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はじめに
本業で生計を立てる兼業投資家にとって、1分単位で細かく変動する株価を追っていくことはかなりの負担になります。それが株初心者であればなおさらです。
そんな株初心者でも取り組みやすいことからおすすめできる長期投資ですが、その中でもバリュー投資(割安株投資)が時間に余裕のない人にとっては特におすすめです。株についてある程度の知識を有し、長期的な観点から利益を上げていきたい人向けとも言えます。
そこで今回は株初心者が検討するに値するバリュー投資について、詳しく解説していきます。
1章 バリュー投資とは?
バリュー投資について話を進める上で忘れてはならないのが、ウォーレン・バフェットの存在です。このウォーレン・バフェットとは、大学にて経済学を教育しまた自身も投資家だったベンジャミン・グレアムの教え子の一人です。
グレアム理論を教え込まれたバフェットは、企業本来の価値よりも株価を低く購入できる場合、それ以上に下落するリスクを回避できるという根拠の元に株式投資を行い続けました。つまり会社そのものに投資しようという考え方です。
またノーベル経済学賞を受賞したユージン・ファーマは長年にわたる分析の元、バリュー効果について発見しました。このバリュー効果とは、株式純資産倍率(以下、PBRとする)から判断して割安な株を購入することで、他の投資家から適正に評価されていく中で次第に株価が上昇していくというものになります。
バリュー効果とともにファーマ理論に基づいて発見されたもう一つの根拠として、ファクター投資があります。これは客観的視点から様々な銘柄を分析していく場合、特定のファクター(株式指標)に着目して投資する銘柄を選別して投資を行うという手法です。
どちらの理論に基づくにせよ、企業の本来価値と現時点での株価とを比較して、割安だと客観的数値によって認められた株だけを保有するのがバリュー投資のやり方と言えます。ここまでがバリュー投資の概要となりますが、具体的にはどのような基準で以て判断すれば良いのでしょうか。その点も踏まえて、以下の項目ではバリュー投資について見ていくこととします。
バリュー投資とは
バリュー投資とは過去の利益や資産から判断し、市場ではあまり評価されていない株に対して投資する方法となります。バリュー投資に向いている株かどうかを判断するための指標として、以下の二つがあります。
①PBR
その一つであるPBRは、企業が保有する純資産を元に株価が割安かどうかを測るものです。PBRの計算式は以下のようになります。
PBR=株価÷一株あたりの純資産
1倍以下では特に割安だと言えますが、理論的に見ると1倍以下は経営が赤字に傾いている場合が多いと判断されます。このため、バリュー投資に適した割安株はPBRの数値が1.5倍以下を条件とされています。
ただし経営自体に何ら問題がなく他の投資家が次々と投資していった場合でも、PBRが1倍以下になる可能性があります。企業側が発表する決算報告や今後の動向に不安点がなければ、将来性の高い割安株という判断が下せます。以上のことからも、PBRのみで割安株かどうかを判断することが困難であることがご理解いただけるはずです。
②PER
株価の割安性を判断するために必要となる数値として、企業が出している利益があります。これに着目した株式指標が株価収益率(以下、PERとする)です。PERの計算式は以下の通りになります。
PER=株価÷一株あたりの利益
もしくは、
PER=時価総額÷純利益
(時価総額=発行済株式数×株価、純利益=発行済株式数×一株あたりの利益)
PERについては、割安株の明確な基準が厳密に決まっていません。目安として15倍以下になれば割安だと判断して構わないでしょう。
このPERを計算することで、現段階で投資したお金を利益として得るために何年かかるか把握できます。その年数を参考にして割安株かどうかを判断していく次第です。つまりこの計算式の答えが約15であれば、自身の投資資金を約15年間の利益として見込めることを意味します。こう言い換えればPERについては、数値が低ければ低いほど投資者にとってのメリットが大きくなると理解しやすいはずです。とはいえPERも、株式の動向から見た相対的な数値であることに変わりありません。株価の値動きや企業の業績によって変動していくことをまず念頭に置きましょう。
先程前述したウォーレン・バフェットは、バリュー投資により巨万の富を手に入れた投資家として有名です。バフェットが実践したバリュー投資の着眼点としては、以下の内容が挙げられます。
①安定して利益を出せる、将来性のある企業
②事業内容が理解しやすく、明確であること
③独創性のある事業を展開していること
④社会において必要不可欠な事業に携わっていること
⑤株主への配当利回りが高いこと
以上のことに合致した企業の株についてのみ、景気の悪化や企業自体の責任ではない株価の下落時に購入することで、バフェットは成功を収めました。
バリュー投資のメリット
①優良企業の株を安価で購入できる
バリュー投資における株の購入タイミングは、企業そのものに責任のない株価暴落の瞬間を狙う必要があります。そのため割高株を誤って購入する確率が低くなります。また厳密な判断基準により企業を選択することで、優良な企業にのみ投資することにつながりやすく不要なリスクを回避できます。
②株価の変動に一喜一憂しなくて良い
バリュー投資の特徴として、長期投資の特徴を持つことが挙げられます。このため一度購入してしまえば、売却するのは早くても数年後となります。短期投資とはこの点が異なり、微妙な値動きをつぶさに確認していく必要がありません。株初心者にとっておすすめできる理由はここにあります。
バリュー投資のデメリット
勿論株式投資である以上、メリットのみが存在するわけではございません。メリットとは表裏一体のデメリットも存在しています。
ここではそういったデメリットについての解説を進めていきたいと思います。
①利益を得るまでの時間が長い
長期投資のメリットは転じてデメリットにもなりえます。バリュー投資の根本的な考え方が長期投資に基づくため、利益を得るまでの時間がどうしても長くなりがちです。この点については表裏一体ですが、手早く利益を得たいと考える人には不向きと言えます。
②判断基準が難解である
割安株かどうかを判断するのは、つまるところ自分自身です。そのため割安株の判断基準をきちんと理解できていなければ、実践する上で困難を極めることは言うまでもありません。
バリュー投資を実践
前章ではバリュー投資の概略について解説しました。
バリュー投資と比較される投資方法に、グロース投資(成長株投資)があります。その根底には通じるものがあるのですが、この章ではグロース投資の特徴についても軽く触れておくこととします。
バリュー投資をする上で必要なこと
バリュー投資をする上で必要とされるのは、株式についてのある程度の知識です。
たとえ株価が一時的に暴落したとしても、財務態勢が万全な企業であれば徐々に元の水準まで持ち上がるでしょう。景気が悪化した場合でも同様です。しかしその企業が本当に優良であるか、今が割安で株を購入できるタイミングで間違いないのかを判断するには、やはり最低限度の知識が要求されます。グレアム理論に該当する企業がごくわずかとなった現状では、有名ブランドを持つ企業、もしくは将来的に利益が増加傾向を辿るであろうと確信できる根拠を伴う銘柄に新たに着目するようになりました。これはグレアム理論における新解釈ですが、企業の将来性に注目して投資を行うグロース投資の要素を兼ね備えているとも言えます。
またPERの数値が低いからと株を購入したものの、業績悪化に伴い企業の利益まで下がり、結果として割高になる場合も往々にして考えられます。
それとは別に、その企業が株主からの資金を効率的に利用できているかの判断基準として、株主資本利益率(以下、ROEとする)があります。これは投資している株主に対してどの程度還元できているかという指標になります。しかし高ければ高いほど良い訳ではなく、ROEが高い場合は株価が既に高騰している場合もありえます。そうなると一時的に上昇していた株価が急落するリスクも浮上します。そしてこのROEとPERを掛け算することでPBRが理論上算出できます。仮にPBRが割安の場合でも、計算式に含まれるPERやROEも低い数値である可能性は否めません。
そうした数値の読み間違いを未然に防ぐ意味でも、株式や企業の財務態勢への知識が必須となります。
バリュー投資に向いている人
株式についての知識をこれまで勉強した人であれば、特に時間が限られている兼業投資家がバリュー投資には向いていると言えます。ただ株初心者だから全くできないというものでもなく、今後長期投資での株の売買を考えたい人であれば、ゆくゆくは挑戦していきたい投資方法と言えるでしょう。
まとめ
企業本来の価値を見極めるには、いつの時代にも通用する厳密なルールがなければ意味がありません。株価が実際の企業価値を下回っていると理論的に判断でき、かつ企業の経営自体に何ら不安点がなければ利益を見込める投資方法がバリュー投資となります。敷居が高いと感じるかもしれませんが、これから兼業投資家を目指す人はある程度株式の知識を身に着けた後に、一度検討してみてはいかがでしょうか。
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