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リセッションとは
最近日経平均株価の高まりやビットコインバブルの影響で投資に興味を持つ人が増えているといわれている。しかし一方で株など投資には暴落のリスクがあり、その一つとされているのがリセッションである。今回はリセッションについて説明しつつ、リセッションが株に与える影響をみていくことにする。
リセッション
リセッション(Recession)とは、景気後退のことを言う。経済活動には景気の拡張期と後退期が数年を周期として交互に繰り返される景気循環があり、景気が低迷し不況にいたる過程もしくは好況に向け改善している過程の状態が景気後退とされている。
リセッション局面では、失業者が増加し、消費や設備投資が落ち込むなど経済活動が停滞する。そして経済活動の停滞から株価の下落が予想される。
リセッションが深刻化したものを恐慌(crisis)と呼ぶことがある。恐慌といえば世界史でも有名な1930年頃の世界恐慌が挙げられるだろう。また、2008年のリーマンショックも恐慌に近いレベルの深刻な不況を引き起こしたと言われている。世界恐慌もリーマンショックもどちらも大きな金融危機を招き、大規模な株価の下落につながっているなど、リセッションが株価に与える影響はとても大きい。ただし、リセッションの定義に関しては一つに定まっておらず、日本と欧米でもリセッションの捉え方は相違があったりする。
リセッションの定義
定義は各国により違いがあり、欧米では一年のうち、ある国の実質国内総生産(GDP)が2四半期以上連続して減少すれば、リセッションと定義される。これは伝統的なマクロ経済学に沿った考え方でもあるのだが、日本ではあまりこの考え方は一般的ではない。
日本の場合はリセッションを、重要な経済活動の衰退が経済全体に広がりそれが数カ月以上続いている状態、と定義することが多く、これは全米経済研究所が定義したものとされている。経済活動が衰退しているかどうかは、景気動向指数のディフュージョン・インデックス (DI) を見て判断するのが一般的である(DIが50%を割るのが景気後退の目安)。ディフュージョン・インデックスとは、内閣府が発表する景気動向指数の一つで景気の予測や現状判断、確認などに利用される。
いずれにせよリセッション局面では経済活動がうまくいってないことが多く、リセッションが起きると株価の減少が発生し、株主投資家にとってはマイナスの影響を与えることが考えられる。
リセッションが起こると何が起きる?
リセッションは経済活動の縮小を意味するため、民間企業の運営が厳しくなり賃金の下落や失業者の増加を招くこととなる。これにより消費者の消費も減ってしまい、消費者に買ってもらうために生産者側も商品の値下げに踏み切る。これにより物価が下落し、デフレと呼ばれる状況に移行してしまうことが多い。こうなってしまうと値下げ競争により民間企業がさらに疲弊し、賃金カットやリストラを進めることもある。そうすると消費もさらに低迷し企業は節約志向の消費者に商品を買ってもらうためにさらに物価を下げる。このように景気後退から始まる物価下落がさらなる景気後退を巻き起こし、景気後退と物価下落が続いていってしまうことをデフレスパイラルという。こうなるとなかなか抜け出せないことも多く、バブル崩壊後のいわゆる「失われた20年」の間もデフレがなかなか改善せず景気が良くない状況が続いた一例である。
ただし「失われた20年」の間が全てリセッションであったわけではなく、あのようなデフレ状態でもリセッションではなかった。そう考えるとリセッションがどれだけ異常事態であるかがわかる。そのため、実際にリセッションが起きると政府が政策等で景気拡大策を取ることが考えられる。実際にあったケースだと、東日本大震災の影響でリセッションが発生した際には、2014年から安倍総理が主体となってアベノミクスを実行、異次元の金融緩和と大規模予算を使った財政政策によって景気拡大に努め、好景気を作り出した。
リセッションが起きたときの株価
1章ではリセッションが起きた時経済全体として不況であることを見てきた。では株主投資家として、どのようにリセッションが発生するか予想しその際にどう動けばいいのかについて、2章では見ていくことにしよう。
リセッションが起きる予兆
まずはリセッションの予兆について知る必要があるだろう。リセッションが起きる予兆の一つは債券の低利回りである。米国債や日本国債は国によって保証されているため、他の資産運用に比べて安全性が高い。そのため、景気が好調な時は株などほかの手段に投資家が流れる一方で不景気にはリスク回避の観点から債券が買われる傾向にある。債券の利回りは買い手が多いほど下がり少ないと上がるため、利回りが低水準で推移している(=債券の買い手が多い)と多くの投資家が不景気と捉えていることになり、近いうちにリセッションが起こることが予想される。
債券の利回りによるリセッションの予兆は長年支持されてきたが、ただし最近ではそれと反対のことが発生している。米国債の利回りが低迷している一方で、アメリカ経済は長期拡大傾向にあるとされている。失業率は2014年くらいから改善の一途をたどっていて、米株価も先日史上最高値を更新するなど、好景気真っ只中であると考えるべきだろう。また日本経済も同様に拡大が続いており、リセッションの兆候は見えないのが現状である。
ほかに有力な予兆としてエコノミストの支持があるのが利回り曲線である。利回り曲線とは、残存期間の長い債券と短い債券の金利の差の変化を結んだもので、通常であれば長期金利が短期金利を上回る。しかし長期金利と短期金利の差が小さくなり、利回り曲線がフラット化すると、将来リセッションが発生する可能性が高くなるといわれている。実際利回り曲線がフラット化するとしばしば近いうちにリセッションが発生していて、リーマンショックの直前も利回り曲線のフラット化が起きていた。しかしこの利回り曲線のフラット化もアメリカで現在発生しており、アメリカ経済が好調な中この事実は利回り曲線のリセッションの予兆としての信ぴょう性を落としてしまっている。
ほかに雇用状況の悪化なども予兆としては指摘されてはいるのだが、どれも反例が存在してしまっている以上リセッションの予測は簡単ではないことがわかる。
リセッションが起きた後の株価
では実際にリセッションが起きると株価はどのように変動していくのだろうか。リセッションが失業率の上昇や消費の低迷など経済活動の悪化を意味していることを考えると、経済情勢の影響をもろに受ける株に関しても、株価の下落が予想される。
実際のところリセッションが発生すれば基本的には株価は下落する。アメリカ発のリーマンショックや東日本大震災によるリセッションの発生は日本の株価の大幅下落を招いたことは記憶に新しいものと思われる。
リーマンショックの規模の株価下落は一概にリセッションの影響であると断言はしづらいものの、それでも株価の下落という意味ではリセッションが発生した際のある程度の株価の動きの指標として参考にするのも間違いではないだろう。
リセッションが起きたときの投資法
先述した通り、リセッションが起きた後、基本的に株価は下落する。そのため、持っている株の値下がりにて含み損が発生する可能性というのは非常に高いと言えるだろう。こうなってしまうとまた株価が戻るまではどうにもならなくなってしまう可能性というのは往々にして存在する。
しかし、これから株価が下がり続けるであろうタイミングでアクションを起こすことで利益を出すことが可能になるケースも存在する。
その代表格が「空売り」である。
空売りとは信用取引の一種で、信用売りともいわれる投資手段の一つである。この投資方法の特徴は、株価が下落しているタイミングにこそ利益を出せる投資法であるという所にある。
これはどういうことかというと、まず証券会社から株を借りてその銘柄を売ってしまうのだ。借りた株を勝手に売ってしまうなどというと大それたことのように聞こえるかもしれないが、これは実際に証券会社も認めている投資方法であるため、全く問題はないのだ。
では実際に株を借りて売ってしまうとする。もちろん借りたということは返す必要が出てくるのは当然である。ここでポイントになるのは株価が下落する銘柄で空売りをしなければならないという点である。
つまり、下落の始まった株を5,000円で100株借りて売却をしたとする。その後株価の下がったタイミング、例えば4,000円になったタイミングで借りた分の100株を買い戻して証券会社に返すのだ。そうすることで単純に差額の1,000円×100株分の10万円程度の利益をだすことが可能になるのである。
こういった、景気が悪くとも投資方法を選べば、どのような状況でも利益を出すことは可能になるのである。
まとめ
景気が上がることもあれば下がることもある。これは株式市場という仕組み上あってしかるべきであり、これをどうにかすることは出来ない。そのため、それはそういうものと割り切るほかないともいえる。
しかし、それはそういうものと割り切って諦めるのではなく、その時々によって利益を出す方法を模索し、最適解を出していく必要があるともいえるであろう。
そのためには自分の取れる選択肢を増やす必要が出てくるのである。これは一朝一夕で身につくものではないが、常日頃から株に対して勉強をし続けるという重要さが如実に表れる箇所でもあるため、重々承知していただきたい。
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