、②の場合と違って「年間取引報告書」が交付されない。
よって下図のように、自分自身で証券会社ごとに譲渡益を計算して確定申告を行う必要がある。
確定申告をする際に準備すべきものとは?
確定申告をしようと思っても何もせずに出来るわけではなく事前準備が必要となってくる。
株の確定申告をする場合の流れは、基本的に下図のようになるのでそれぞれについて詳しくみていこう。
①年間取引報告書の用意
株の確定申告の準備をする場合、まず
年間取引報告書
がないと始まらない。
「年間取引報告書」とは1年間(受渡日ベースで1月1日~12月31日)の譲渡所得等を計算した書類である。
特定口座の場合は、源泉徴収あり・なしに関係なく「特別口座年間取引報告書」が証券会社から交付される。
ただし、一般口座の場合は「年間取引報告書」が交付されないので、取引報告書や取引履歴等を使って、証券会社ごとに「株の数量・譲渡による収入金額・取得費・譲渡のための委託手数料等」を計算したものを自分自身で作成しなければならない。
※)補足
年間取引報告書の交付方法は各証券会社の設定によって異なるため、自分の交付方法はどういう設定(郵送や電子交付など)になっているか確認しよう。
②申告書等の作成
「年間取引報告書」の準備が出来たら、確定申告する際の申告書等の作成を行う必要がある。
申告書を作成するといっても、何をどうやって作成すればいいのだろうか??
まず初めに、国税庁のホームページにいくと下図のような
確定申告等作成コーナー
というリンクがあるので、ここから申告書作成コーナーへ行ってみよう。
確定申告作成コーナーには様々な入力例や作成の流れ等が記載されているので、参考にしながら画面に従って申告書等の作成をしよう。
③税務署へ提出
税務署へ申告書等を提出する際、以下の2種類の提出方法がある。
①書面の提出
②e-Taxでの提出
①書面での提出
株初心者にとっては株の確定申告は初めてになるはずなので、この記事を読んでいるほとんどの人はこの手段を取るであろう。
確定申告作成コーナーでの作成が終わると、申告書等の印刷が出来る画面が表示されるので必要な帳票の印刷を行う。
ここで「必要書類等のチェックシート」も印刷できるので印刷して必要書類を確認し、それらを税務署へ提出する。
※)補足
自分で税務署までもっていかなくても、郵送による申告が可能ではある。
ただし、不明点があったり書類不備等があったりする場合もあるので税務署で職員等に相談しながら確認して提出するのが安全だろう。
②e-Taxでの提出
e-Taxというものを利用して申告書のデータを送信して提出することが出来る。
ただしe-Taxを利用するには
・マイナンバーカードの取得
・マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタの準備
・電子証明書の登録
・e-Taxを利用するためのセットアップ
などなど事前準備がいろいろと必要となる。詳細は国税庁のホームページを参考にするといいだろう。
何のために確定申告するの?
ここまで記事を読んできた方ならもうお分かりだとは思うが、確定申告をしなければならない場合を除いて、基本的には以下の場合に確定申告を行う。
・売却損が出た場合に繰越控除を受けるために
・売却損が出た場合に損益通算するために
つまりは節税の為に確定申告を行うといってもいいだろう。
特定口座(源泉徴収あり)で考えてみると分かりやすいと思うが、利益が沢山出ている場合は確定申告を特に行わず、売却損が出ている場合は還付を受ける(払う税金を減らす)のを目的として、控除繰越や損益通算をするために確定申告を行っている。
まとめ
ここまで株の確定申告について駆け足ではあるが説明してきた。
この記事を読む前は確定申告について全然わからなかった人が、読んだ後で少しはスッキリしたとなれば幸いだ。
初めて申告書の作成をするとき、何をどう入力したらいいのかがわからなかったりもするが、国税庁のホームページの入力例等に結構しっかりと記載されているので、参考にしながらわかる所から埋めていけば意外と作れたりするので頑張ってみてほしい。
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