NAVとは?
資産運用の方法の一つとして、投資信託を検討する際、
多くの人が頭を抱えるのは、その専門用語の多さではないだろうか?
今回は、数ある投資信託で使われる専門用語の中から、「NAV」と「NAV」倍率に関して説明させていただこうと思う。
「投資信託」と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは、自分自身で資産運用を行わず、経済や金融の知識を身につけた専門家によって運用してもらえるメリットではないだろうか?
しかしそれは、ご自身で運用するだけに金融や経済についての知識がなくても良いというわけでは断じて無い。
ご自身の大事な資産を専門家とはいえ見ず知らずの他者に預ける以上、そこで何が行われていて、どのような方法で資産運用がなされるのかをしっかりと把握する必要がある。
今回説明させていただく「NAV」と「NAV倍率」は投資信託を検討する上で、非常に重要な専門用語となるのでしっかりと頭に入れておこう。
NAVとは
「NAV」とは、野村証券の証券用語解説集では、、
NAV(なぶ)
分類:投資信託
投資信託の純資産総額のことで、Net Asset Valueの略。純資産総額は投資信託の貸借対照表(バランスシート)の資産から負債を差し引いた額であり、それを単位口数に換算したのが基準価額になる。
(出典:https://www.nomura.co.jp/terms/english/n/A02154.html)
上記のように解説されている。
「投資信託」とは、ご存知の方も多いかと思うが、
個人投資家から投資信託(ファンド)が資金を集め、投資運用の専門家が、株式や債券などに投資する運用し、それによって上がった運用成果を投資額に応じて各投資家(出資者)に再分配を行うものである。
上記用語解説の純資産総額とは、個人の投資家の出資額の総額というイメージを持っていただいても差し支えないだろう。
投資信託は、投資手法である以上、資産の価値が変動するので、ご自身が投資している投資信託の純資産の総額を知っておくことは必要不可欠なことなのである。
REITとは
次に、REITについて解説させていただこうと思う。
投資信託協会の説明を参照させていただくと、
REITとは多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。不動産に投資を行いますが、法律上、投資信託の仲間です。
(出典:https://www.toushin.or.jp/reit/about/what/)
一般的な投資信託が株式や債券などの、無形資産で運用を行うのに対してREITでは、
投資家から集めた、資金を用いて、不動産投資を行う投資信託の親戚のようなものである。
REITとは「Real Estate Investment Trust」の略称であるが、日本においては、文頭に日本の不動産を表す「J」をつけて「J-REIT」として用いられていることが多いので、
ご自身で深く調べてみたいという方は、そちらで検索してみると良いだろう。
REIT(不動産投資信託)を資産運用の投資先として選択するメリットは次のようなものがある。
・不動産投資に必要な、維持管理費用が発生しない。
不動産に直接投資する場合、投資用マンションの購入に1,000万円以上になることがほとんど。その上、維持管理費などさまざまな諸費用がかかってくる。
しかしREITなら、銘柄によって異なりますが1口10万円~100万円程度で投資することが可能で、その上REITは業務の一切を運用会社に委託しているので、維持や管理などの手間もかからないという魅力がある。
・リスクヘッジができる。
REITなら複数の不動産に分散して投資することになるので、一般的な不動産投資のリスクを減らすことが可能。
またREITは上場している投資信託が多いため、リアルタイムな価格での売買が可能。
なかでもJ-REITは現金化しやすいだけでなく、利益の90%を超えて配当すると法人税が実質免除になるため、配当率も高くなるというメリットもある。
NAV倍率の見方は
次に、「NAV倍率」について解説させていただく。
こちらの用語に関しては、上記の「NAV」さらに「REIT」を正確に把握していただくと、理解が早いため、自身のない方は、もう一度読み直してから下記へ進んでいただくことを推奨する。
「NAV倍率」とは、
NAV倍率は、不動産投資信託(REIT)の価格が保有不動産の正味の価値に比べて、何倍かを示す指標をいいます。これは、REITを評価する基準の一つで、REITの保有不動産の鑑定評価額の合計から負債を引くなどして算出する純資産価値(NAV:Net Asset Value)に対し、投資口(REITにおいて投資家が投資法人に出資する単位)の時価総額が何倍かを算出したものです。
(出典:https://www.ifinance.ne.jp/glossary/alternative/alt046.html)
上記は、金融情報サイト「iFinance」から抜粋したものであるが、僭越ながら私の方で、少々解説を加えさせていただく。
上述した投資信託と同じように、REIT(不動産投資信託)も投資である以上、投資した資産の価値は、変動する。投資した金額に対して価値が上昇すれば、その分が投資に対する利益となり、逆に価値が下落してしまうと、損失となってしまう。
損失するリスクを抑え、利益を上げる可能性を最大化するために必要なのが、投資先を選択するノウハウなのであるが、
その投資先を決めるために必要な情報が「NAV倍率」なのである。
投資信託にしろ、REITにしろ、投資する際は1口単位で、投資額を設定するのであるが、
その1口辺りに対するNAVの価値の倍率を表したものが「NAV倍率」となるのである。
当然のことながら、NAV倍率が「1」を下回っていれば、それは割安の不動産投資信託であり、「1」を上回って入れば、割高(今後価値が下がっていく可能性のあるもの)と言える。
NAV倍率の計算式は、下記のようになる。難しい計算ではないので、投資を検討している投資信託のNAV倍率を調べてみると良いだろう。
NAV倍率=現値÷1口あたりのNAV
- NAV倍率が分かると何が分かる?
NAV倍率を求めることによって、投資信託、特にREIT(不動産投資信託)においての投資先を検討材料を算出することができる。ということはご理解いただけたと思う。
PBRとNAV倍率
投資を勉強している方であれば、上述の説明を聞いて、
NAV倍率≒PBRというイメージを持ったのではないだろうか?
そのイメージは間違いではない。
この項目では、PBRをご存知でない方に向けて、NAV倍率を踏まえたPBRについての説明をさせていただく。
まずPBRとはなんだろうか?
日本証券業協会の説明によると、下記のようなものである。
1株当たりの純資産(注)に対し、株価が何倍まで買われているかを表したのが株価純資産倍率(Price Book-Value Ratio)です。
(注)ここで使用される「純資産」とは、貸借対照表上の「純資産の部」から少数株主持分および新株予約権等を除去した金額、つまり自己資本(株主持分)を意味します。
株主には、株式会社が解散したとき、持ち株数に応じて残された会社の資産を分配してもらう権利があります。この対象となるのが純資産です。つまり株主のものに帰す資産といえます。1株当たりの純資産は、純資産を発行済株式数(発行済株式総数-自己株式数)で割って算出します。
(参照:http://www.jsda.or.jp/manabu/qa/qa_stock33.html)
簡単に言えば、NAV倍率が、不動産信託の投資先を選ぶ指標なのに対して、
PBRは、株式投資を行う際に、投資先の選定や、売りタイミング、買いタイミングの選定を行うために必要な指標と言える。
投資信託であれ、REIT(不動産投資信託)であれ、株式投資であれ、
投資先の何かの価値を基準として投資を行なっているため、その投資先の価値が、
本来、落ち着くべき価格というものが存在するのである。
この価格は俗に「理論価格」などと呼ばれることもあるが、
特に株式市場やREIT(不動産投資信託)市場では、株式市場を構成しているものが我々のような個人の投資家であることが多いので、取引市場の雰囲気や、様々な要因(何処かの国で天災が起き、一時的に国内市場への流入が加速するなど)によって、理論価格以上の価格がついてしまうことは珍しいことではない。
しかし、一般的には、本来あるべき価値に市場価格は収束していくため、
NAV倍率やPBRを算出し、現在の価値が本来あるべき価値に比べて、高いのか低いのか、
といった点に留意の上、投資先を選定する必要があるのである。
本来あるべき価値に比べて、現在の価値が低いのであればそのREITまたは、株式は、割安である、という判断をすることができる。
FFO倍率とは
最後にもう一つ、REIT(不動産投資信託)の銘柄を算出する上で、覚えておくと良い指標がある。
それが、FFO倍率である。
FFO倍率とは、JapanREITの用語集では、下記のように説明されている。
株価の割安度を示す指標。株価÷1口あたりFFOで算出する。この数値が小さいほど割安度が高いとされているが、J-REITの場合はFFO算出時に加算される減価償却費を分配する銘柄がほとんど存在しない点や保有資産の地域などにより銘柄ごとに減価償却費の負担割合が異なる点から投資指標としての取り扱いには注意が必要。
(参照:http://www.japan-reit.com/yougo/FFO%E5%80%8D%E7%8E%87)
NAV倍率に比べ、算出に必要な情報が多く、さらに原価滅却費の負担割合が地域によって変わるなど、手間がかかるため、NAV倍率を算出した後の副次的な要素として計算するぐらいがちょうどいいかと思う。
投資は専門用語を理解するだけでぐっと身近なものになり、それだけ投資のリスクを軽減することができる。
ぜひ引き続き勉強を続けてみてほしい。
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