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始めに
株式の取引を行う上で参考にすることの多い指標の一つに「PBR」があります。このPBRとはPrice Book-value Ratioの略称であり、日本語では「株価純資産倍率」とも呼び変えられます。企業自体の純資産に対して現在の株価がどの程度割安であるかを測るために利用します。また類似する名称の指標として「PER」もありますが、こちらは「株価収益率」の略称でありPBRとは全くの別物です。
今回はPBRの概念を主軸として、その活用方法やPERとの違いについて解説していきます。
1章 PBRとは何か
この章ではPBRの概念について主に説明します。次章で説明するPBRの活用方法をより深く理解するためにも、まずはPBRについて要点ごとに分けて見ていきましょう。
PBRとは
株価を判断するための指標の一種であるPBRは、1株あたりの「純資産」に対してその株価が割安かどうかを評価するものとなります。
ここで言う純資産とは、企業の資産総額から負債額を差し引いたものであり、「株主資本」とも言い換えられます。株式会社が倒産する際には、資本を提供していた株主は持株数に応じた資産を譲り受ける権利を有するためです。いずれは株主に帰属する可能性がある純資産も、計算式によって算出することが可能です。
その点も踏まえて次項ではPBRの計算方法について、計算式を提示しながら説明します。
PBRの計算方法
まずPBRの計算式を示すと、以下のようになります。
PBR=株価÷BPS
BPS=純資産÷発行済株式総数
またPBRは以下の計算式でも求められます。
PBR=時価総額÷純資産
時価総額=株価×発行済株式総数
この計算式に出てくるBPSとは、Book-value Per Shareの略称であり、「一株あたりの純資産」を英語に読み替えたものです。またBPSはその特性上、一株あたりの「解散価値」と訳されることもあります。
・解散価値
倒産した企業が負債額を支払った後に残る純資産を指します。「清算価値」と呼び変えられることもあります。
こうした計算式からPBRは算出されますが、その数値が低いほど該当する銘柄が割安であることを示しています。ただしPBRの計算式で株価が用いられていることからも分かる通り、PBR自体も株式市場の流れを受けて日々変動していくものです。そのためPBRという指標自体も、あくまで相対的な評価であることを念頭に置きましょう。
PBRとPER
字面が似通っているPBRとPERですが、関連性が全くない訳でもありません。
どちらの計算式においても、該当する銘柄が割安であるかどうかを測るための判断材料としての数値を求めています。ただしその銘柄を割安だと判断するための根拠だけが違っており、PBRでは純資産を基準に、PERでは純利益を基準にするため、一つに限らず双方を活用していくことで企業や株式を多角的に判断したい場合には大変有効です。
PERについての解説をする前に、その計算式を示すと以下のようになります。
PER=株価÷EPS(1株あたりの利益)
EPS=1年間の純利益÷発行済株式総数
PERとはPrice Earning Ratioの略称であり、日本語では「株価収益率」とも呼ばれます。この指標では1株あたりの純利益を元にその銘柄が割安かどうかを算出していきます。ただPERについては割安だと判断できる数値の目安が特に決まっておらず、一般的な相場では15倍以下で割安だと判断されることが多くなります。
このPERとは、現在の株価に対して1株あたりが持つ利益の何倍に相当するかを現す指標となります。つまり現時点での株価に投資した金額を何年後に全額回収できるかを計算によって導き出すものであるため、PERの数値も低ければ低いほど割安であると言い換えられます。例えばPERが10倍と15倍と算出できた場合では、現時点までに投資した金額を回収するのにかかる年数が、それぞれ10年と15年であることを示唆していることになります。そうした見方をすると、15倍より10倍の方がより早く投資資金を回収できるため割安だと判断できます。
ただしPERもPBR同様、その時点での株価や業績によって大きく左右されることは否めません。いずれの指標を用いるにせよ株式指標には絶対的なものというものは存在せず、あくまで相対的な数値であることは理解しておかなければなりません。
上記のことを踏まえて、このPERとはどのような場面において活用できるのでしょうか。その活用方法については以下の通りです。
①業界や同業他社との比較で利用する
PERは期待値の高い業界であるほど、数値が高くなりやすい傾向にあります。現時点で人気がある業界のPERは時に、50倍や100倍といった数値まで高騰することも十分ありえます。ただしPERの数値が高ければ高いほど急落のリスクも浮上するため、そうした銘柄を購入したい場合には企業自体の経営状態や銘柄の細かい分析を逐一行わなければなりません。PERが15倍以上の銘柄を見つけた場合でも、その業界における平均的なPERや同業他社のPERをきちんと確認し、慎重に検討していく必要があります。
②過去、もしくは将来的なPERから検討する
PERは15倍以下でその銘柄が割安である判断材料になると前述しましたが、過去のPERや将来的に予想できるPERと比較した際に、一概に割安とは言えない銘柄も中には存在します。
・将来のPERが10倍に対して、現在のPERが15倍である
・現在のPERが15倍に対して、過去のPERが10倍である
以上の場合で特に注意したいのが、過去との比較でPERの数値が高くなっていた場合です。過去から現在にかけてPERが高くなっている場合には、今後PERがさらに高くなる可能性がないかまで見極める必要があります。その際には企業自体の将来性や業績の情報をじっくり分析し、結果的に割高な銘柄を掴まされないよう注意しましょう。また過去や将来のPERについては、日本経済新聞の公式サイトや会社四季報等で調べることが可能だということも併せて覚えておきましょう。
PBRやPERの他にも割安かどうかを調べられる指標として、「PCFR」もあります。
・PCFR:
「株価キャッシュフロー倍率」の略称であり、現在の株価に対して1株あたりが担うキャッシュフローの何倍に相当するかを調べる数値となります。計算式としては以下のようになります。
PCFR=株価÷1株あたりのキャッシュフロー
ここで言うキャッシュフローとは、企業自体の経営に伴う収益の流れを指します。純利益であれば事業内容から直接生み出された訳ではない収益も含まれますが、PCFRでは直接的な収益のみに言及しています。PERだけでは判断しかねる場合において、その銘柄を複合的に検討するための指標となることもあります。ただし割安だと判断するための数値が特に決まっていないため、PCFRについては同業他社との比較の中での利用が必須となることを念頭に置きましょう。
いずれの指標にせよ、企業自体の利益を参考にする指標であることに変わりありません。仮にこれらの指標によって割安だと判断できた銘柄を購入する場合でも、直近の決算業績とともに企業自体の売り上げを将来的に見込めるかどうかもきちんと検討するようにしましょう。さらに株価のトレンドまで確認しておくと、より確実性が上がることは言うまでもありません。
次章ではPBRの具体的な活用方法について説明します。
2章 PBRを知ることで何がわかる?
この章ではPBRを知ることで何が分かるのかについて実践に役立つ形で説明します。
PBRは株式指標ということもあり、実際の売買において利用できなければ何の意味もありません。PBRの特性をよく理解した上でどのように役立てられるのかを詳しく紹介しますので、最後までお付き合いください。
PBRは何の指標
それでは何故PBRを利用することで、該当する銘柄が割安かどうかを判断できるのでしょうか。
PBRでは現段階で企業が倒産した際に、株主の手元に戻ってくる金額が投資資金に対してどの程度なのかを知ることに重きを置きます。
仮にPBRが2倍の企業が倒産した際で想定すると、株主の手元に戻ってくるのは投資金額の1/2、つまりは半額しか返ってこないことになります。これに対して PBRが1倍の企業ですと、倒産時には投資金額がそのまま戻ってくることになります。つまりPBRの数値とは、投資金額の総額から手元に戻る金額を割り出すための分母になるという訳です。以上の説明からも分かる通り、PBRについてはより低い数値であればあるほど損失を被るリスクが低くなると言えるのです。
ただしPBRが1倍に近いからといって、必ずしも良い銘柄であるとは限りません。PBRを利用する上では、この数値の低さが本当の割安株を示すかどうかをきちんと見極める知識が必要となります。次項ではその点を詳しく説明します。
PBRが低いと何が起きるか
PBRが1倍を切る企業というのも探してみると実は山ほどありますが、そのほとんどが以下の内容に合致しています。
①経営するほど損失額が大きくなる構造で経営している
→株式市場において、該当企業が経営を続けることで純資産を喪失していくと判断されている場合がこれに当てはまります。また売り上げが極端に低く投資するだけのメリットがないと判断された企業についてもPBRが1倍を切ることがあります。
②純資産は実質的な数値であるとは限らない
→PBRも計算式によって導き出された理論上の数値であるため、必ずしもPBRから見た純資産と実際の価値とが合致するとは限りません。
PBRから見る株の買い方
以上の点を踏まえると、PBRが極端に低い企業では投資するだけの価値がないと株式市場が判断を下したことが考えられます。
そのためPBRが低いから割安株だと確実に断言することはもちろんできません。PBRが低く、かつPERも低いといった複合的な要素から割安株だと判断できた場合でなければ、安易な購入は控えた方が無難でしょう。
まとめ
株の売買を行う際には上記した指標が有効に感じられる反面、極端に盲信してしまうことで不要なリスクを買い込むことも少なくありません。指標はあくまでも投資家が使う道具であることを改めて理解するとともに、日頃から銘柄を検討する際にはじっくり時間をかけて割高株を掴まされないよう十分留意しましょう。
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