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コマツ(小松製作所)とは??
登記社名は株式会社小松製作所で、呼称としてはカタカナ表記で「コマツ」を用いています。英文社名はKomatsu Ltd.です。会社概要をみても、会社名「コマツ(株式会社小松製作所)」と表示されています。
1917年1月、竹内鉱業株式会社が自社用工作機械、鉱山用機械を生産するために小松鉄工所を解説したのが始まりです。1921年5月に竹内鉱業株式会社から分離独立して設立されました。このとき小松鉄工所から名前を変えて株式会社小松製作所になりました。
1951年8月には本社を小松から東京の千代田区丸の内へ移転させました。屋上に巨大ブルドーザーの模型が乗っていたということで話題になり赤松のシンボルとして親しまれました。ちなみに、模型といっても鉄骨にアルミ板を貼り合わせたもので重さは50トンにものぼるとされています。1991年まで展示されていました。
またコマツはグローバル化にも早い段階から着手し、1955年からアルゼンチン向けに製品を作るなど海外輸出、技術援助などを進めていきました。現在では米国、欧州、中近東、アフリカ、アジア、オセアニア、中国と世界中に生産拠点があります。
コマツの会社概要
コマツ、登記社名小松株式製作所は現在、東京都港区赤坂二丁目3番6号のコマツビルを本社所在地としています。
代表取締役社長兼CEOは大橋徹二さんが務めています。主な事業は建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などを展開しています。
資本金は連結678億70百万円で単独では701億20百万円です。発行済株式総数は自己株式を含む971,967,660株で、株主数は158,453名にのぼります。
売上高は1兆8029億円。その87近くを建設機械・車両の事業部門が占めています。売上高の地域構成としては、北米が最も高く22、ついで日本が19、中南米が13となっています。欧米だけで売上高の40を超えます。
今年の営業利益は1740億円、純利益は1133億円と業績予想を上回ったものの前期に対しては減収減益です。これは円高が関係しています。中国やCIS、インドネシアなどで建設機械・車両部門の需要は好調で”現地通貨ベース”では増収となったのですが、円高の影響によって売上が前期を下回ってしまいました。
コマツの建設機械・車両部門の生産拠点は38ポイントあり、建設機械の販売・サービス代理店は217社、フォークリフトの販売・サービス代理店は117社あります。従業員数は連結で47204名、単独で10371名です。
コマツの製品の特徴
コマツは「品質と信頼性」を大切なテーマとして位置づけて、世界中の顧客のニーズと期待に答える形で作られてきました。
コマツの製品の独自性が高いのは、個性的な商品や技術を生み出すために導入した「ダントツプロジェクト」と呼ばれる商品開発の仕組みのおかげです。一般的な商品開発の場合、競争相手と自社の製品を比べた時に、「全体的に少し上」を目標にします。
しかし、それでは特徴のないものとなってしまいシェアが拡大しません。そこで犠牲にしてもいいところ、他社に負けてもいいところを決めて、代わりに強みを最大限に伸ばすという戦略を取ります。
そしてコマツは環境・安全・ICTという領域において他社が数年は追いつけないような先進性を持つ製品を開発することに成功し、ブランドとして認知される大きな特徴となりました。
コマツグループの大橋社長とは
2013年4月からコマツの代表取締役社長兼CEOに就任しました。1954年生まれで東京大学工学部卒業後、コマツに入社します。その後、スタンフォード大学大学院に留学し、生産本部粟津工場管理部長、生産本部真岡工場長を経て、コマツアメリカ株式会社社長兼COOを努めます。
2007年には執行役員生産本部長、翌2008年に常務執行役員生産本部長となりました。2009年からは取締役も兼任していました。
座右の銘は熟慮断行で趣味は読書、ゴルフ、スキー、観劇です。
大橋社長を変えた本として、インタビューで「ローマ人の物語」「成長の限界ローマ・クラブ「人類の危機」レポート」と答えていました。
コマツの何が凄いのか
コマツがすごいのは、ICTの重要性に早い檀家で着目して、ICT建設機械、無人ダンプトラック運行システム(AHS)および機械稼働管理システム「KOMTRAX」のような先端のICTを活用したダントツ商品、ダントツサービス、ダントツソリューションを開発、提供してきた点です。
特にKOMTRAXは成功例として多くの雑誌や記事でも取り上げられています。
KOMTRAX(コムトラックス)は簡単にいうと建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステムです。車両システムにはGPSや通信システムが装備されていて、車両内ネットワークから集められた情報やGPSにより取得された位置情報が通信システムによって送信されます。
その贈られたデータを蓄積して提供されることで、保守管理、車両管理、稼働管理、車両位置確認と車両管理業務を幅広くサポートできます。
特に稼働状況を把握できることで、「機械が故障して使ってないから代金は払わない」という不当な代金の踏み倒しを防止することができます。
コマツの代表的商品
コマツの商品はダントツをテーマに開発されています。
代表的なものとして、ハイブリッド油圧ショベル、ICTブルドーザー、ICT油圧ショベルがあります。
※画像参照 小松製作所HP https://home.komatsu/
ハイブリッド油圧ショベルは、環境性能と低燃費をを両立し、コマツが市販車として世界ではじめて市場導入したものです。
自社開発したエンジン技術「ecot3(エコットスリー)」を使うことで、高いレベルでNox排出量の削減とハイパワー、低燃費の両立を実現させています。この技術によって特定特殊自動車排出ガス規制、通称オフロード法をクリアしています。そして、HB335/365は30トンクラスでは業界初の超低騒音を実現しています。
ICT油圧ショベルは、インテリジェントマシンコントロールを実現しました。バケットの刃先が設計面に達すると作業機が自動的に停止、また、アシスト機能で刃先が設計面に沿って動くため、オペレータは堀すぎを気にせずに掘削作業を行えます。これによって、丁張りや検測などの作業工程を従来よりも大幅に削減できて、施工効率の向上に貢献するだけでなく、機械周辺で作業補助する人員も削減できて、現場の安全性向上にも貢献しています。
安全面にも配慮されていて、油圧ショベル転倒時運転者保護構造をキャプに内蔵し、高い衝撃吸収力、抜群の耐久性を備えています。巻取り式シートベルトの装着と合わせて、万一の店頭や落下物からオペレータを守ります。また、巻き込み事故を防止するために車両後方視認用カメラが装備されています。
※画像参照 小松製作所HP https://home.komatsu/
ICTブルドーザーはもコマツが世界ではじめて市場導入したもので、小型から大鎌でラインナップを拡大中です。従来の情報化施工でも可能だった整地の仕上げ作業時だけではなく、掘削作業時を含む全行程のブレードコントロールを自動化することで、作業効率の大幅な工場を実現しました。
また、ラジオコントロールによる運転を実現し、遠隔からの運転が可能となることで災害のような危険が伴う現場でも作業ができるようになりました。
トランプに名指しをもらったコマツ
「名前を挙げていただいて、米国内でコマツを知らないお客様にも『そんなにいい会社なのか』と知っていただき感謝している」とユーモアたっぷりな受け答えをしたとして、話題になりました。
参照:NIKKEISTYLEトランプ氏のコマツ批判にも平然、麻布育ちの大橋社長
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO15807330X20C17A4000000?channel=DF130920160874
トランプのコマツたたきの概要
2016年1月、サウスカロライナ州ノースチャールストンで開かれた討論会でトランプをコマツを批判しました。
「キャタピラーのトラクターを見てみろ。キャタピラーと、日本のトラクター会社コマツとの間で、何が起きているか。私の友人はコマツのトラクターを注文した。すごい円安が進んでいて、キャタピラーのトラクターは買えないんだ」
トランプは円安で輸出攻勢をかける日本製品にアメリカでの雇用が奪われていると批判する中で、コマツが具体的な社名として取り上げられました。
ただこれについてはすぐにアメリカのウォール・ストリート・ジャーナルが「確かに円安は日本の輸出の助けとなっているが、日銀の金融緩和政策は内需拡大とインフレ目標実現のためで、輸出促進のためではない。それにコマツは、米国内で何千もの雇用を創出している」と逆に論理の粗さを指摘され、
コマツの大橋社長も「米国では工場も持っており、全体で約6000人を雇用している。そのことには誇りももっており、現地のトップもアメリカ人だ」と現地になじんだ事業展開であることを説明していました。
トランプは以前から自由貿易をアメリカ製造業の雇用を奪うとして強く批判していました。これには「日米貿易摩擦が激しかった1980年代を彷彿させる」との指摘も出ています。
トランプのコマツ名指しの株価の影響
トランプはアメリカからメキシコへの工場移転を計画していたフォードに「恥知らず」と発言して移転を断念させたり、メキシコで小型車の生産を始めたGMに対して高額納税の圧力をかけたり、日本企業だけでなく自国のメーカーに対しても同じようにプレッシャーをかけていました。
しかし、メキシコ工場新設を批判されたトヨタは「今後5年間でさらに100億ドルを米国に投資する」と対応したり、先程のコマツが「米国工場のトップはアメリカ人」と主張するなどうまくかわすことができています。
激しく批判されても決して慌てない日本のトップ企業たちには安心感を覚える投資家が多いこともまた事実です。
このようにトランプのコマツ名指し批判によって、コマツの株価が下がるということはありませんでした。
コマツの株価が上がる要因
コマツの株価が上がる要因は大きく5つあって、アメリカのインフラ投資、中国市場の回復、円安、ジョイグローバル社の買収、ICT建設機械の取り組みです。
これから、それぞれの要因について詳しくお伝えします。
コマツの株価が上がる要因①アメリカインフラ投資
トランプ大統領はアメリカファーストを公約に、老朽化が問題となっているアメリカ国内のインフラ設備の改修・改築・新築にたいして投資を拡大し、10年間で1兆ドルのインフラ投資を行うとしています。
基本的にはアメリカ企業が優遇されますが、アメリカ国内の技術・製品だけでは難しいため日系企業のビジネスチャンスが注目されています。特にコマツはアメリカ国内に工場を所有していることから、アメリカ各地の道路や橋、鉄道などの大工事が行われると大きな恩恵を受けるだろうと予想されています。
コマツの株価が上がる要因②中国市場の回復
次にコマツの株価が上昇する要因とされるのは、中国市場の回復です。ただ、コマツの中国依存度は高くなく、建設機械事業部門の売上高のうち、中国は5程度にすぎません。最も多かった2011年が20近くだったことを考えれば、今は1/4にまで割合が縮小されています。
それでも、中国市場が回復するとコマツの株価が上がるのは、「コムトラックス」のおかげだと考えられます。
コムトラックスはお伝えしたように稼働時間のデータが集積されていきます。もとは適正なメンテナンスが目的だったのですが、この稼働時間のデータ需要予測に生かされています。コムトラックスが集めたデータは世界4地域に分けて毎月公表されているのですが、中国が2017年2月からプラスに動き始めました。
稼働時間の増加は現地での建設や土木の工事が増えていることを意味します。そして消耗部品の交換だけでなく、新車の買い替え需要が高まる可能性もあります。コマツの執行役員も中国では全国的にインフラ工事が進行し、需要が拡大していると分析しています。
インフラ投資が拡大して素材の需要が高まれば、資源価格を下支えします。鉱山で使う大型機械や新興国の建設機械は利益率が高いです。
コマツの売上高が中国でピークなったのが、11年3月期、中国以外の新興国が12年3月期、そして、鉱山機械が13年3月期でした。さらに2016年の鉱山機械の売上高は増加していて、買い替えのサイクルが訪れる可能性もあります。
こうした条件から、コマツへの期待が高まり、中国市場の回復が株価上昇の要因とされています。
コマツの株価が上がる要因③円安
円安になると一般的に輸出企業は株価があがります。これは、海外の人が日本の輸出品を安く買うことができるからです。
たとえば、コマツが10億円の建設機械を輸出したとします。
1ドル80円のときは、10億円80円1250万ドル
1ドル100円のときは、10億円100円1000万ドル
となって、海外の現地の建設機械に対しての競争力があがります。もともとコマツ製品の品質の高さは知られていましたから、円安のおかげで需要が増えて業績も上がることが予想されるので株価があがるというわけです。
コマツの株価が上がる要因④買収戦略
ジョイグローバル社の買収があります。2016年にコマツが買収を発表し、2017年中頃をめどに完全子会社化が完了する予定です。
コマツの大橋社長が語る買収理由には、ビジネスの補完性もシナジー効果もありました。「コマツは坑道を掘らずに地表から地下へ掘り進める露天掘りの機械しかなかったが、ジョイは坑内掘りの機械に加え、露天掘りでも当社にはない大型の積み込み機を持つ」
とも行っていたようにポイントは、コマツとジョイグローバルの製品は重なるものが全くないということです。
また、ジョイグローバル社もIoTの導入に取り組んでいて、コマツの進めている「スマートコントラクション」とのシステム統合によってさらに生産性向上を実現することも期待されます。
コマツの株価が上がる要因⑤クラウドサービス
コマツは2017年6月に工事現場で土砂を効率よく運ぶクラウドサービスの実験をはじめました。3年以内をメドに、建設会社向けにダンプトラックの配車サービスを開始する予定です。
ダンプの運転手はアプリが取り込まれたスマホを使って、ダンプの車両ごとに何トンの土砂を載せられるか計測します。
次に、現場に2030台のダンプを必要とする道路や堤防などの工事では、運転手がどこに行けばいいかを地図で知らせます。
このようにしてコマツは工事現場の細かい部分まで見える化しようとしており、後々には、スマホで建設現場の近くにあるダンプを確認、業務を発注できるようになって、コスト削減や現場の生産性改善を支援しようと考えています。
無人ダンプなどIoTを積極的に取り入れて技術革新を進めてきましたが、さらに新たな顧客価値提供が可能になって優位性を構築できるということが期待されています。
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