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はじめに
株式を運用して年金の増額を考える人の多くが、将来に待ち受ける老後の不安をできる限り緩和したいと考えているのではないでしょうか。
2017年現在では、平均寿命の延びや厳しい財政事情を考慮して年金の受給年齢が65歳まで引き上げられました。そして近い将来には、年金が一律70歳支給や75歳繰り下げ選択制に法改正されるとも言われています。一般的な企業の定年退職時の年齢は未だ60〜65歳までとされており、現行の年金制度に則ったものではありません。そのため本業のみの収入にて生計を立てる人ほど、老後に貰える年金のことで不安を抱えやすい状況です。
また老後のためにと付加年金や確定拠出年金で毎月地道に積み立てている人でさえ、現行の満期である65歳まではお金が一切受け取れません。さらに元本保証ではないため、景気が悪化すれば元本を割った金額で将来支給されるリスクももちろん存在します。退職後すぐに受け取れない資産では、退職から年金の支給が始まるまでの期間が不安で仕方ないですよね。そんな将来の年金について何らかの対策を講じたいと考える人ほど、株式投資の利用を考慮することでしょう。
株式投資はFXでの取引と異なり、比較的少額から売買することができます。株と言えばFX同様に危険なイメージが先行しますが、運用方法をきちんと選べば比較的リスクが少なく老後の資金を積み立てることも可能です。
今回は、年金を株式で運用することのメリットとデメリットについて解説していきます。
年金を運用する
老後の資金を早期から準備していく上でまず覚えておきたいことが、株式運用によって得られる利益の種類についてです。
株式運用における利益の種類としては、キャピタルゲインとインカムゲインとがあります。まずはこの二つの利益が持つそれぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
株を年金で買う
株の売買による資産運用をする上で知識として覚えておくべき、キャピタルゲインとインカムゲインの特徴は以下の通りです。
キャピタルゲイン
キャピタルゲインは、株を売却した際に得られる収入を指します。短期投資における主とした利益であり大きな収入を期待できますが、その分伴うリスクも大きくなることが特徴です。株式市場全体の動きや経済状況に左右されやすく、損切等の影響から売却した際の収入がそれほど見込めない場合があります。
インカムゲイン
インカムゲインとは株を長期保有することにより得られる収入を指します。その際の収入はキャピタルゲインと比較すると確かに少額ですが、一方で運用リスクが低く安全性の高い投資方法と言えるでしょう。また株を保有し続けるだけで収入が継続的に得られるため、定期的な収入源を確保して老後の資金を貯める際におすすめの投資方法です。
以上のことから、年金の運用方法としてはインカムゲインがより適しているということがご理解いただけたでしょうか。
ただし投資先の企業によっては、配当利回りやかかる税金の金額が大幅に異なることを念頭に置きましょう。いくらインカムゲインがリスクの低い投資方法とはいえ、銘柄選びに細心の注意を払わず投資することで元本割れを起こし、結局のところ損失を被る事態にも陥りかねません。安定してインカムゲインを受け取るためにも、老後の資産形成のために長期投資を選択するならばその特徴を事前に把握しておく必要があります。
その場合の投資法
老後の年金を貯蓄するための運用方法として、長期投資が最適だと解説しました。それでは長期投資による年金の運用を考えた場合、どの様な点に留意しながら実践していくべきなのでしょうか。以下では、各項目に沿って年金運用を考慮した投資方法について詳しくご説明します。
物取引でのみ売買する
株を売買する際に信用取引を採用すると、自身の資金以上の取引を行えるメリットがある一方で、大きく負け込んだ時の損失額が自身の借金となるリスクを伴います。損失額にはもちろん清算の義務が生じますし、お金を借りている訳ですからその損失額に対する金利が毎日発生してしまいます。余分な金銭的負担を避ける意味でも、現物取引のみで株を売買することが年金を運用する際には適するでしょう。
業績好調で配当利回りの高い株を買う
配当利回りを重要視して企業を選ぶことで、大きなキャピタルゲインは期待できませんが不要なリスクを回避できます。後述しますが、複利を利用したより効率的な資産形成を考える上でも、配当利回りの高い株を保有することに意味があります。
持ち株を細かく売買しない
インカムゲインを目的として株式運用をする場合、特定企業の株を長く保有することで安定した利益を確保できます。そのため短期投資のように頻繁な売買を行ってしまうと、インカムゲイン自体の持ち味を発揮できなくなります。
複数の銘柄に分散投資する
集中投資という形で一つの銘柄に投資した場合、大きな利益を見込めると同時に損失も大きく背負い込むリスクが併発します。年金の運用資金を増額する目的ではないのなら、複数社にまたがって株を保有することが、一社毎のリスクを最小限度まで抑えることにつながります。
一度に資金を使い切らない
証券口座の運用資金は一度に全て使い切らず、三〜四割程度残しておきながら毎月一定額の投資をするよう心がけましょう。株価が大きく下落した際に追加分で購入する軍資金を確保しておく意味があります。その際に投資する企業が優良であれば、たとえ一時的な理由で株価が落ち込んだとしても企業本来の価値まで徐々に値上がりしやすく、利益を見込める場合があります。
長期投資の利益
ここまでインカムゲインを目的とした長期投資について解説しました。
長期投資で望める利益としては、配当利回りが高い株を長年保有することで副収入が頻繁に入りやすくなる点があります。また、高配当株を利用するため収入額を多く見込める投資方法とも言えます。
次章では、株式運用で年金を増やす方法のメリットとデメリットについて解説していきます。
年金を運用するメリット
長期投資による年金の運用は、老後の資産形成をする上で有意であると解説しました。
しかしながら、比較的リスクが少なく安定した収入を見込める長期投資においても、デメリットは少なからず存在します。以下では、長期投資によって年金を運用する際のメリットとデメリットについて詳しくご説明します。
年金を運用するメリット
複利の効果を得られる
長期投資の一番のメリットと言えばこの複利でしょう。複利とは利息計算方式の一つであり、株主への配当利回りや利息をそのまま投資資金として流用することで、期間の長さに応じて資産が雪だるま式に増えていくやり方です。長期投資をまず考えた場合、この複利を利用することで資産形成がよりスムーズに行えます。
リスクコントロールしやすい
株式投資の場合だと複数社にわたり投資することで、一社集中で投資した場合より痛手を被らずに済みます。また株を購入する際は一度に全て買い込むのではなく、購入する日時をずらして細かく買い込むことで割高株を購入するリスクを減らせます。こうした分散させる形での年金運用を行うことで、短期投資よりリスクコントロールが容易になります。
売買手数料や税金のコストが下がる
株を売買する上で忘れてはならないのが、手数料の問題です。購入あるいは売却のどちらでも手数料が毎回発生します。また売却時の利益には譲渡所得が、分配金で得た所得には配当所得がそれぞれ税金として課税されます。短期投資の場合だと、売買の総回数に応じてその都度手数料や税金が発生しますが、長期投資の場合は結果的にそれらのコストが安く済むのもメリットの一つと言えるでしょう。
頻繁な値動きを気にせず済む
本業をこなしながら株式市場の頻繁な値動きに対処することは事実上不可能です。世界情勢や景気といった長期的要因以外での値動きは一時的なものなので、一度は下落した株価もいずれは元の価格に戻ります。長期投資を主とした年金運用だと、日々変動し続ける値動きを気にせず済むため、精神的負担が少ないこともメリットとして挙げられます。
年金を運用するデメリット
利益がすぐに得られない
長期投資にて資産形成を考えた場合、持続的な値上がりではないと判断できれば株の保有をまず優先する必要があります。インカムゲインを期待するということは即ち、企業自体の成長に投資しているとも言い換えられます。数週間や数ヶ月程度で躍進的な成長を遂げるケースはほぼ存在しないため、特に複利を利用した年金運用では数年がかりで収入を得ていく想定となります。
予測が難しい
長期投資をする際は、企業自体の業績や動向を逐一追っていく必要があります。一年程度であれば多少の予測もつくかもしれませんが、数年単位での変化を予測することは極めて困難です。短期投資と比べて直近の動向のみで売買のタイミングを判断できない点が、長期投資の最たるデメリットと言えるかもしれません。
銘柄選びの失敗が取り戻しづらい
長期投資では株式運用の結果が形になるまで数年以上を要します。株価が想像以上に値上がりせず、損切りという形で最後に売却する可能性も否めません。値下がりした株を保有し続けたことで多大な時間やお金を浪費してしまい、結果的に大きな痛手を被るリスクがあることも留意しなくてはなりません。
まとめ
株の長期投資を主として年金運用をする際は、自身の無理のない範囲で投資を行うことが妥当でしょう。老後の年金を積み立てていきたい場合、長期的に安定した収入を得ることが老後の資産形成を行う上では重要と言えます。年金を株式で運用するからこそ、長期投資のデメリットをよく踏まえた上でリスク回避に努めると良いでしょう。
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